2:板挟みの親子関係
マガジン「人の形を手に入れるまで」の2話目です。まだ前書きを読んでいない方は、こちらからご覧ください。
私のことを話す前に、必要不可欠な話がある。それは私の両親の話だ。
1つ前置きしておきたいのは、私と両親は決して仲が悪いわけではなかった。父は私のことを可愛がってくれたし、母は厳しいながら私の主体性を伸ばす関わりを心がけてくれた。
そんな関係性で、なぜ私が両親の顔色を伺うようになったのか。その理由は、父と母の不仲にあった。
父と母はお互いの合意で結婚したのではなかった。そして悲しいことに、2人の相性が最悪なことに気づいたのは、周囲の強引な勧めに心折れて結婚してしまった後だったのだ。
母は事あるごとに「離婚」を考えた。そしてそれを中学生にもならない私に話して聞かせた。結局最終的には離婚を思いとどまるのだけれど、その理由はいつも「私」だった。
『あなたの為に離婚はしない』
その言葉を『あなたがいるから離婚できない』と変換するのはそんなにおかしな話じゃないだろう。人は物事を解決する為に、自分にできることを考える。自分に起因する「原因」は解決しやすい。そうして私は私のことを、「両親の離婚できない原因」に認定したのだ。
大きな矛盾を持って、私は家族の中に存在することになった。それぞれの親から愛されていることはわかっている。父は私を大切にしてくれている。母も私を大切にしてくれている。
私にとっても大切な両親は、自分らしく生きる為にお互いが邪魔で、その関係を解消できない原因は私の存在にある。
愛されているはずの父と母から、離婚という問題の前では障害である私の存在。でも私さえいなければとも言えない。愛されていることを知っている。悲しませることがわかっている。
私の自己肯定感は、失われないまま歪に育ち、土台はじわじわと侵食されていた。