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暁に薮を睨む

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刀篤(かたなあつし)の厳選した詩集です。
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2020年9月の記事一覧

詩:『蟻』

詩:『蟻』

『蟻』

手首の動脈と静脈の
交差上を這っていた

黒い働き蟻を
潰す

指先、或いは
手首に染み付き

こりっと残る
生命の質量

まだ私の血管の
内側を這っている

詩:『美醜』

詩:『美醜』

‪『美醜』‬

貴女は美しく
私は醜い

貴女は無垢で
私は狡猾だ

汚れた知性を武器にして
美に立ち向かえるものだろうか

強者の無自覚な悪意が
今日も弱者の矜持を潰す

私は貴女を許さない
私は私を許さない