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みんなと同じ料理が食べたい(#ねかいごと #デリソフター)

2023年11月11日、介護の日に表参道でクローズドイベントとして開催された「 #ねかいごと 」。今年は11月10日、11日の2日間、東京都千代田区紀尾井町にあるLINEヤフーのオープンコラボレーションスペース「LODGE」にて一般公開されます(入場無料)。イベントに先駆けて、昨年の展示プロダクトのひとつ、「デリソフター」にまつわる#ねかいごとを紹介します。

介護職として働いていた頃に出会った女性利用者のTさんは、息子さん夫婦と3人暮らし。要介護5で、日常生活は食事から排泄まですべて介助が必要でした。歯はすべて抜けており、食事はもっぱら市販の介護食。家族や介護職に介助してもらいながら、いろいろな味のプリン状の食べ物を歯ぐきでつぶすようにして食べていました。

あるとき、車椅子のTさんと一緒に地域の夏祭りに出かけました。他の利用者さんも一緒です。屋台ではかき氷が配られていました。お祭りの定番、いちご味のかき氷。利用者さんたちが楽しそうに口元にかき込む中、Tさんは目をつぶり、じっと座っています。

「Tさんもかき氷食べる?」

先輩介護職が声をかけると、Tさんはうなずきました。舌の上にかき氷をわずかに乗せると、舌を必死に口元に戻し、飲み込みます。暑いし美味しいよねぇと、みんなで笑い合いました。Tさんもこれまでにないぐらい、満足げに笑っていました。

私が働いていた介護事業所では毎日、職員と利用者さんが昼食のメニューを相談し、一緒に買い出しに行きます。時には外食することもありました。そんな自由度の高い事業所でも、Tさんにみんなと同じ食事を提供することはかないませんでした。

介護食は年々進化しています。それでも「みんなと同じ料理が食べたい」という願いを叶えるには、食のバリエーションはあまりにも豊富です。そんな無謀とも思える願いを「デリソフター」はシンプルに叶えてくれました。

味や見た目はそのままに、柔らかさだけを変える。しっかりした歯ごたえのブロッコリーが、口に入れるとほろりとほどける。唐揚げが驚くほど柔らかくなる。

デリソフターで調理した食べ物を初めて食べたとき、最初に浮かんだのはTさんの顔でした。 

みんなと一緒に食べたかき氷。あのときのTさんの嬉しそうな笑顔。同じものを食べて笑い合った幸せな時間。きっとデリソフターは、あの喜びに満ちた食卓をこれからもたくさんつくってくれるだろうと信じています。

執筆:宇井吉美(aba代表取締役CEO)
初出:2023年11月11日・ねかいごと2023

デリソフター:https://www.delisofter.com/

ねかいごと2023

今年のねかいごとイベントは11月10日(日)、11日(月)の2日間、東京都千代田区紀尾井町にある オープンコラボレーションハブ LODGEにて、無料で一般公開させていただきます。日々の暮らしの中で大切にしたい、ちいさな願い、その願いから生まれたプロダクトに興味がある方ならどなたでも大歓迎です。

▼参加申込は、下記Peatixにて受付中です!


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