ボールペンとペーパーナプキン
よく行く喫茶店のマスターにボールペンを借りたことがきっかけだった。
その時お店には、わたし、マスター、マスターの友人がいた。
以下、そこでの会話。
(わ→わたし、マ→マスター、友→マスターの友人)
わ:「すいませんすこしの間ボールペン貸していただけますか?忘れてしまって…」
マ:「いくらでもどうぞ。なに書くの?日記?」
わ:「そうです日記で…」
友:「(↑答え終わるより早く)え?ポエム?ポエム書いてるの?書いて書いて〜!ポエム!ポエム!」
(かなり無邪気に)
わ:「え?ポエム??」
マ:「そうだ、ポエム書いてよ〜」
わ:「ええー!そんなこと言われたのはじめてですよ………。いつも書いてるのは日記です」
友:「え!日記かいてるの?すごい!」
わ:「(褒められて気分が良くなる)え、ええ〜そうですか〜?
………わかりました!ポエムかきます!」
…
…
…
…
というよくわからない突然の流れでその場で詩を書くことになったのだ。
冒頭の写真は、ペーパーナプキンに実際にわたしが書いたものである。
わたしは普段そんなに詩を読んだり書いたりしないし、「ポエムってなんぞや?」という感じであった。
もちろんその喫茶店で「わたしは詩を書きます」なんて話はしたことがない。
「ポエム書いて!」とはじめに無茶振りをした、
マスターのお友達には初めて会ったし、
そんなお願いをされたのも人生で初めてだった。
マスターもそのお友達も完全にただのノリだったと思う。(茶化されているような嫌な感じは全くしなかったけど)
本気のオーダーではなかった。
でもわたしは、面白いと思った。
人生で一度もされたことがない無茶振りに応えてみようと思い、ボールペンとペーパーナプキンを手に取った。
すれ違う すれ違って離れる
香りが残る 離れても残る
一瞬で別れるモノ
一生 消えないモノ
体中をめぐっている
お店で流れる音楽と空気、わたしのいままでと、詩を書いているこの瞬間に、ピントを合わせるような感覚で書いた。
そうして恥ずかしがりながら二人に見せたのだった。
詩を書くこと自体もすこし恥ずかしかったし、見せるのも恥ずかしかった。
見せた二人の反応を見るに、そこまでいい出来でもなかったのだとも思う。
詩を頼まれてから見せるまでの一連の流れを、今思い出してもすこし恥ずかしい。
でも、書いてみてよかったと思った。
突然、その場で目の前にいる相手に向かって
自分を表現することを求められ、
それに「えいやっ」と飛び込む気持ちで答えられる
自分を発見できたことがうれしかった。
恥ずかしくても、挑戦できる自分がうれしかった。
自分をまたすこし、好きになった。
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