てのひらを、太陽に #未来のためにできること
晴れた空の下。
土を混ぜながら、どうすれば土に還れるか、考え込んだ。
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7年前、生まれ育った東京から、長野に移住した。山が美しく、田んぼが広がる。豊かな自然を見ながら過ごしていたら、すべてが時間をかけて循環していることに気づいた。
緑が茂り、実がなり、虫や鳥がそれを食べ、落ちた実やフンが土を豊かにする。季節が巡れば、再び緑が茂っていくけれど、そこに、私はどのように関わっているだろう?
残念ながら、その循環に、私はいなかった。
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きっかけは、ゴミだった。
移住先では、ゴミを出すのに自治体指定の袋を買わなければならなかった。回収頻度も少なく、リサイクル系ごみはそれぞれ月に一度。今まではマンション住まいで、好きな時にゴミを出すことができたから、最初はとても不便に感じた。
袋が増えればお金もかかるし、ため込んでおくも嫌だ。徐々にごみを減らそうという気持ちになっていった。特に、生ごみ。いろいろと調べて、ベランダでもできるコンポストに辿り着いた。
できた土を使って、家庭菜園も始めた。作物が土に還り、新しく生まれ変わる瞬間を目の当たりにして、やっと理解した。
私は、とても不自然な存在だった。
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土を踏むことのない街に住み、スーパーで整然と並ぶ作物を買う。生ごみは燃やし、排泄したものはトイレに消えていく。自然からの恵みを自分たちのものしたまま、何も還元していない。私は、ひたすら循環を断ち切っていた。
自然は、無駄なくすべてが何かの役に立っている。私がその循環に戻るためは、奪うことをやめるか、何かを還元する存在になるしかない。では、私にできることは、何だろうか。
できることから少しずつ、変えていった。
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何かを買う時、捨てる時のことを考えるようになった。すぐに捨てるものを、手にしないようになった。生ごみを土に還し、植物を育てるようになった。家のベランダは緑で覆われ、生き物が集まるようになった。段々と、自然の循環との関わりができ始めた。
朝日が昇って、窓から光が降り注ぐ。美しい山々を前に、私もこの美しさの一部になりたい。そう思うようになった。
循環に戻る第一歩。
それは土に触ったり、森の中を歩いたり、自分の身近な方法で、美しい自然を体全体で感じることなのかもしれない。
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今日も、青空の下で土を混ぜる。眩しさから空に手をかざしたら、赤く透けたその手のひらにも、循環が見えた。