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台詞の破壊力がすごいことと「デート〜恋とはどんなものかしら〜」の話がしたい

映画やドラマを観る時、私は脚本家で興味を持つことが多いのですが、名前を聞いただけでそそられる脚本家の1人が古沢良太です。

映画・ドラマ・アニメと幅広く活躍していて、まさに今年2023年の大河ドラマ「どうする家康」や、連続ドラマから映画もシリーズ化されるほど大ヒットとなった「コンフィデンスマンJP」も古沢作品です。

ご存じの作品が多いのはもちろんだと思うのですが、今回はそんな中で私が1番好きな古沢作品のお話をさせてもらおうと思います。

古沢良太の魅力

古沢作品の1番の特徴で魅力とも言えるのは「台詞回し」だと思っています。
言葉選びであったり、会話のテンポやスピード感であったりがまるでHIPHOPのようで、とにかくライムとフローが気持ち良く、覚える俳優さん達は本当に大変だと思います。

わかりやすく気持ちいいのは堺雅人主演の連続ドラマで弁護士を題材にしたドラマ『リーガルハイ』じゃないでしょうか。
堺雅人演じる古美門弁護士が超早口で長台詞をまくし立てるのですが、海外映画のような粋な例えや、パロディや古典オマージュの加減が絶妙で、思わず膝を打ちます。

やられてなくてもやり返す! 身に覚えのない奴にもやり返す! 誰彼構わず八つ当たりだ!!

リーガルハイ(古美門研介)

堺雅人さんが言うからこそ笑いになる、最もパロディに気付きやすい台詞です。
もちろん「半沢直樹」のパロディなんですが、対になる言葉のチョイスや啖呵を切る決め台詞に「八つ当たりだ!」を持ってくるのも、キャラとして古美門弁護士が半沢直樹より圧倒的に器が小さいことが如実に表されていてすごいと思った台詞の1つです。

短いのにこの破壊力

まずは古沢脚本の台詞の破壊力がどれだけのものなのか伝えたいので、パワーが強かったと思ったものを例にとって紹介します。
例えばこれです。

お前なんか毎日香で充分だ!

映画「キサラギ」より

映画「キサラギ」の忘れられないパワーワードです。
推しアイドルの追悼オフ会に集まった5人のファンが、死の真相を追究していくストーリーで、こちらの映画も単純に面白くオススメです。

このセリフは、5人の中の1人のファンが推しアイドルの真似をして自分も部屋でアロマキャンドルを焚いてるという旨を聞いた後に出た台詞でした。

それではツッコミどうぞー!というボケが放たれたわけでもなく、地味なアイドルファンがアロマキャンドルを焚くというだけでもギャップで充分笑えるところをさらに後押しする一言。

「アロマキャンドルの対義語の正解出たー!」と思ったので10年以上経った今でも忘れられません。
対義語とするものの絶妙さに衝撃が走ったのを今でも覚えています。

こんなに短い台詞で、アイドルと地味なファンを的確に表現している心に残る台詞です。

続いてはこちら。

立て!ゴミども!休む時は死ぬ時よ!!

映画「ミックス。」より

映画「ミックス。」で中国人の臨時卓球コーチを演じる蒼井優がかました一言です。
前後の流れを説明せずとも、これだけ見てもどんなキャラクターか説明できているし、端的に無駄なく攻撃力の高い言葉だけを選んでいるこの感じ。
そしてこのテンポの良さ。
最短距離で笑いとキャラの説明をしているすごい台詞だと思いました。

他にも言い出せばキリがないのですが、
そんな目線で私が今回話したいのは「デート〜恋とはどんなものかしら〜」の中の台詞です。

テンポが良いのに進まないラブコメディ

「デート〜恋とはどんなものかしら〜」の概要を少し説明します。

主演は杏さん、そのお相手役は長谷川博己さんの月9ドラマでした。

本作は、恋愛力ゼロ・恋愛感情ゼロの「どこか欠点のある男女」が織りなす恋愛ドラマである。

Wikipediaより

恋愛経験0で杓子定規なリケジョの依子と高等遊民(を自称するニート)の巧が出会い、恋愛感情のない理念として結婚を果たすためにデートを重ねます。
そのやりとりの中でお互いに少しずつ気になる存在になっていく…というストーリーなんですが、まぁーーー進展しない。

2人が鈍感なのはもちろんですが、合理的で何事も事前調査と形式を大事にする依子と感情的なロマンチストで理屈っぽく奥手な巧が毎回すれ違うのに、なぜか結婚には着実に近づいていく不思議なラブコメです。

もどかしいですし、決定的な描写はないのですが、本当に少しずつこじれた心がほぐれていく様子や、素直になれないことすら認めたくない依子と巧が歩み寄ろうとしては遠ざかるハラハラが毎回楽しみでした。

依子と巧を取り巻くどこかおっとりしたそれぞれの両親や、巧の元ヤンの幼馴染、依子父の会社の爆イケ後輩男子など、個性の強い登場人物が毎回ちょっと素敵なことを言ったり、何だか笑える言葉を投げかけたり、毎回古沢脚本らしい粋なセリフが散りばめられています。

そんな中で私の心に残っているのはやはり短いパワーワード。

あらすじとしては「遊園地デート」というものを経験してみるために形から入る依子と人混みが苦手だけどデートなので渋々ついていく巧。
ただ、遊園地で具体的にどう振る舞えば良いかわからない2人は、現地でたまたま出会ったいわゆるバカップルを師として2組で遊園地を巡ります。
アトラクションの待ち時間の過ごし方として、あっち向いてホイをしていた師のカップルの何気ない台詞がこちらです。

ジャンケンポン!あっち向いてホイ!
ジャンケンポン!こっちもっと来い!

「デート〜恋とはどんなものかしら〜」より
モブカップル

…名言みたいなのではなくてすみません。
でも、すごくないですか?これぞ、ライムとフローが気持ちいい台詞。
こっちもっと来い!で彼女を勢い良くハグするのですが、ここって別にたわいのない会話でバカップルとして見せる方法は他にもあったと思います。

しかし、この台詞で大げさにハグすることで、バカップルっぷりが惜しみなく発揮され、同時に杓子定規な依子と奥手な巧の真逆にあるカップルを表現したすごい台詞だと思いました。

もう少し「デート」の話

ちなみに連ドラの後の続編としてスペシャルドラマも製作されています。
こちらも変わらずテンポの速い台詞回しは健在で、2時間に凝縮された分、クライマックスに進むにつれて、ずっとキュンとし続けます。
依子の本音も行動も本当にかわいいですし、巧が惚れていると思わせる描写も今までの連ドラが全部フリとなって効いてきて「もうめっちゃ好きじゃ〜〜〜ん‼︎」とこっちが声に出したくなります。

温泉の成分表を撮っといてあげよう

「デート〜恋とはどんなものかしら〜」SP

依子という人を想像しながら言う何気ない巧の台詞です。
こんなに間接的に端的に「好き」を感じさせる台詞回し。
何度でも勧めたいです。この言葉選びのすごさ。
連ドラと合わせてぜひ一度観てもらいたいドラマです。

まとめ

こんなもんじゃない、と思いつつ
台詞のパワーが強い、という視点から古沢良太のお話をさせてもらいました。

私が1番好きな「デート」の話もできて満足なんですが、とっ散らかってしまいましたね。
でも少しでもこれで古沢良太とあわよくばこのドラマに興味を持ってもらえたら嬉しいです。

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