初デートの徒然
約2年ぶり(正確には1年と9ヶ月ぶり)の【彼氏】という存在に、例外なく浮かれている。
初デートは某温泉地に行くことになった。
お付き合いを始めてから初デートまで、1週間。
LINEは用がある時だけ、と決めた割に、ほぼ毎日やり取りをしていた。
電話も1回だけした。
電話をした時に、初デートの行先を決めた。提案をしてくれたのは彼のほうで、私は3つくらいの候補の中から選んだだけ。
前夜に送られてきた「駐車場から30分くらい歩くことになるけど大丈夫?」という気遣いが、なんかもう本当に夢みたいに嬉しい。
当日はしっかりと曇天だった。
時間通りに迎えに来てくれた彼の、朝イチのビジュの良さにぶっ倒れそうになる。本当に朝?顔のむくみとか、知ってる?
「おはよ」と言いながら車に乗り込めば「おはよ」と返事が返ってくる。
付き合ってから徐々に増えるこのタメ口にいちいちキュンとしてしまう。可愛い。可愛すぎる。
朝10時。
朝ご飯とお昼ご飯を兼ねて、パン屋さんに行く。
事前の電話で「パン屋さんに行きたい」と伝えた。行きたいパン屋があった。そしたら、彼が提案してきたパン屋がドンピシャで私の提案しようと思っていたところだった。一番好きなパン屋さん。なんかもうそれだけで嬉しい。
駐車場は空いていた。
10分以上かけてのんびり選んだパンを、イートインスペースで食べた。ホットコーヒーを2つ。ひと口飲んだ彼が、「苦いよ、たぶんもち子さん飲めないよ」と笑った。
「飲めるよ」と言ったけど、ミルクだけ持ってきてもらった。飲めた。
食べ終えて、目的地に向かう。
車で1時間弱。
天気は相変わらず不安定で、場所によっては強めの雪が降った。「晴れ女でしょ、本気出して!」と笑われた。天気が悪くても機嫌が悪くならない人で良かった、と考え込んでから、今までどんだけ良くない男と付き合ってたんだよって自分に呆れてしまった。
目的地に着いても、結局雪が降っていた。
外国人観光客に混ざりながら、30分の散歩が始まる。
傘は2人で1つ。
相合傘のおかげで、初めてちゃんと隣を歩けた気がする。付き合うまでは、異常に(異様にではなく、異常に)遠い距離感で歩いていたから。
道中は、何が面白かったのか思い出せないけれどずっと笑っていた。
この観光地、実は昨年に一度来たことがある。
別の男性と来たんだけど、道のりが楽しくなさすぎて私がどうしても行きたくなくなってしまって、大泣きして引き返した。最悪の思い出。
だから彼と来て、長い道中も楽しくて、ちゃんとゴールまで辿り着いたことが嬉しくて。
思い出を上書き出来た気持ちになった。
なんか本当に色々と、上書きしてくれてありがとう。
スマホを車に忘れてきた彼に代わって、何枚か写真を撮る。動画も撮る。
休憩所みたいなところで座って白湯を飲んだ。
お土産屋さんで根付ストラップを彼が眺めていて、「買うの?」と聞いたら「車の鍵につけるから買う」と言っていた。「これ可愛い、これにしな?」と選んであげたら、「じゃあもち子さんそれにしよ。買ってあげる。」と言って本当に買ってくれた。
付き合って初めてのプレゼントが根付ストラップなの、学生みが強くて悶える。可愛い。
彼も同じキャラクターのほかの種類のストラップを買っていた。帰宅してから、ちゃんと車の鍵につけた。
帰りの道中も、しっかり降雪。
「崖から落ちないでね」と「転ばないでね」をずっと交互に言われていた気がする。
外国人観光客がちゃんとスキーウェアみたいな服装をしているのに、日本人は軽装だよねって話をした。その直後にすれ違った軽装の集団が、ちゃんと日本人で爆笑したりした。
ずっと土で出来た道なんだけど、最後だけ階段が現れる。階段の横には坂もあって、どちらかで下らなきゃならない感じの道。
その道だけがめちゃくちゃ凍っていて、坂にいたっては信じられないくらいに滑る。のに、対面から来た人とすれ違うためにはどちらかが坂に出ないといけない。鬼畜道。
とりあえずその手前で立ち止まって、人のいなくなるタイミングを狙うことにした。
立ち止まっている最中、傘から少しはみ出た私に「入ってて。」と傘を傾けてくれたのがキュンとした。
タイミングを見計らって階段に突入した。
一歩降りるごとに「歩けてる?平気?」と聞かれてうるさすぎて爆笑した。
途中、結局対面から人が来てしまう。彼がスッと坂のほうに出て「僕がこっち立っておくから、大丈夫だからもち子さんは自分のペースで階段降りて。」と言われる。それでもすれ違うために端に寄りながら歩くのは怖すぎて、思わず伸ばした手を彼はちゃんと取ってくれた。
初めて繋ぐ手。
まあ、階段が終わった瞬間に離れていきましたけど。
車に戻ってきた頃には、14時半近くになっていた。
朝ご飯とお昼ご飯を兼ねた食事を取っていたのは理由があって。
このあと、アフタヌーンティーに行く約束だった。
こちら。
温泉街にあるカフェを予約していた。
本当はアフタヌーンティーなんて女子同士で行くのが楽しいに決まっているんだけど、彼の食事のスピードを見ていたら彼となら楽しめるかもって思った。だから、提案した。
結果として最高に楽しかった…。美味しいし…。
ゆっくり食べてくれる人だから、時間いっぱい飲み物も食べ物も楽しめる。
選べるスイーツはお互い違う種類にして当たり前のようにシェアしてくれるし、甘いものも平気でたくさん食べてくれるし、なんか、もう。
好きすぎるんだが????
ていうかいつ写真を撮ってもイケメンな時点で勘弁してほしい。ノーマルカメラでその写り、芸能人か何かなの?
顔を上げれば目の前に好きな顔がいるの、こんなに幸せなの?私って人を見かけで判断するタイプなんだけど、好きな顔ってこんなに幸せになれるの????
そろそろ、命日か???
という感情に左右されながら、「あー、かっこいい。」という感想は素直に口から出ていた。
アフタヌーンティーをした後は、ショッピングモールのガチャガチャを回したりしながら帰路につく。
私の家の近所の本屋さんで、1時間くらい旅行雑誌を眺めた。次に行きたいところを探した。
いちご狩りがしたいね、という結論になった。
家に着くころには21時をまわっていた。
1日があっという間すぎてビビる。
もともと2日続けて会う約束をしていた私たちは、この日ばいばいしても12時間後とかには会えるんだけど。
なんかもう寂しすぎて、気がおかしくなりそうだった。
駐車場に着いて、車を降りる前に一度だけハグをしてもらった。
「もち子さん、寂しいんだね。」って優しい声で笑いながらハグをしてくれて、好きだなって思った。
そんなこんなで無事に初デートが終わりました。
振り返ってみると何?中学生???
ってくらいの純粋な感情ばかりで驚愕するけど、これ本当に私のエピソードで合ってる?大丈夫そ??
こんなに捨てられるのが怖い恋愛、久しぶりだな。こちらの感情ばかり大きくなってしまいそうで、気をつけろよって唱える毎日。
でも気を付けようがないんだ。
だって、あまりにも見た目が好きすぎる。