Fiat500FとW124について
今日は私のクルマ趣味の基準になっている2台をとりあげてみます。
まず、W124メルセデスベンツ300Eについて。
1985年リリースの最善か無かの信念のもとに生産されていた時代のメルセデスベンツベンツを代表する車種で、セダンがW124、ステーションワゴンがS124型になります。
1980年台後半から90年台の都心はなんでこればっかり走ってるんだ?となかば呆れて見飽きるほどに走っていたミディアムクラスメルセデスでした。
私が乗れたのはもちろん中古のごくオーソドックスなセダンでファブリックシートの4ATモデルでした。
今、見ると横幅は1800mmもないため細く、縦に長いフォルムに感じます。世の中のタワーパーキングは大抵1850mmの横幅が多く、狭いものは1800mm、長さは大抵5000mm、高さは1550mmで、W124、S124の場合で、長さ4765mm、幅1740mm、高さ1490mmで、まずたいていのタワーパーキングに入れます。
ファブリックシートのW124の車内に入ると独特の臭いがあります。シートの素材に使われている馬の毛やヤシの木の繊維からの臭いでどこか南国を連想させられました。
そのシート。実に素晴らしかったです。今どきのシートに比べても厚みはそんなに無く、スポンジの柔らかさもなくアタリは固めでしたが、何時間座っていても変に熱がこもることも、ヘタリを感じることもないもので、革シートよりもファブリックが良いと言いたくなる素晴らしい品質のシートでした。
よくこの時代のメルセデスベンツ特にW124を持って「メートル原器」と評していた方がおられましたが、まさしく全ての車の基準になるモデルだったと思います。
今は大きくなってしまったフォルクスワーゲン ゴルフが全てのコンパクトカーの基準とされていることと比べて、W124は「すべての乗用車」の基準くらいに思えた程に、ハンドル、ペダル、変速、エンジンの加速、足回りの動き、走りのバランス、ボディの剛性感、ボディの取り回し、走行時のバランス、デザインとしての塊感、加速感、減速感、見切りの良さ、走行中の安心感、操作系の適正な配置の仕方
触れられるありとあらゆるものやフィールがメルセデスの理念の元にコントロールされていて、これが人によっては押し付けがましいと感じられる独特のオーラを纏っているのでしょう。
過剰な品質とまで言われ、実際メンテナンスで定期的に交換する消耗品扱いのパーツの多さも凄まじいものがあり毎年30万円ぐらいのメンテナンス費を払っていた記憶がありました。
あれから30年以上経った現在の車の素晴らしさは、劣化するパーツのコントロールがされていてメンテナンスにかかる費用の少なさ、完成度の高さがいちばんの進化でしょうね。
そう、おびただしい数のセンサーの多さ、コンピュータや通信設備を搭載したことは逆に車の個体の寿命という意味では短くする要因にしかなっていないように思えてしまいます。
完全自動運転車が普及するまで、W124がいまだに市場で一定数存在し続けていることのメリットはここにあるのでしょう。私にお迎えが来るか免許を返納するかそれまで案外この現状は変わらないのかもしれません。
ただし、こと燃費については、3Lの4速ATで高速リッター10km程度までしか伸びなかった記憶があります。
適切に消耗品パーツ交換メンテナンスをしていれば40万キロ走ってもヘタレないと言われ、20万キロまでは乗りましたが、実際ボディ剛性も走りも内装もしっかりしたままでした。
今のモノコックフレームの金庫のような硬さというよりかは、鋼管フレームを頑丈に溶接して積み上げたような芯のある剛性感で、あえて言えば、鼓膜への圧迫感が少ないのに機密性と剛性は同様の強さがあるW124素晴らしいボディでした。
メルセデスベンツ300Eと同時期に乗っていたのが1967年式のFiat500Fでした。
1957年から1975年まで生産された二代目Nuova500シリーズの一番数が売れたモデルです。
1975年の最終販売からたった10年後の1985年にはメルセデスベンツのEクラスが発売されたことを思うと車の進化のスピードの早さはものすごかったのだと驚きます。
シトロエン2CVは1990年頃まで生産されていたし、初代ミニは1959年から2000年まで、初代のフォルクスワーゲンビートルはもっと長く2003年まで生産されて続けていたので、ちょっとうがった見方になってしまいますね。
Fiat500Fの何が素晴らしいのか?
一番は見た目の可愛らしさ。初代はハツカネズミ顔からトッポリーノと呼ばれたFiat500はある意味オーソドックスはFRのクラシックカースタイルから、第二次世界大戦後のモータリゼーションの高まりでスクーター族が自動車へ乗り換える需要に応える形でFiat600Dのさらに廉価版Fiat500をリリースさせた。
設計は初代Fiat500トッポリーノからチシタリアのレーシングカー、Fiatムルティプラ、Fiat128、Fiat127まで設計されたダンテ・ジアコーザ氏でRRの空冷ニ気筒エンジンを搭載しつつ4人乗り何より見た目のフォルムの可愛さが魅力です。
現在のFiat500は実は4代目、BEVシリーズは5代目になるのですが、不遇の3代目はunoシリーズのさらに下のグレードを担った角張ったFFでした。
2代目Fiat500F、Nuovd500、チンクエチェント、見た目どおりの1/1サイズのブリキのオモチャ、しかも走ってしまうといった印象で、とにかくミニマムなサイズなのに人を良く考えていて、不思議と狭さは感じなかったです。
強制ファン付きの空冷並列二気筒エンジンのパタパタというエンジン回転数を高回転域に保ったまま車の持つ最高の加速と最高のシフトチェンジを披露しつづけても、他の車に軽々と追い抜かれていくという自虐的なアドレナリン噴出装置で、なんか人知れず汗をかく運動マシンでもありました。そういえばクーラーは付いて無かったです。
代わりにAピラーに付いた三角窓を起こし、手回しで窓を開け、車内のドラミング音を逃す目的で付けられていた屋根を開けてやると夜などは風を感じて案外涼しく乗れました。
当時乗っていた2ストベスパと実に相性が良かったです。
実際Fiat500Fに乗っていると振動でワイヤーが外れるとか、季節の変わり目でキャブレターがグズるとか、オイル交換も頻繁にしないといけないなど、何かしら手を入れてやらないと走らないため、そういう点でも2ストベスパやバイクのメンテナンスで培ったノウハウがそのまま活かせました。
まさにブリキのオモチャでしたが、この手を入れることが楽しかったですね。シガーソケットライターも無くて、ETC無しで首都高を疾走したり出来ました。ただ、本当に命がけで走ってました。
首都高速はもはやETCなしだと走れなくなってしまい、マイノリティを無視した国では生きづらいクルマでもあります。
Fiat500Fからはミニマムなクルマの割り切りとそこからくる気軽さや走ること本来の楽しさ、もっと言えばクルマがいることそれだけで感じる喜びを教えてもらいました。
今、市場に流れている2代目Fiat500の相場は300万円からになっています。総じてレストアした車輌です。私が手に入れた時は30万円台でしたから、あの時経験しておけて本当に良かったと思います。
メルセデスベンツEクラスは200万円前後で生きてる車輌も見つけられるため、思ったほど価格が上がらないでいます。
値上がりしている80年台以前の四角いフォルクスワーゲンゴルフの方が割高かもしれません。
初代サーブ900の相場の方が高いのではないか?
メルセデスベンツEクラスは、この年代のクルマというだけでなくクルマのメートル原器と言われたものを体験する入門車に最適ではないでしょうか。
メーカー自らレストア販売し販売していたボルボのクラシックガレージも2022年に終了してしまったのは大変残念です。
2015年からMAZDAがNAロードスターのレストアパーツ供給を始められ、現在は170パーツ以上も再生産されているのは驚異的なサービスであるのだとあらためて知りました。
あらためて、メルセデスベンツEクラスで500Eや400E、4マチックワゴン、ストレッチリムジンなどの個性の立ったモデルは高額ですが、普通の300EやE280、E320のセダン、またはS124のワゴンで整備履歴がしっかりしている生きている車輌であればまた手を出してみたいと感じます。
引き受けてもらえるショップやディーラーとコンタクトを取れるかが旧車に乗る時の大事なポイントなのだと思うようになりました。
トップ画像はカーセンサーの販売中車輌からお借りしました。
Fiat500FではなくFiat500ジャルディニエラというステーションワゴンタイプです。