[瀬戸芸2022] 女木島 -高松港から20分,島旅とアート鑑賞をコンパクトに楽しむ
高松港から小型フェリーで20分の女木島(めぎしま)。
かの「桃太郎」が攻め入った鬼ヶ島伝説のある島と言われており、山頂には「鬼ヶ島大洞窟」なる観光名所もある。他方で、大竹伸朗(おおたけ・しんろう)、レアンドロ・エルリッヒといった人気作家の作品も鑑賞できる、アートの島でもある。
瀬戸内国際芸術祭の春と夏で回った、女木島の作品たちを写真でまとめてみる。※≪女木島名店街≫については、作品数も多く、春と夏ではじっくり回れていないので、秋に鑑賞したあと、3期ぶんをまとめたいと思う。
『カモメの駐車場』 木村 崇人(きむら・たかひと)
女木島に初めて足を運んだのが2018年頃だと思うけれど、すっかり心を持っていかれてしまったのが、このカモメたちだ。
わたしは海に疎いのだけど、島々を回るうちに、カモメをはじめとした鳥たちが、本当にこんなふうに、防波堤に並ぶことを知った。
フェリーの発着時間以外は静かな島なので、シーズンオフに訪ねた際は、防波堤の広い部分に座って、カモメたちがあちこち向きを変えるのを見つつ、読書するなどして過ごしている。
『20世紀の回想』 禿鷹 墳上(はげたか・ふんじょう)
一瞬で心を奪われる、は、この作品もだ。カモメたちと同じく、港に展示されている鑑賞無料作品だ。フェリー乗り場にも近いので、帰り際にもゆっくり鑑賞できる。
『女根 / めこん』 大竹伸朗(おおたけ・しんろう)
個人的には、女木島といえばやはり、この作品が浮かんでくる。それほどインパクトが強い。
『ISLAND THEATRE MEGI 「女木島名画座」』 依田洋一朗(よだ・よういちろう)
畑の向こうの建物に、「名画座」とある。
まるで、作家の脳内の映画館に迷い込んだような、ふしぎな空間だ。
2階には、本当にのスクリーンがあり、チャップリンの無声映画が上映されていた。鑑賞している人たちも。
外に出てみれば、そこは畑と島の風景で「うーん、夢だったのか?」というシュールな感覚が味わえた。
『不在の存在』 レアンドロ・エルリッヒ
レアンドロ・エルリッヒといえば、金沢21世紀美術館に恒久設置されている『スイミング・プール』、2017年の森美術館で開催された「見ることのリアル」(すごく楽しかった!)でも人気を博していた『建物─ブエノスアイレス』が十和田市現代美術館に常設されたり(行かなければ)、白井屋ホテルにコラボルームがあったり(高いけど泊まりたい)、とにかく人気のアーティストだ。女木島には2作品ある。
『不在の存在』はとても奇妙で、それゆえに記憶に残る作品だ。上の写真、向かって右側の「鏡」には、カメラを構える筆者が映り込んでいる。では左側はといえば、鏡ではなく、奥には手前側と瓜二つの座敷がある。
上の写真は、今度は奥の部屋。左側の鏡には、再びカメラを構えた筆者が映り込んでいる。
種明かしをしてしまうと「なーんだ」なのだけど、部屋全体を完璧に傾けるなんて、手の込んだおおがかりないたずらを見せられた気がして、思わず笑ってしまう。「出会い共有できる空間」とコンセプトにあったけれど、たしかに話も弾むかもしれない。レアンドロ好きな人と、彼の作品の一発芸的な面白さ(失礼。すごくリスペクトしている)について、語ってみたい。
≪女木島名店街≫『ランドリー』 レアンドロ・エルリッヒ
レアンドロ・エルリッヒのもう一つの作品は、という建物1棟を使った≪女木島名店街≫の中に。
「は?」「だから何なんだよ」という声も聞こえてきそうなのだけど、そういう人たちを尻目に、いたずらが成功した子どものごとくガッツポーズ、そんな作家の姿を勝手に想像し、ほくそ笑んでしまう。
全力をかけていたずらをやりきる、観ている人を笑わせたり(あるいは、怒らせたり)する、しかもそれが、批評性の高い作品にもなっている、という点で、とても洗練されたアートだと思う。
≪夏公開≫『ナビゲーションルーム』 ニコラ・ダロ
島の北東に、この夏新しく公開された作品。
動いているところを観ないとなかなか説明が難しいのだけど、なんだか、この小さな空間が世界を動かしている? という妄想まで生まれそうな、不思議な作品だ。
徒歩、または自転車で島旅
展示作品の多くは、港から徒歩で回れる距離感だ。もし鬼ヶ島大洞窟や島の隅々までじっくり回りたいなら、レンタサイクルを利用する方法もある。
高松港を拠点とするなら距離も近く(遠くに高松港が見えるほど)、しかしビーチリゾートや「島旅」の雰囲気も味わえる、隠れスポットだ。
↓ ※瀬戸芸2022関連記事については、下記にまとめています。