見出し画像

『つまらない住宅地のすべての家』 津村記久子さん

舞台になる住宅地の家族が一軒ずつ紹介されます。
登場人物が、たくさんいるのですが、最初に住宅地の地図と人物表がついていて、これは素晴らしい読書ガイドです。
(何十回と無く見直すことになりました)

どの家庭にも事情があり、それが言いようもないほどリアルです。
この住宅地に向かっている脱走犯。それぞれの住人によって、その脱走犯のことが少しずつ語られます。

どんな危害を加えるつもりかわからない脱走犯が、この不穏なことだらけの住宅地に来たら何が起こるのだろう。強い興味をかき立てられます。
家の事情と、脱走犯のプロフィールが同時に語られていきます。それが不安をかきたてます。この効果は不思議です。

ちっとも「つまらない」ことない、です。

すべての家の事情が明らかになって、それが一つに収束していくところがミステリーとして素晴らしいと思いました。

群像劇と言うほど重苦しくなく、深刻な中にも明るさがあります。
私も自分の住む街が愛おしくなりました。
今度、自治会で何かあったら参加しようと思います。

いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集