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紅葉選書〜11月のAoyama Book Colors〜

Aoyama Book Colors、それは青山ブックセンターコミュニティー支店による色々選書。本屋さんで出会って大切に読んできた本を、毎月メンバーのコメントと共に紹介します。

11月は紅葉選書。表富士でのAoyama Book Camp(焚き火の灯りで本を読みました)で見た景色を思い出しながら、ピックアップしました。

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1、青山ゆみこ・牟田都子・村井理子『あんぱん ジャムパン クリームパン 女三人モヤモヤ日記』(亜紀書房)

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2020年は本当にあっという間だった。何をするにしても気を遣わない日はなかった。それでも、できるだけ平穏に生活を続けようとしていた。先の見えない霧の中、みんながそれぞれ懸命に生きていたことを、この本は交換日記という形で記録している。

相変わらず不安が消えることはないけれど、おしゃべりできる場があること、「隣に人がいる」ということは少しだけそれを癒やしてくれる。数年後に読み返した時、きっとすごく大事な本になるんだろうなという予感がむくむくしている。

装丁・レイアウト:たけなみゆうこ
イラスト・題字:細川貂々
印刷・製本:株式会社トライ
選書:松下大樹


2、杉﨑恒夫『パン屋のパンセ』(六花書林)

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わたくしの今日を消すのにふさわしい石棺型の白い浴槽(p.29) 

嫌なことがあった。帰りも遅くなり、何もする気が起きない。すぐに寝たい。でも、無意識にお湯を張っていた。入れ過ぎた。肩までどっぷり浸かる。溢れ出る。湯気が立ち込める。水に流して、お湯に溶かして。もうすべてがどうでもよくなって。生き返る。今日の棺はきっと明日の舟になる。

湯船 この場所は棺である今日を超えて初めて舟となる明日

扉絵:杉﨑綾子
装幀:真田幸治
印刷:相良整版印刷
製本:武蔵製本
選書:松下大樹


3、山尾三省『火を焚きなさい:山尾三省の詩のことば』(野草社)

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紅葉選書、と聞いて、緑の山々と赤く色づいた木々のコントラストが美しいこの本が浮かびました。深い緑と鮮やかなオレンジの色合いが絶妙で、紙の材質もすごくいい。素敵な装丁です(そしてページがみかん色なんです…)

「詩をもう一度、万人のものに取り戻したい。」屋久島で終生を過ごした山尾三省の魂の叫びと、自然、生き物としての原点にたち戻るようなことばが詰まった一冊です。同じシリーズの『五月の風』と合わせて楽しむのもオススメです!

装丁:文京図案室・三木俊一
装画:nakaban
選書:Ayana Suzuki


4、長田弘『世界はうつくしいと』(みすず書房)

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穏やかで、繊細で、凛としたことばが散りばめられた、長田弘さんの詩集。
ふと思い返すと、近頃の自分は何かに心を動かされたとき「スゴい」「ヤバい」「きれい」「超いい」ばかり使っていた。だからこそ、何気なく、ふとした瞬間に「うつくしい」という表現を使えるひとの感性にとても憧れる。

うつくしいものに溢れた世界をいとおしく思えるような、心の余裕を大切にしたいと思える一冊。

選書:Ayana Suzuki


5、鎌田浩毅『やりなおし高校地学:地球と宇宙をまるごと理解する』(ちくま新書)

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地球ってどうやってできたのでしょうか?

地球の歴史の話をする時、〇〇生代で表します。「生」は生き物、「代」は時代を表します。
大きく生物の住める環境が変わる事で、時代を決められたからです。

恐竜がいた時代に、急に隕石が降ってきて、恐竜が絶滅した。その時にかろうじて生きていたのが哺乳類。
想定外の繰り返しで現代に繋がってます。
地球の年齢が38億歳なので、私たちの実年齢は、38億+28歳(サバ読みましたが気にしません)になります。

そんなものの見方を教えてくれるのが地学です。いつもとちょっと違う視点を知りたい時にどうぞ。

選書:まーちん


6、長谷川愛『20XX年の革命家になるには──スペキュラティヴ・デザインの授業』(BNN新社)

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アーティスト・長谷川愛氏がMITメディアラボと東大で教えた授業を元に思索トレーニングブックとしてまとめられている。

フィクションがいかに現実になったか、現実がフィクションに近づいている部分などが書かれており、空想の大切さを教えてくれる。
巻末の著者のオススメ本も気になる一冊。

選書:岸本晃輔


7、燃え殻『ボクたちはみんな大人になれなかった』(新潮社)

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「ブス」なのに最も愛した人で、自分よりも好きになったことがある僕と彼女との話。90年代の音楽の描写がたくさんあって、読んでいると一緒にタイムスリップしたような感覚になります。

夕焼けの装丁が紅葉色にも見えるなと思い選びました。

選書:浜田綾


8、安達茉莉子『何か大切なものをなくして そして立ち上がった頃の人へ』(MARIOBOOKS)

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AtoZのアルファベットごとに、何か大切なものをなくした人の心の機微が美しい英語と日本語、温かみのある絵で綴られた本です。

「VOICE IS ONE THING WE WILL FOREVER BE MISSING.❝いつも恋しく思うのは声だ❞」

印刷:中野活版印刷店
製本:中正紙工
制作協力:ビーナイス
選書:須藤妙子



紅葉選書、いかがでしたでしょうか。12月は…クリスマス選書? また店内で歩きながら探してみたいな、と思っています。お楽しみに。

文:松下大樹


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