書評「こんなに長い幸福の不在」
どうしてわたしの心はこうも天気を鏡のように映してしまうのでしょう。特に薄暗いのに妙に眩しい曇りの日なんかはめっぽう弱い。一層のこと雨が降ってくれたらいいのにって思う。雨が降れば無理をしないこと、スロウダウンすることが許されるようで、少しは気が安らぐ。みんなもそう?みんなもそうだったらいいなぁ。
今日はおでこちゃんに引き続き、銀色夏生著「こんなに長い幸福の不在」(角川文庫)について。
タイトルの通り、作者がゆううつで暗い気分を選んで(下手な字で)書いた詩を集めたもの。例えばこう。
ー世界中からゆううつが僕をめざしてやってくる
ーあまり何も考えずに
楽しそうにやってても
本当は楽しくないことがあって、
そのことを、
夜中とかスルドイ友だちの前とか
好きな人の前で急に発見する
唐突に降ってくる孤独感、出口の見えないやるせなさ、日常の小さなことにつまずいて気が滅入ってしまう不器用な自分、心細さ、好きなことや楽しいことを思い出せない程どうしようもない憂鬱。そんな憂鬱と仲良しこよし、同居している「僕」がたらたらと暗い文章を綴っている。
それが隣の頁に細い線の、ほのぼのとしたイラストが描かれているからか、不思議と嫌な気がしないし、むしろクスッと笑える、軽快さがある。爽やかささえある。
いつからか、暗い気持ちやネガティヴな言葉、否定的なものの見方は不注意に披露してはいけないし、一緒に居てくれる人に抱えさせてはいけないと思うようになった。
だけど、案外口に出してみるのは悪いことではないのかもしれない。
「あー疲れた。もう誰とも口を利きたくないわ。」
とか聞かなくて済むなら聞きたくないような言葉も、攻撃性ゼロのままで聞き流してくれるような関係がいい。
それが他者の批判や他者と比べて自分がどうとかではなく、あくまで個人的なことであれば口に出しても良いのでは?
思ったことを、ぽんぽんと、整理する間もなく口から出す行為も悪くない。社会に出てそういうことが少なくなった。
言葉が自分の口から出た瞬間からそれはもう自分の言葉ではなくなるという恐れを一旦置いて、口にすることで、まとわり付いた垢が剥がれて本来の自分に近づけるのかもしれないなぁ〜と、とりとめもないことを考えた。
気持ちを加工しなくていい。結論やオチは無くていい。時は放っていても進むのだから、心配はしなくていい。