自己肯定感を守る②:PSWの福祉コラム
「自己肯定感を守る」…このコラムは2本立てです。1本目で「自己肯定感とは何か」と言った基本的な解説をし、2本目で失われた自己肯定感をどのように回復するか、自己肯定感が奪われにくくなるための工夫についてを取り上げます。まだ一本目をお読みで無い方は、是非一度ご覧になってみてくださいね!
自分の自己肯定感の基礎力を知る
気構えないでゆるーく思い返してみて欲しいのですが、あなたは子供の頃…特に幼少期、「親に愛されている」と自信を持って育ちましたか?それとも、「親から見捨てられてしまう」不安を持っていたでしょうか?
自己肯定感は、親や養父母などから「無条件に愛されている」自信を根元に発生します。幼少期「親に怒られても大丈夫!」といった自己肯定型思考がその現れです。
一方で、「私がいい子だと両親は喧嘩しない」「私がいなければ両親は離婚できるのに」など精神的に不安定な養育環境で育つと、「いい子でなければ自分に価値がない」「私はいない方が良かった」という「条件付き自己肯定感」や「自己否定感」が発生します。
自己肯定思考の強度をここでは基礎力と呼びます。この基礎力が弱いのであれば、まずはその自覚が大切。自己肯定感の基礎力が弱いことを知っていれば、適切な対処ができるからです。
基礎力に合わせた対処をする
自己肯定感の基礎力が低い状態は、耐震工事が不十分な状態と同じです。本人にとっては震度7クラスのショックな出来事、でも周りからしたら震度1程度のちょっとした出来事。自分の感受性の癖が他人と異なっていることを知っておけば、「他人の発言をそこまで気にしなくても、周りもあまり気にしていない」ことがわかります。
また、耐震工事が不十分な状態でも、揺れにくい場所に移ることで自己肯定感の揺らぎを抑えることができます。自分の自尊心が揺らぎやすい人間関係を避けるという選択肢です。具体的には、ストレス源となっている家を出る、転職するなどの環境調整がそれにあたります。
他発的肯定を自発的肯定に換える
他人からの肯定は基本「条件付きの肯定」です。でも、「その条件を満たせなくなったら肯定されなくなるか」といえば、そういうものではありませんよね。
「絵がうまくなくなったら人として価値がない」?「ご飯がきちんと作れなければ親としての資格がない」?もちろんそんなことはありません。
他人からの条件付き肯定は、肯定するきっかけでしかありません。しかし「自己肯定」が条件付きになってしまうと、その条件を満たせなくなった時自分の価値を一気に失ってしまいます。
自分の価値は自分が決めて良いものです。無条件に、多少無理やりでも「私すごいやん」と言える癖をつけましょう。
描画を楽しむ自分も、仕事に頑張る自分も、時には自分のために休憩を挟める判断力を持った自分も、等しく「私が私のために活動できている」素晴らしい状態。他発的肯定をもらったら、それを自発的肯定に置き換える。これを繰り返すことで「自己肯定力」が鍛えられます。
自己完結型の自己肯定のすすめ
自己肯定感を失わないために私が心がけていること。それは、私の価値について自己発生的に肯定することです。
例えば私、お菓子作り大好きなんですけど、好みでないのか子供はあんまり食べてくれません。でも、作って形になること、前回上手にできなかったことができるようになること、おいしいお菓子が食べれること、これ、私が楽しいんですね。
「子供のため」「来客のため」「他人からの評価のため」にお菓子を作るのではなく、ただ自分の「楽しい!」のためにお菓子を作る。他人の評価を自己評価尺度にするのではなく、自分の行いについて、自分が自分を評価することで、「他人のせいで揺らがない自己肯定感」が育っていきます。
多面的に自己価値を見出す
人は多面的な生き物です。私で言えば、母であり、売れないイラストレーターであり、バンドマンであり、製菓好きであり、精神保健福祉士であり、アダルトチルドレンであり、DIY好きであり、文字書きでもあるわけです。
このように自分を多面的に捉えることができれば、自己評価も多面的に行うことができます。なかでも肯定的な自己評価は、自己肯定感の足場になるもの。たくさんあればそれだけ自己肯定感が安定してきます。自己肯定感を一方向だけに求めるのではなく、多面的に、ネットを張るように自己肯定感を育てましょう。いつかそのうちのひとつがダメになっても、ほかで育った自己肯定感があなたを助けてくれるはずです。
まとめ
生きにくい思いをしている人の多くが一度は聞くであろう「自己肯定感」という言葉。自己肯定感を高める。自己肯定感を育てる。言葉にすれば簡単ですが、それは一時的に頑張れば出来上がるものではありませんし、出来たら永久にそのままでいられるものでもありません。
日々の出来事を「よりよく解釈する」癖を付けること。それを根気よく積み重ねること。それを習慣化させることができれば、突発的な「ゆらぎ」は分散され、回復を早めることができるはず。そしてあなたの自己肯定感は徐々に強く、安定感を増すことでしょう。
この記事が、誰かの自己肯定感を守ったり、誰かの回復の一助になることを願っています。