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「シーン」を探す <小説の書き方>
私がプロットに使う【シーン表】の中には「シーンのポイント」という欄があって、そのシーンに何を書くのかを簡単に書くようにしています。
それをすべてのシーンの分、繋げるとあらすじになります。
「シーンのポイント」に書かれる「シーン」は、最初に思いつくものです。想像の翼を思い切り拡げて、書きたいこと、書きたいセリフなどを頭に思い浮べてメモをしていく。すると芋づる式にいくつかのシーンが生まれて、小説の骨格らしきものができていきます。
プロット作成工程の中では一番最初の「アイディア出し」から生まれるシーンです。
制約がないから楽しい作業です。
最初の「アイディア出し」とは違います
しかし、ある程度「シーン」がたまっていくと、「シーン」と「シーン」の繋ぎになる「シーン」やそれまで頭に浮かばなかった、しかし必要な「シーン」を探す段階がやってきます。
これは最初の「アイディア出し」に似ているようで、決定的に違います。
「アイディア出し」は本当に自由な発想で、頭を柔軟にして突飛なことでも否定をせずに、空想、妄想をしていきます。それで小説が成立するかなどと考えない、ある意味、無責任で良いのです。
今日、お話しする「シーン探し」は、初めの思いつきである「アイディア」が実際の小説に育ってきて、そして小説の全体像を見渡したときに、初めて対峙する局面です。
そのとき、あらためて別のシーンが必要だと気づくことがあります。
それは読者を驚かすひねりかもしれないし、真相にいたる論理の飛躍かもしれません。あるいは主人公がジャンプアップして成長するためのまったく別のサイドストーリーかもしれません。
当然、それまでの核になるアイディアやシーンとの整合性を考える必要があるのです。
実際に今、私はちょうどその段階にいます。次の新作ミステリーの【シーン表】が半分以上埋まっています。シーンの数にして17ありました。
そこから全体の構成を俯瞰して、さらに良くするために必要なシーンを考えています。
そのシーンがないと、長編にはもたない予感がするのです。短編なら十分いけるのですが、長編にするには足りない。
プラスする筋、もう一つの事件、作者も知らなかった背景、などをシーンにして追加する必要があると思ったのです。
そのための「シーン」はそれこそ星の数ほど浮かびます。次から次へと浮かびますが、次から次へと否定されます。ここまで組み上げたストーリーが壊れたり矛盾してしまうからです。
(新しく思いついた「シーン」が素晴らしければ、別の小説にすることはあり得ますが)
もう無責任な思いつきでは通用しません。思いつきやジャストアイディアでは小説は完成しません。だから苦しいのです。
よくアイディア一発の長編がありますが、ひとつのアイディアだけで引っ張れるのは、よほどのことです。初めの思いついたアイディアがさらに生きるように、商業ベースに乗る小説になるように、第二第三のアイディアを考えるのです。
実際の作業としては、これまでの【シーン表】の中から、「シーンのポイント」の欄だけを残して、隣に「プラスするシーン」の欄を作り、どんなシーンなら、ここまでの小説がさらに良くなるか探します。
そしてそのシーンはどこに入れるのが効果的なのか、誰の視点で語るのが良いか、などと煮詰めていきます。
もちろんこれまで考えたシーンをカットする場合もあります。時間をかけて組み上げたのですが、それでも本編を書いてしまったわけではないので、傷は浅いというか、良い小説になるのならリカバリーは喜んで、と思えます。
これは本編を書く前に設計図として【シーン表】を作るメリットです。
願わくばここまで考えてきたストーリーと化学反応を起こして、すごい小説になるように努力したいと思います。
とにかくまずは「シーン探し」を続けます。
説明を割愛しましたが、【シーン表】については、こちらをご覧ください。
※ちなみに初めての有料記事です(途中から200円)。
来月発売される『ひとつ屋根の下の殺人』も【シーン表】でつくりました。
その工程を詳しく解説した小冊子を、本の購入者にプレゼントする企画をつくりました。
この記事を読んで、【シーン表】やプロットの作り方に興味を持った方、
よかったら応募ください。
少し頭の中を整理できました。PCの前に座っているだけでは良いアイディアは浮かばないので、ウォーキングしてきます。
それではまた。