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詩:『蝉』
『蝉』
畳に敷いた布団
真っ暗な部屋
隣の姉の穏やかな
寝息が細く時を刻み
軒先に垂れる雨音
僕は目を閉じていた
死んだ蝉を母が捨てた
それは当然だと思った
虫かごの中でそいつは
硬く息絶えたのだった
ちらし寿司と鯖寿司
祖母の硬い手のお酢
銀色の浴槽と盲目の祖父
母は自分の両親を
絶対に捨てはしなかった
雨音は激しくなる
僕は目を閉じたまま
そっと中指を伸ばし
隣の姉の太股の奥を弄る
姉は「あ」と喘ぎ
僕の…に……
死んだ蝉はもう鳴かない
雨音は更に激しくなる
僕はこの虫かごへの執着を
いつか捨てるだろうか
※この詩は過去作のリブートです※