発声障害を治す~その8~
色々と発声障害の事を調べていくと、よく見るのが声の乱用という事。教師、歌手、アナウンサーなどの声を毎日多く出す人たちがなりやすい事がわかる。
なぜこういう事が起こるのか。それは、向上心があるからだと思っている。今の声ではダメだ。今の喋り方ではダメだ。という思い。もっと大きな声を出さないと。もっと高い声で歌わないと。もっと滑舌よく喋らないと。そういったような思いがあって声を変えていく。
もちろん、向上心は素晴らしい事で必要な事。それがなければ成長はしないし、なければその人はそこで終わってしまう。では、何がいけなかったのか。それは、努力の方向が間違っていたという事。
僕の間違いを例にしてみる。
小さい頃から滑舌が悪く、聞き返される事が多かったし、歌も下手だった。声にコンプレックスがあった。でも、俳優がやりたくて事務所に入った。それから、「外郎売」をやったり「早口言葉」をやったり、腹式呼吸を練習したり、「歌」の練習をしたり。本当に色んな事をやった。滑舌よく喋りたい、歌が上手くなりたい、思い通りの声で芝居がしたい。そんな思いで毎日ボイトレをしていた。ほぼ同時に接客のバイトも始めていたので、「いらっしゃいませ」と大きな声で毎日言うという事も始まった。
ここまで見てると何が間違いかなんてわからないと思う。でも、声を変えたいと思いながら声を出すという事は、自分の発声の仕方を変えるという事。声帯の閉じ具合なんて意識的には出来ない。左の声帯だけ動かすなんて出来ない。その無意識に行われる発声を変えようとしている。たとえその発声が間違っていたとしても無意識に動いているから気付けない。そして、その間違った発声が自分の発声になってしまい、障害となって定着する。
仮に間違った発声を少しやったくらいなら問題は無いと思う。元の発声の仕方が癖づいているからそこに戻っていく。しかし、毎日の発声練習で間違っている発声を繰り返して声を変えようとしていると、どんどんそっちに声が変わっていく。残念な事に、声は一定ではないから、その発声でいい声が出てしまう事がある。間違った発声をしていたらダメな声ばかりになるとわかりやすいが、そんな事は無い。だからこれでいいんだとも思ってしまう。難しいのはこういう部分で、気付いた時にはかなり進行している。
今、発声障害の人や、発声障害かも?と思っている人は、自分の今の発声を振り返って欲しい。顎の下に力が入っているか、喉仏が高音でもないのに上がるか、声の出始めが出しづらいか、最初は出るがだんだんかすれてくるかなど、色んな角度から分析してみて欲しい。鏡をいくつか置いて横からとか斜めから声を出す自分を見てみたり、動画にとってみるのもいい。
叫ぶように声を出していて、力む発声が当たり前になっている教師も、声が小さい事に悩んで大きな声を出したいと力を入れて話すようになった人も、理由は違えど力む発声になったのは同じ。神経的な病気ではなく、発声の癖で声が出にくくなった人は、ほぼほぼ全員が余計な力みがあると思っている。舌の力みも胸鎖乳突筋の隆起も余計なもの。
姿勢の悪さや身体の硬さも影響があると思っているので、この部分も自分の身体を使って分析している。今現在、声の調子は数日良い。このままこの状態を「自分の発声」に癖づける事が出来れば発声障害を克服と言って良いと思う。まだ波は来るかもしれないし楽観視できないが、今の方向性でしばらく行ってみるのは間違いなく価値があるはず。がんばろう。