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#吐露

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君と僕のイノセンス
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#夏

麝香猫と排水口

麝香猫と排水口

階下 見下ろして流れた涙
強がりが剥がれ落ちて 大怪我をした
回らない観覧車は 夜の時計台
電飾と歓声が消えた夕景

補正できない 視界は雲隠れ
シャッターを切るたびに 君は赤い瞳
熱風に吹き飛ぶ カリカチュアは
忘れられた怒りの風刺か

過労のキリギリスが 自販前でバーンアウト
エメラルドの蜂鳥は 水煙管に集う
地下への入り口は すっかり閉じてしまって
君も僕も 細く長く 生きるだけ

ぬるい炭

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萩に猪

萩に猪

見透かしたような猫の目線を
ビニール傘で隠した
早足 乾いた喜怒哀楽に寄り添うは
生ぬるい風のひと吹き

右足 灰色の過去に捕われて
風景 滲んだら 負けよ
感傷 喉に詰まらせて
上手に泣けやしないのに

ダウナーとハイが隣り合わせな
この季節の仕組みは 躁と鬱
シューゲイザーで 霞ませてゆく心象
降りしきるのは ただ 焦燥の雨

首を切られた紫陽花が 朽ちる頃に
青い空と 狂騒を思い出す
疑心

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蝉時雨、耳鳴り

蝉時雨、耳鳴り

太陽を隠した雲の縁が
銀色に透けてグリッター
あの夏が来たと勘違いして
黒い駅のホームに鳩が堕ちる

慰めは高い塔 青い光の点滅に
フラワーダストの瞬きを重ねた
低く低く飛行機は翔けて
手を振る人は5秒間の物語になる

放射 火花 咲いて 静寂
次の灯火は誰の残像?
網膜は正常で 偶像を殺めたのは僕の脳
結べない 無数の残響

僕の目の中で 君は死ぬのさ
絶えず屈折する希望
涙から掬い上げた金魚

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