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読み切り短編小説

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読み切りの短編小説のページ。 思わぬ出会いが待っているかもしれません。
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#読み切り

音の色彩

音の色彩

 音には色彩があると思う。

 講堂での授業が終わって、漫然と座っていた。
誰かに話しかけられたいとか、誰かと帰りたいとか、そんな陳腐な理由はない。ただ座って、授業の後に講堂に残り、ピアノを弾いている、小鳥のように賑やかで、馬鹿みたいに無邪気なクラスメートたちを、ぼんやり眺めていた時に違和感を感じたのだ。
 ショパンの子犬のワルツを、毒々しくて派手で甘過ぎる外国のキャンディの包み紙が、バラバラと天

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