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【初釜】新年の始まりを「茶の湯の香り」で祝う

今回は、私が通っている茶道教室で開かれた【初釜】の話題に触れたいと思う。

初釜とは、年が明けて初めて釜に火を入れ、新年を祝う茶道の新年会。

茶室のしつらえや茶道具も、普段とは違う華やかな装いとなり、
「あぁ、今年も初釜を迎えることができたな」と、
お稽古をしている人にとっては、気持ち新たに、身も心も引き締まる特別な行事。

お床に掛けられたお軸は『松樹千年翠(しょうじゅせんねんのみどり)』

「松の木は千年変わることなく緑を保っている」という意味で、長寿を祝うおめでたい席などでよく用いられる。

そこには、うつろいやすい世の中のうつろうもののみに目を奪われて常住不変の真理を見失うようなことがあってはならない、

年月や季節に左右されず、美しい緑を保ち続ける松のように、人知れぬところで力を尽くし、目立たなくとも地道な努力が、長い生命力を生み出すのだ。
との意が込められている。


そしてもう一つ、初釜ならではの結柳(むすびやなぎ)

長い柳を結んで飾ることは『一陽来復(いちようらいふく)』を意味しており、
「冬が去って春が来ること」

「悪いことが続いても、そのあとには必ず良いことが訪れる」との意が込められている。

そんな新年ならではのしつらえを目で楽しんだ後は、いよいよ今年最初のお茶が点てられる。

炉の中に組まれたお炭のそばに《お香》が入れられ、炭の火で温められてお香の香りが立ちはじめる瞬間が、なんとも言えない優雅な風情を感じる。

茶室が優しい香りに包まれる中、茶碗に抹茶が入れられ、柄杓からお湯が注がれる音、茶筅でお茶を点てる音が一層趣を感じさせ、そして、フワリと香るお抹茶の香りが心穏やかにしてくれる。


お茶をいただく前から、その味わい深い香りに心癒され、改めて茶道を通して自身の感性が磨かれ豊かにしてもらえる、その魅力の素晴らしさを感じた。


お抹茶のあとに、懐石を簡略化した『点心』と呼ばれるお弁当をいただき、場が和んできたところで、私の通っている教室では恒例となっている《くじ引き大会》が行われた。

その景品の豪華なこと。
お茶碗や茶杓、袱紗バックや古帛紗など、どれも欲しくなるような茶道のアイテムが用意され、初釜で最も盛り上がる瞬間!

そして、いざ私の番!!

当たったのは、なんと江戸時代から続く京都の老舗「山田松香木店」の《匂袋》

香りの勉強をしている私にとってはピッタリで、これには先生も驚きのご様子だった。

十二単を見立てたデザインがとても素敵で、匂袋に詰められている「白檀」「丁字」「龍脳等」の、まろやかな甘さと、奥ゆかしく重厚な香りが、心落ち着かせてくれる。

匂袋を十二単を表現した飾りの中に仕込む
紫式部をイメージした紫薄様(むらさきのうすよう)の色合いが美しい


新年の始まりが、茶の湯の香りと共に輝かしいスタートとなり、一層今年のやる気を起こさせてくれた初釜の席となった。

そして改めて、茶道はお茶を楽しむだけでなく、五感を研ぎ澄ますことで得られる美しい体験、広がる世界を大切にしながら、今後も取り組んでいきたいなと感じた。


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