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詩:『お箸と恐竜』
『お箸と恐竜』
父が怖い 母が怖い 子が怖い
わたしは頭を抱えて逃げ出した
ティラノサウルスも逃げ出して言う
「だからわたしたちは滅びたのだ」
上の箸は鉛筆の要領で持ち
下の箸は中指と薬指の間に入れ固定
箸の持ち方を覚える時でさえ
自分のDNAを解析する必要があるのに
何処から来たかという問いに
正解を出せる人たちは異常だ
ブラキオサウルスはクレーン車で
トリケラトプスはブルドーザー
「先生や両親へ感謝の言葉を!」
教室に整列して述べるハーフ成人式
「持つ所は先から約3分の2の部分!」
一律な箸の持ち方への矯正
10歳にもなってお箸もまともに
持てなくて社会人になれますか?
恐竜は滅んだのですよ?
人類はいつ滅びますか?
わたしたちは記憶喪失になって
それでも連続性の中を生きる
わたしは責任を回避し続ける
何もわからず何者でもなく
恐竜に箸を持たせたい人たち
それが正解ならそうすればいい
あなたたちもいずれ
同じように滅びるのだ
父が怖い 母が怖い 子が怖い
わたしは頭を抱えて逃げ出した