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『太陽と月に背いて』の感想など書いてみた
詩人ランボーとヴェルレーヌの愛憎劇
私が生涯出会った映画の中で、かなり上位に食い込むであろう
大好き&大衝撃の映画を紹介したいと思います。
その映画は『太陽と月に背いて』
こんなにもドロドロしていて、でも切なく、胸が掻きむしられるような作品を私は他に知りません。
ランボーとヴェルレーヌとは
・ランボーとは
アルチュール・ランボー:フランスの詩人である 早熟の天才と言われ、未成年の間に多数の詩作を発表している
・ヴェルレーヌとは
ポール・ヴェルレーヌ:フランスを代表する詩人である。ランボーなど多くの詩人と交流がある。
粗野で傍若無人なランボーとそれに翻弄される周囲
文壇ですでに活躍していたヴェルレーヌのもとに、ランボーは何度か自身の作品を送っていました。彼の詩のすばらしさに驚いたヴェルレーヌはランボーに会いたいと強く願うようになります。
お互いの想いが一致したために、ランボーはヴェルレーヌの元を尋ねることに。美しく若さ溢れるランボーにヴェルレーヌは夢中になりますが、家族はそうはいきませんでした。
・ランボーって見た目めちゃキレイだけど、食べ方汚いし、初対面なのにでかいゲップするし(奥さん、ウワって顔してた)、その上、夜中に何でか分からないけど暴れて、家の家具とか置物とか破壊した…ひどすぎる
・こんなことしてたら、ランボー周りの人に嫌われちゃうんじゃ…って思ってたら案の定
ヴェルレーヌの奥さんや家族からも嫌われまくって追い出されかけて、それをヴェルレーヌが確保するっていう流れになっちゃうんよ。
出会いから蜜月まで
田舎の少年が詩人ヴェルレーヌを頼ってやって来る
で、やってきたランボーですが。彼のことを一目見て気に入ったのか、愛おしそうにしげしげと見つめるヴェルレーヌが印象的です。ヴェルレーヌ役のデヴィット・シューリスは、長身&イケオジな方ですが、実際のヴェルレーヌは、小柄で禿げ頭だったという噂…
映画では、ヴェルレーヌがまだ幼いランボー少年を見下ろしているように描かれていますが、実際には大柄なランボーをヴェルレーヌが見上げて、見とれていたのかもしれませんね。
他者や社会、それらと二人の関係
ランボーは行儀が悪すぎる??
繊細かつ大胆な作風が魅力のランボーですが、そのイメージとは裏腹に、目の前のランボー少年はとても粗野で礼儀知らずの少年でした。
挙句の果てには、招かれたヴェルレーヌ宅の家具や置物を初日で破壊、奥様や他の家族にも要注意人物認定されてしまいます。
文壇での衝撃行為
ヴェルレーヌは、ランボーを詩人として成功させるために、できる限りのことを尽くしました。とある文壇のパーティーにそろって出席した二人。
ヴェルレーヌと自分が侮辱されていることを悟ったランボーは、テーブルの上に乗り、そこから放尿したのです。
二人だけの世界を見つけようとし…
家族関係もダメ、文壇関係もダメ、そうなれば二人の行く末は限られています。二人は家を出て、二人だけの生活を目指そうとします。
しかし、それは簡単なことではありません。
二人がたどり着いた田舎の港町のようなところで、トラブルは起きてしまいます。
食料を調達しようとがんばっていたヴェルレーヌは、大きな魚を手に入れました。それを誇らしげにランボーに見せたところ
「おばさんみたーいww」と笑われてしまいました。
ランボーとの二人だけの生活を夢みてがんばって来ていたのに、こんな事言われるなんて、って思ったかどうかは分かりませんが、傷ついたヴェルレーヌは、ランボーをそのまま置き去りにして街に帰ってしまうのです…
再会と悲劇
悲劇と『地獄の季節』
自分を見初めて、呼び出して、なおかつ連れ出したのに、その人に置き去りにされてしまったランボー。当然ながら恨みは募るでしょう。
しかし、ランボーはあきらめず、ヴェルレーヌとの再会を果たします。
再会が叶った喜びよりも、これまでの恨みつらみがつのってしまうのは当然のこと。ランボーは思いのたけをまくしたてますし、ヴェルレーヌはたじたじとしています。言い返せなくなったヴェルレーヌは、持っていた銃の引き金をランボーめがけて弾いてしまいます。
これで、二人の関係を終わらせることができるのなら良かったかもしれません。しかし、そうはいきませんでした。
罪人となったヴェルレーヌ、それを待つランボーという、とても悲しい物語ができてしまったのです。
この時期に、かの有名な『地獄の季節』が執筆されたと言われています。
ランボーからの哀しい質問
その当時、男性同性愛者は罪に問われていました。加えて、ヴェルレーヌはランボーに対し銃撃を行っています。
罪を償うヴェルレーヌの前で、ランボーは
「僕の心と身体、どっちが好き?」みたいなことを聞きます。
それを聞いてヴェルレーヌは「身体」だと即答
全てを悟ったランボーは彼の元を去り、二度と詩作に触れることはなかったのだとかなんとか…
哀しすぎる…!
アブサン二つ
ランボーとヴェルレーヌは、共にアブサンというお酒が好きだったのだとか。
二人でバーなどを訪れる際には、二人とも好きなお酒を「アブサン二つ!」と頼んでいたようですね。
映画『太陽と月に背いて』のラストシーンでは、まだ蜜月を歩む二人が、バーで「アブサン二つ!」と嬉々として頼むシーンが描かれます。