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トラベルテディ・プロジェクト 〜ぬいぐるみ留学生が世界へ飛ぶ〜 その6:帰国

いよいよ留学生が帰国します。ぬいぐるみ留学生は外国に帰りますから、簡単にはもう会えません。それは子どもたちでもよくわかります。別れは辛いですが、この「別れが辛い」という体験が、このプロジェクトがうまくいった証でもあると思っています。

「プロジェクトの概要」「相手の見つけ方」「留学の準備」「留学中のお世話」についてはこちらにまとめています。

お別れの日が近づいてくる

帰国する日が近づくと、子どもたちのカウントダウンが始まります。自分たちが送った留学生が帰ってくるのは嬉しいけれど、今来てくれている留学生との時間も終わりが近づいていることに、子どもたちはなんとなくモヤモヤします。

「先生、もう、会えなくなっちゃうんだよね」
「そうだねぇ、もう日本に来ることはないかもしれないねぇ」

そんな会話が増えてきて、子どもたちは最後に何かしたい。でも教員からは「何かしたいんだったら、自分たちでやらなくちゃね」とだけ言います。最後にどう過ごすのかも、子どもたち自身に考えてほしいからです。毎年、子どもたちは自然に「お別れ会」を計画し始めます。

基本的に私からの提案は一切しません。ただし、子どもたちから出てくる希望は、できる限り叶えられるようにサポートします。カードを作りたい、お別れ会をしたい、最後にみんなで一緒に遠足に行きたい。必要なものは何か、どのように計画をして準備をするか、それも全部子どもたちに任せます。

自分たちで考えて動かなければ、何もない。時間もない。このような状況の中で、子どもたちは初めて自主的に動き始めると感じています。

アイデアを出して計画する

自分たちが何をしたいのか、子どもたちにアイデアを出させます。ロイロノートのシンキングツールを使って、アイデアを自由に書き出します。ここでは「できる・できない」を判断せず、まずは何をしたいのかをまとめるのが狙いです。

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相手の学校とZoomでのやりとりを行なった場合、子どもたちはほぼ「またZoomをしたい」と書いてきます。その場合は相手校の先生と相談して、可能な場合は行います。その日時のやりとりは子どもたちでは無理なので、教員が行います。

相手校と交渉の結果Zoomの実施が難しい場合、「Zoomは無理なんだ」という報告を子どもたちにして、「じゃ、どうする?」と相談します。大体の場合はビデオレターを作る、ということになります。

次に、計画を立てます。出発の日までどのくらい期間があるのか、それに向けての計画を立てて、準備の流れをまとめさせます。たとえば、お手紙やカードを書くことを決めた子は、このような計画を立てます。

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この計画表をもとに、授業の初めに予定を確認し、終わったら次のステップに進んでいきます。自分たちがやりたいことの内容について、さらに詳しく内容を書き出す場合もあります。

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お別れ会

お別れ会では司会を決めて出し物をしたり、みんなで一緒に歌を歌ったり、ぬいぐるみ留学生に一人ずつスピーチをしたり、ぬいぐるみ留学生も一緒にドッジボールをしたり、公園へお出かけしたり、贈り物をあげたり、みんなでダンスをしたり、と内容は毎年本当にいろいろ、子どもたちによっても違います。

でも共通しているのは、子どもたちがぬいぐるみ留学生を「本物の人間の留学生」のように扱っていること。お別れ会や最後の日には悲しくなって涙を流す子どもたちもいます。最後の日には玄関でぬいぐるみ留学生との別れを惜しむ姿があります。

トラベルボックスには子どもたちが書いたカードや折り紙、思い思いに作った贈り物がいっぱい。その贈り物を携えて、ぬいぐるみ留学生は帰国していきます。

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私が毎年3年生でこのプロジェクトを行っているのは、人間の成長段階として男女問わずぬいぐるみ留学生に夢中になれるギリギリの年齢であること(もう少し大きくなってしまうと、特に男子では素直に愛情表現を出すのが恥ずかしい、という子どもも出てきます)、ぬいぐるみ留学生を擬人化できること(子どもがあまり幼いと、おもちゃになってしまいます)、ある程度自分たちで活動を計画して実行できる年齢である、という理由があります。

ぬいぐるみ留学生が帰国した後、教室はぽっかりと穴が空いてしまったような感じです。いつもそこにいたあの子が、もういない。子どもたちは寂しさを感じます。そして「ちゃんと、無事に学校まで帰っているのかな」とぬいぐるみ留学生の旅路を案じます。

自分たちの留学生が帰ってくる

いよいよ自分たちが送った留学生が帰国します。持って帰ってくる荷物の中身は、地域によっても学校によってもバラバラですが、子どもたちはとにかく、自分たちの留学生に会えることが嬉しいようです。

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持ち帰った荷物は本物の外国語の宝庫です。その内容をまた一つ一つ丁寧に授業の中で見ていきます。実際に相手から届いた手紙は、なんとか自分たちで読もうと必死になります。書いてある単語を読めたときに「先生、○○って書いてあった!」という嬉しそうな顔。

英語で書かれたものを見て「読みたい」と思う気持ち。
外国語のものを見て「なんて書いてあるのか知りたい」という気持ち。

この気持ちが、「外国語を読む」という行為につながって、「今の自分たちはまだ読めない」という語学スキルの未熟さに気がついて、「自由にスラスラと読んでわかるようになりたい」という動機につながります。

今は読めないかもしれない。でも、勉強すれば読めるようになるのかもしれない。
機械翻訳を使えば、書いてあることがわかるのかもしれない。でも今はまだうまく使いこなせない。モヤモヤがありますが、この「モヤモヤ」がとても大切だと考えています。

プロジェクトを振り返って

トラベルテディ・プロジェクトを通して、小学校でも外国語の必要性を教室の中で体験することができるようになりました。交流した国や地域のことを好きになり、自分で調べ学習を進めるなど、日本以外の世界へ意識が向くようになりました。

また、ステレオタイプをまだ持たない純粋な児童期に様々な国や地域の相手と交流することは、その相手のことをニュースや噂といった先入観で捉えることなく、自分自身の経験と考えを持って理解する上で、とてもいいことだと感じました。

一方で、小学生ではまだ「異文化」という意識はそれほどないのかなぁ、とも感じています。交流の中では、自分と相手の同じところや違うところに気がつき、それに興味を持つだけです。

でも、これが将来にわたって異文化を理解しようとする「最初の一歩」ではないかと考えています。

教員にとっては準備が大変なことも、相手の先生と連絡がうまくいかないことも様々ありました。それでも毎年欠かさず続けているのは、そういった教員の作業の苦労を遙かに上回る子どもたちの発展した学びや活動、そして喜びを感じるからです。

英語は世界を知るための一つのツールです。小学校の外国語教育では、英語や外国語を通して見える「世界」にこだわりを持つこと、子どもたちが「今まで見たことがない世界」をたくさん見せてあげること、外国語を通して子ども自身が「自分でも何かできる」と感じることが大切だと考えています。

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