見出し画像

「日本語教育の質」と「日本語教育の参照枠」の話

こんばんは。

今日も認定日本語教育機関に関する資料を読みました。

今回読んだ資料は令和5年12月28日に公開された「認定日本語教育機関の認定申請等の手引き(令和6年度申請用)」です。

こちらも文化庁のホームページから見ることができます。

https://www.bunka.go.jp/seisaku/kokugo_nihongo/kyoiku/pdf/93982901_09.pdf

こちらの手引きはなんと98ページもあります!!

一応サーっと目を通しましたが、それでも読むのが大変だった・・・。

これから認定日本語教育機関の申請手続きに関わっていく方々はもっと大変なんだろうなあ・・・。

でも、これを読むことで今後国内の日本語学校(日本語教育)がどのように変わっていくのかがわかるので、日本語学校で働いている人や日本語学校で働きたい人はもちろん、フリーで教えている人なども一度読んでみることをおすすめします。

今回の記事ではこの手引きを読んで思ったことをまとめました。

特に読んでいただきたいのが「②日本語教育課程の編成」についてです。

長めの記事になっているので、時間がない!っていう方は②だけでも読んでもらえると嬉しいです。


①認定日本語教育機関の認定の審査について


まずは、認定日本語教育機関になるための審査についてです。

審査スケジュールは以下の通り。

認定日本語教育機関の認定申請等の手引き 8ページ

今年の10月には認定校が生まれるんですね。

すごいなあ~。法律が制定されて一気に動き出したって感じがしますね。

どこの学校が一番最初の認定校になるのか気になります。

そして「審査」ですから、既存の法務省告示機関である日本語教育機関(いわゆる日本語学校)だからと言ってすべて認定日本語教育機関になれるわけではありません。

認定申請→審査→認定「可」で認定日本語教育機関になることができます。

認定日本語教育機関認定基準(令和5年文部科学省令第 40 号。以下「認定基準」とい う。)第2条に規定するとおり、認定日本語教育機関には「留学のための課程」、「就労 のための課程」、「生活のための課程」の3分野の日本語教育課程があり、分野別に課程 の審査を行った上で、機関について認定を行う。

認定日本語教育機関の認定等の手引き(令和6年度申請用) 2ページ
https://www.bunka.go.jp/seisaku/kokugo_nihongo/kyoiku/pdf/93982901_09.pdf

認定日本語教育機関認定基準はこちら。

https://www.bunka.go.jp/seisaku/kokugo_nihongo/kyoiku/pdf/93982901_02.pdf

この審査も日本語教育機関設立時と同様レベル(いや、それ以上かも)なくらい大変で複雑なものだと思います。

審査スケジュールにも書いてありましたが、審査の流れは実地確認、2回の書類審査(必要に応じて面接審査や実地審査有)があり、その書類の量がまあ膨大ですね。

私はもちろん日本語学校を立ち上げることに携わったことはありませんが、以前働いていた学校には設立時に提出した書類の控えが残っていたのでどんな書類を提出していたかっていうのはなんとなくわかります。

そこで見た書類と同じようなものを提出したり、新たに作成したりする必要がある書類などいろいろあるみたいです。

手引きの後半部分に「様式第〇ー〇号」といった必要書類が載っているので、興味がある方はぜひ手引きをご覧ください。

これを見ると日本語学校を作るのって本当に大変なんだなあって思うのと同時に、日本語学校を立ち上げて今でもバリバリ活躍している先生方を見ると本当に尊敬の念しかありません!!


申請手続きですが、大きい日本語学校であれば、マンパワーがあってなんとかできそうですが、小さい日本語学校や新規校は結構大変なんじゃないかなあって思います。

移行措置として法施行後5年間は法務省告示機関として留学生を受け入れることができますが、その間にこの審査にクリアしないと留学生の新規受け入れができなくなります。

5年って長いようで結構短い気がするし、通常通り働きながらこの認定準備をするって・・・。

うーん。考えただけで、ちょっと嫌になりますね。

もちろん責任者の方を中心にこの審査のための準備を進めていくと思いますが、現場の教職員の皆さんの大きな負担にならないようにしてほしいです。

(と、働いていたあの学校に言いたい・・・)

②日本語教育課程の編成について

審査内容は様々ありますが、その中の1つに「日本語教育課程の編成について」があります。

手引きには日本語教育課程の編成について以下の通り書かれていました。

ちょっと長いので少しずつ区切って紹介。

認定制度の趣旨は、日本語教育を適正かつ確実に実施することができる日本語教育機 関を認定することにある。このためには、単に外形的に認定基準等の要件を満たすのみで はなく、とりわけ適正な日本語教育課程を自ら編成できる能力を有する日本語教育機関 を認定することが必要となる。各認定日本語教育機関は、その基本理念、目的及び目標に 応じて、受け入れる生徒や所在地域の状況等も踏まえながら、自ら日本語教育課程を編成 できる必要がある。

認定日本語教育機関の認定等の手引き(令和6年度申請用) 11ページhttps://www.bunka.go.jp/seisaku/kokugo_nihongo/kyoiku/pdf/93982901_09.pdf

「日本語教育を適正かつ確実に実施」が「日本語教育の質の確保」につながるんだと思います。

上記の文、さらに続きます。

このことは、上記法の趣旨を踏まえると当然に予定されているものと 考えられる。これを踏まえ、「認定日本語教育機関日本語教育課程編成のための指針(案)」 においても、「それぞれの機関が、本指針を土台とし、自ら掲げる教育理念や教育課程の 目的及び目標に基づき、発展的かつ創造的に教育内容を計画、実施し、学習者(生徒)が 習得を目指している到達レベルまで見通しを持って学べるように支援し、学習者(生徒) への評価を適切に行うことが重要である。」とされている。

認定日本語教育機関の認定等の手引き(令和6年度申請用) 11ページhttps://www.bunka.go.jp/seisaku/kokugo_nihongo/kyoiku/pdf/93982901_09.pdf

「認定日本語教育機関日本語教育課程編成のための指針(案)」はこちら。

https://www.bunka.go.jp/seisaku/kokugo_nihongo/kyoiku/pdf/93982901_06.pdf


そして、最後に注意事項。

このため、審査の過程において、他の日本語教育機関が策定した日本語教育課程をその まま使用することや、それに類する状況が判明した場合には、基本的には日本語教育課程 の編成に関する基準を満たさない蓋然性が高いものと判断されることに留意すること。

認定日本語教育機関の認定等の手引き(令和6年度申請用) 11ページhttps://www.bunka.go.jp/seisaku/kokugo_nihongo/kyoiku/pdf/93982901_09.pdf

別の学校のパクったらだめですよ、ってことですね。

まあ、そりゃあそうですよね。


つまり、認定日本語教育機関の認定を受けるためには改めて「留学」「就労」「生活」ごとに教育課程を編成しなければならないんですね。

日本語学校では既存のカリキュラムやシラバス等を見直す必要があるということです。

これもまた大変そうな作業ですね・・・。

そこで注目なのが先ほども出てきた「認定日本語教育機関日本語教育課程編成のための指針(案)」

それにはこのように書かれています。

2.考え方
〇 認定日本語教育機関は、教育課程の編成に当たって本指針で示された事項に基づき、対 象とする分野の特性を踏まえ、「日本語教育の参照枠(報告)」1(令和3年 10 月 12 日 文化審議会国語分科会)(以下「日本語教育の参照枠」という。)並びに別表「言語活動 ごとの目標」(以下「別表」という。)を参照しながら、目的及び到達目標、学習目標に 対応した教育内容を適切かつ体系的に定め、目標とする日本語能力を習得できるよう 授業を設計、実施する。

認定日本語教育機関日本語教育課程編成のための指針(案) 1ページ
https://www.bunka.go.jp/seisaku/kokugo_nihongo/kyoiku/pdf/93982901_06.pdf

「日本語教育の参照枠」や「言語活動ごとの目標」を参照しながら、授業を設計、実施する必要があるそうです。

授業を設計、実施するに当たって学校ごとに教育の質がバラバラにならないように今回この「日本語教育の参照枠」を使うことになったのかな~って思います。

つまり、「日本語教育の質の向上」のために今後一律して「日本語教育の参照枠」を活用していきましょう、っていう流れになってきているのかな。

公立学校の学習指導要領みたいな位置づけになってくるのかな??

確かに、教育課程の目的や学習目標がある程度統一されると日本語教育の質の向上につながったり、学校ごとで教育の質にばらつきが出ないようになると思うので「日本語教育の参照枠」を活用するのはいいことだなって思いました。

ちなみに「言語活動ごとの目標」は認定日本語教育機関日本語教育課程編成のための指針(案)の後半に載っています。

非常に読みにくいと思いますが、参考までに「留学」の言語活動ごとの目標はこんなかんじ。


認定日本語教育機関日本語教育課程編成のための指針(案) 20ページ

「留学」「就労」「生活」ごとに必要の設定レベルは異なっています。

さらに、同じレベルでも言語活動ごとの目標の内容や「聞くこと」「読むこと」「話すこと(やりとり)」「話すこと(発表)」「書くこと」の内容も異なっています。

読み比べてみるとおもしろいです。


今後オンラインでフリーで活動していくことになりそうな私にとってこの「日本語教育の参照枠」や「言語活動ごとの目標」は授業を作っていく上で非常に参考になります。

考え方を変えれば、「日本語教育の参照枠」や「言語活動ごとの目標」をもとにした授業を作ることで、日本語学校と同じような授業を提供することが可能になるかもしれないって思いました。

「日本語教育の参照枠」や「言語活動ごとの目標」をもとにした授業

日本語学校と同じような授業の提供ができる

学習者さんが集まる

収入が増える

ちょっと大げさな考え方ですが・・・笑

③「日本語教育の参照枠」について紹介

認定日本語教育機関の考え方を取り入れた授業を作っていきたい。

そうなると重要になってくるのが「日本語教育の参照枠」の知識です。

記事に書くと長々となってしまうので、ここでは参考になるホームページなどを紹介します。

上記のホームページに行けば、「日本語教育の参照枠」について詳しく知ることができます。

読むのが大変っていう人はこちらの動画を見てみてください。

令和3年度「文化庁日本語教育大会」(WEB大会)の動画の1つです。

動画時間も13分ぐらいなので、簡単に見ることができます。

令和3年度「文化庁日本語教育大会」(WEB大会)のホームページはこちら。

令和3年度「文化庁日本語教育大会」(WEB大会) | 文化庁 (bunka.go.jp)


令和3年度のものなので、現在と変わっている点もあるかもしれませんが、「日本語教育の参照枠」だけではなく、様々な日本語教育の動画や資料を見ることができます。

私も全部見ていないので、今後時間がある時にすべて一度見てみたいと思います!

そして、最後に驚きのツールがありました・・・。

それが、「日本語能力自己評価ツール にほんご チェック!」です。

学習者さんが自分で言語活動ごとのレベル(A1~C2)まで知ることができます。

日本語も含め14言語でチェックすることができるので、学習者さん自身で行うことが可能です。

こんな便利なツールがあるなんて知らなかった・・・。

これ使えば学習者さんのレベルがすぐわかりますね。

ただ、学習者さんが自分で判断して選択するものなので、実際にそのレベルなのかは100%断定はできないと思いますが、だいたいのレベルを把握するためには有効に使えるツールだと思います。

「日本語能力自己評価ツール にほんご チェック!」は日本語教育コンテンツ共有システムから見ることができます。

④最後に

結構長々と書いてしまいました。

日本語教育の質の向上のために認定日本語教育機関の認定制度ができたわけですが、認定日本語教育機関に認定されたからと言ってすぐに日本語教育の質の向上につながるというわけではありません。

やはり日本語教育の質の向上のためにより重要なことは日本語教師の質の向上だと思います。

ここ最近認定日本語教育機関に関する資料を読んできましたが、改めて日本語教師自身のスキルアップや自己研鑽が大事になってくるよなあって思いました。

そのために「日本語教育の参照枠」についてもっと理解が必要だと感じました。

いろいろな研修やセミナーを受けて、「日本語教育の参照枠」の存在自体は知っていたけど、中身についてはほとんど頭に入ってないし、現段階でそれを活用した授業が提供できる状態ではありません。

なので、今後は「日本語教育の参照枠」についての資料を読み込んでいきたいと思います。

「日本語教育の参照枠」の資料も量が膨大なんだよな~・・・。

でも、頑張って読みます!

では、最後まで読んでいただきありがとうございました。

※しばらくネットが使えない実家に帰省するためにいったん更新お休みになる予定です。4月以降にまたたくさん書いていきたいと思います。再開した時にまたいろいろ読んでもらえると嬉しいです!!


サポートしていただけるととてもうれしいです! これからも引き続きいい投稿ができるよう頑張ります!