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テレワークのハードルは経営課題と同義

本日はこちら。

「他部署とは無許可でチャットしてはいけない」というルール

テレワークをするということは、何らかのコミュニケーションツールを使用している場合がほとんです。呼び名はツールで違えど、そのツール内で必ずプロジェクトごとのお部屋が作られ、その中でチャットやテレビ会議が実施されます。

Teamsであれば「チーム(及びその傘下のチャネル)」と呼ばれものです。うまく活用すれば、関係者が密につながり議論の活性化や高い成果を得られる可能性を秘めていることは論を待ちません。

一方で、このツールを全社導入して自由にお部屋を作って好きな人を招集すれば、全社の誰とでも繋がれるのか?と言えば、ツールの技術論的には繋がりますが、ルール的に繋がらない場合があります。

我々がツールを導入して一番最初に作ったルール、それは「無許可で他部署と繋がってはいけない」ということでした。せっかくのツールのメリットを骨抜きにするような愚かなルールだと思うかも知れません。しかし、そんなに単純に繋がれるもんではない事情があるのです。

「繋がる」ことのリスク事例

まず、開発部と営業部を仮に同じお部屋に入れたとしましょう。お部屋に新製品開発プロジェクトと名称をつけましょう。なんか良さげですよね、営業が直接顧客の声を開発に伝える機会が増え、開発も営業を通じた顧客の意見をヒアリングできて、いい製品ができそうです。

確かにそういうメリットはあるかもしれません。しかし、まだ開発段階のアイデアや検証が終わっていないデータを、開発部の誰かがそのお部屋でチャットで公開した場合、何の文言的な制約もつけなければ、営業の担当がそれをお客様に持っていき提案してしまう可能性があります。

この場合のリスクは2つ。単純に機密情報の漏洩リスク。そしてもう一つは会社としての正式回答ではない回答が生産されること。つまり責任の所在が不明確な回答が生まれるリスクです。

次に、営業部と営業支援部でチームを作ったとします。この営業支援部のメンバーは営業部から依頼された見積を作成する部隊とします。従来は月に100件程度さばいていた見積。これがリモートワークによる効率化で150件さばけるようになりました。やっぱりリモートワーク最高。

・・・となればいいのですが、営業部もリモート率が増え、まして専用のお部屋もできた影響もあり、これまで営業担当が自分で作っていた見積までも営業支援部にガンガン飛んでくるようになりました。結果、200件の見積をさばく必要を営業支援部は迫られ、みな疲弊し破綻寸前に陥る・・・みたいなことも起き得ます。

こうした「仕事の振れる先がわかったらそこに丸投げしちゃおう」病の感染者数は、世の中には思いの外多く、上記の営業支援部のように、どこかの部署と繋がれば繋がるほど疲弊する人々(特にこうしたバックヤード系)が存在することを忘れないでいただけたら嬉しいのです。

僕はセールエンジニアをやってますが、ツールを入れてアカウント登録した瞬間に、営業100人に囲まれるお部屋にぶち込まれていて、もはや恐怖を感じました。この人たちの統制が取られず、僕に仕事をガンガンふってきたら、確実に僕は死にます。

闇雲につながるリスクをおさらいすると以下の通りです。

・機密情報の漏洩
・無責任な回答の発生
・仕事の丸投げの多発

すなわち経営の土壌が貧相なのかも

この3つのリスク、よく考えてみれば今に始まったことではないのです。縦割り組織、疲弊した社員、リーダシップのない管理職、そういった何度となく聞いてきた日本のダメな会社の姿そのものです。経営の土壌が貧相なのです。

一番の問題は(そしてメリットでもあると僕は信じていますが)、テレワークによって生まれたツール上のお部屋は、それら会社のだらしなさを顕在化してしまう点です。今まで誤魔化しごまかしやってきた、なぁなぁな部分が露わになるということです。

もう少し言えば、経営の土壌が貧相だと、正直者がバカを見る仕組み、愚直に仕事する人間が一番疲れる仕組みとなるわけですが、恐ろしいことに、コミュニケーションツールはそれをより増幅する装置だということです。

なので、真面目な人間ほどテレワークには恐怖を感じるかもしれません。本来、最もツールでの効率化があるであろう部署や人たちというのは、実力も人気もある場合がほとんです。それゆえにツールが彼らを疲弊させるという矛盾。

昔から、デキる人は忙しい(仕事が集中する)なんて言いますが、これもまた増幅させてしまうのがテレワークです。

タレントとスタッフ

つまり、タレントが会社内で生まれてきます。人気のある人はテレワークで、使用するツールで、どんどん人が集まり、仕事が集まります。当然本人だけでは回りません。

対処方法は大きく2つ。タレントを量産する、またはタレントを支えるスタッフを養成するかです。前者はさすがに理想論でしょう。それができたら苦労はないわけですし、もし実現できてると言い張るなら、メンバー間で仕事量は均質になるはずです。

タレントを支えるスタッフ作りが現実的です。タレントが構想を作り、スタッフが作業するという仕組みです。今までは作業もタレントは頑張ってきましたし、タレントの作業力もそれなりに強力でした。しかし、作業していてはタレントのタレントたる強みを発揮している時間がなくなります。作業は誰かに任せるしかないでしょう。

今、我々がやるべきことは、まずは他部署との連携の前に、タレントとスタッフに人を分けることです。そして各部署のタレント同士が同じお部屋に入る組織形態にし、タレント間で会話できる土壌作りが必要です。そしてタレント間で決まった内容をスタッフで作業させるという役割分担を行うべきだと思います。

つまり、今の管理職が管理職を続けられる保証はない仕組みが必要です。社内であっても集客できる、というか人が集まる、仕事が集まる、そういったタレントのような人を然るべきポジションにつけ予算や人を与えるべきです。対面の会議室で睨みだけきかしている人にはご退場いただかないと、テレワークは弊害の割合の方が増えてしまいます。

まとめ

テレワーク自体は変革でも何でもないと思っています。

始まりの始まりです。問題意識の芽生え、くらいのものです。

テレワークで顕在化する経営課題、その経営課題に適応するための変革。

その変革の実現こそが本質のように思います。

ということでまた。

#日経COMEMO #テレワークのハードル

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