元祖あんこう鍋を食べる話 "山翠"
命あるものはは可愛くて面白くて、イキルに忠実で、美しい。
その中でも生殖に関することはヒトとかけ離れている方法をとる生き物も多く、興味と驚きで惹きつけられてしまう。
オスがメスの身体に噛み付いて寄生し、目も脳も口も心臓も全てがメスと一体化するアンコウの生殖方法を知ったのは私が小学生の頃だった。
とろけあって融合する性の在り方がなんとも言えないエロさで、興奮した記憶がある。
広大な海の孤独に支配された真っ暗な底で、オスはメスの香りを頼りに身体を探し当て、一生離れないように同化し、自身が精子本体になる様は並々ならぬ深い愛と執着を想像してしまう。
それはカマキリやクモのオスがメスのそばに行き栄養源となるべく自らを差し出すように、生き残る上で有利な方法が採用されて、他の選択肢が淘汰された結果なのだろうけど、まあ、そんな生物的進化とか合理性はどうでも良くて、重たすぎる愛が連想された時に飢えた私はよだれが出る。
メスの私はそんなオスをオカズにご飯をおかわりできてしまうのだ。
だから福島に旅行をしに来たのに、わざわざアンコウを食べるためだけに茨城まできたんだよ。
さて、早速あんこう鍋を頼むとする。
その前にあん肝は食べておきたい。
車で来なければ日本酒も頼みたかったなぁ。
美味しいなぁ
なんといっても味噌の入っただし汁が美味しい。
なんだろうこれ。
たいてい鍋の汁は多様な栄養素が絡み合って美味しいけど、これは1つ頭が抜けている。
最後の一滴まで綺麗に飲みたくなるお味。
さすがあんこう鍋の元となるどぶ汁を産んだ土地で、元祖を名乗るだけはある。
あぁ、隣の席から〆にうどんを選択した人の悲鳴が聞こえる。
うどんも全然いいんだけどね、わかるよ。
この汁にご飯を染みさせて卵を回しがける雑炊の破壊力。
余すことなく鍋が綺麗になった。
三鳥二魚
江戸時代の5大珍味として
鶴(ツル)、雲雀(ヒバリ)、鷭(バン)鯛(タイ)、鮟鱇(アンコウ)が挙げられる。
現代で鳥は食べられないね。
食べれた頃が羨ましいなぁ。
バンは2022年に狩猟禁止されちゃったみたい。
あぁ、こうやって生き物が減って豊かさが失われていくんだなぁ
私が気づく前にいつのまにか楽しさが減ってる悲しみは今回の旅行でも感じたんだ。
もうこの世界を楽しめるうちにさっさと楽しまないといけない段階だよ。
海の豊かさをヒトが管理なんてできない
無意識に汚すことしかできないのだから、今この瞬間が1番美しい。
美しさを味わいたいよね。