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私だって褒められたい

朝の7時20分を過ぎると、登校する小学生が花畑のあたりを通っていく。

今朝は、みな妙なものを持っている。

今の時期は海浜学校はあっただろうかと、ふと思い出す。

学校浜と呼ばれたところは岩だらけのごつごつで、
今なら(子供には面白いだろう)と思える場所だけれど、
私はなにしろ過保護にされた子供だったので、
あらゆる外の世界は結構怖かった。

「おはよう、早いね」

近所の女の子に声を掛ける。

その道具は何なの?と尋ねようと思う前に、教えてくれた。

「今日はクリーンデーなんです。ゴミを拾いながら学校に行くの」

「あそこにさ、あるんじゃないか?」

二年生と三年生が小走りに、足並み揃えて駆けてゆく。

手に持っているのはビニール袋と、炭などを掴む火ばし。

そう言えば、バーベキューを最後にしたのはいつだっただろうと思い返す。

お肉屋さんに野菜入りの味付け肉を頼んでおいて、
あとは冷蔵庫から適当なものを足して焼く。

残ったのは焼きそばにしてしまう。

おにぎりと、多めにフルーツを入れた杏仁豆腐を、
紙コップに作って置くのが我が家の定番スタイル。

庭先で簡単に済ませるのは楽だった。

炭の始末以外は。

でもいまなら残った灰は畑に使うことも覚えたし、
来年は小さな道具を買って、夏は楽しようかなと頭に浮かぶ。

お野菜中心で、焼き鳥を作ってみても楽しいかも。


小学生達は、あっという間に視界から消えて行った。

ゴミを拾いながら、(どうして捨てるんだろう)と考えたり、
(誰が捨てるんだろう)と考えたり、
(綺麗にするぞ)(たくさん拾うぞ)なんて、
気合いれてるんだろうなと思うと、なんとなく羨ましい。

最後にはきっと「先生、こんなに拾いました!」って、
我先に報告するのかな、と想像してしまう。

褒められて、とてもいいことした気分になるんだろうな。

帰宅してから、朝のクリーンデーのことを家族に話すんだろうな、と思う。

褒められまくりじゃん。

私も「頑張ってね」ってエールは送ったけど。

私なんか頼まれてもいないのに、
花畑の隣の工場跡地のとこまで、一部草刈りしてる。

(思い切って、刈らずにここは私のヨモギ畑にしようかな)

(いやいや、こんな排気ガスたくさん吸ったヨモギはちょっと)

(青いツユクサは綺麗だから、そのままでいいんじゃない?)

(だけど、出来る時に一緒に整理してしまった方が)

(それにしても、気持ちよくこんもりと育っているのも綺麗)

(だめ、そのままにしていたら木のようになってノコギリが必要になる)

道路沿いは気になっていたので、
綺麗になって、気持ちがとてもスッキリした。

ついでに近くの鳥居のところで氏神さまにご挨拶して、
「綺麗になりましたよ」って報告した。

だけど、シーン・・・。

誰もこの頑張りを褒めてくれない。

この感じはなにもいいことが起きなそうな気がする。

せっかくくず米を鳥のエサ台に乗せたのに、誰も食べた様子がないし。

カラスの泣き声しか聞こえない。

車は何台も通りすぎる。

「おはよー」

「今から出勤?」

幼なじみが車を止めて顔を出した。

「これちょっと辛いけど。まだ上手く作れないんだ」

お手製の南蛮みそを渡してくれた。

どうやら、何個も作っていて職場にもっていくうちのひとつのよう。

「ありがとう。感想メールするね。いってらっしゃい」

もしや、これは神様がくださった今日の日当かも知れない。

私好みの辛さで、とてもとても美味しかったから。




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