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突然の移住。2000㎞ぶっ飛んで離島へ。
夢追人の私の貯金が底を尽きる頃、かつて人生を変えてくれた恩人からリゾートバイトを勧められ、またしても人生を変えてもらうことになる。
勧められるまま勢いで申し込んだバイトの3ヵ月間、コンビニもスーパーもない大自然広がる離島での生活はそれはそれはもう滅茶苦茶大変で、島到着3日目にして早くも脱出を考え始める。
人類に備わる秘技を使い任期を乗り切り、3ヵ月経つ頃には想像もしていない未来にたどり着いていた。
人生本当になにがあるかわからない。先の見えない未来に不安を抱くだけ徒労であって、明日何が起きるかさえ予測ができないのだから、今「やってみたい」と思う直感に従って進むのが一番納得のいく人生を送れるのではないかと体感したお話。
一瞬で決めたリゾートバイト
リゾートバイト(以下、リゾバ)を決めたのは本当に些細な事からだった。
やべ~~貯金がない。
勤めていた会社を辞め、画家みたいな事をしながら夢追人として生活をし1年が経とうという頃。
私の預金はゼロになろうとしていた。というかもはやマイナス突破していた。
人間、ただ生きて呼吸をしてるだけでお金がかかるってのに、絵を描くために画材を買ったりしてるんだから余計に大変。
絵を買ってくださる方はいるけど、さすがにそれだけの収入では生活が厳しい。働かないとさすがにまずいなあーと思っていた矢先。
ちょうどその時期ご縁があって隕石屋さんで個展をさせていただいていたのだが、そこの店長さんに
リゾートバイトでもしたら?
と一言。言われた。
え、リゾバか確かにアリだな~数か月くらいならぽっと知らない土地に行って色々新しい世界を見つつお金を稼いで、そしたらまたいい絵が描けるかもしれない。
そう思いその場で早速求人情報を見て、そろそろ夏だし北海道なんかいいんじゃなかろうか、山とか森好きだし。と検索をかけていると店長がさらに一言。
沖縄がいいんじゃない。離島であればある程いいよ。
この一言が決め手だった。
私は海が好きで、いつか南国に住みたいと思うくらい常夏の島に憧れていた。山は見ると安心するから好きだけど、海ってやっぱテンションの上がり方が異常じゃん?これは海なし県民特有の感性??
とにかくなんか海ってだけでわくわくしてきたし沖縄に即決定。
その後すぐに沖縄の求人情報を漁り、翌日には応募を済ませていた。
ごちゃごちゃ考え出すと、脳みそがまた“やらない理由”を探し始めるからね。
激闘!死闘!初めての島暮らし
人生33年。沖縄県に一歩も足を踏み入れたことのない私が選んだリゾバ先は、沖縄本島から更に200km南西に位置する、八重山諸島にある島である。
成田空港から約3時間。石垣空港まで行ったら、そこからまたフェリーに乗らないと辿り着けない島。離島の更にまた離島。
リゾバで出会った人には「初めての沖縄で、なんでいきなりこんな離島を選んだんですか?!」と口々に言われた。
寮の条件とか仕事の条件で検索かけたらココしかなかったんだもん!!
リゾート地らしい青やエメラルドグリーンの海に感動したのも束の間。今まで関東圏にしか住んだことのない私にとって、突然の離島暮らしはとんでもないギャップだった。
まず最寄りのコンビニまでフェリーに乗らないと行けない。つまり陸の続いた場所にコンビニがない。そしてスーパーも島にない。徒歩40分くらいのところに商店が一軒ぽつり。これ夜うっかりおなか減ったりしたらどうするんじゃ??
そして初日夜。今までに見たことがないくらいデカいクモが部屋に出現した。タランチュラかなんかか?えっこれどうしたらいいの?やるしかないの?今日この子を放し飼いにしたまま寝るの無理なんですが?
7、8㎝くらいのクモに怯えつつ、近所にコンビニもないんだから虫用スプレーを買うこともできない。これこんな生活が3ヵ月続くんすか。私無理かもしれないよ。正直もう帰りたいかもしれない。
結局共有スペース的なところに行ったらスプレーがあって、やばいくらい逃げ腰になりながらクモを手にかけた。その日はほぼ眠れなかったけど、翌朝カーテン開けたら昨晩のクモにそっくりなクモが出て、1mくらい後方に飛び跳ねてしまった。人間て本当にびっくりすると声出なくなるし野生動物みたいに1mくらい跳ねるんだと知った。
おまけにやたらと何かの鳴き声が部屋中をこだましていて、正体を突き止めたらヤモリだった。爬虫類は好きだけどさすがに相部屋となるとちょっと。いたるところを走り回ってて気持ちが全然落ち着かないし。鳴き声爆音すぎて朝起こされるし。
到着して3日ほど。いよいよ本気で帰ろうか悩み始めた。
人間に備わる便利機能
島暮らしは買い物事情以外にも今までの生活と違う部分が多いし不便なことも多い。思ったように生活ができないこともたくさんあるし、何より苦手な虫(しかもサイズがデカすぎる)が部屋に出るのがキツい。リゾバも初めてだし仕事内容も初めてのことしかないし仲のいい人もいない。
生活、仕事、人間関係、すべてが大変で、仕事を終え寮の部屋に戻ってからは毎日孤独だった。
しかし私は知っていた。
人間は変化に弱い。
脳と体は変化を好まない。
筋トレをしようしようと思っても3日、いや1日で終わる人が多いのはそれが習慣になる前にやめてしまうからで、頑張って2週間ほど続ければ生活に定着し、筋トレをすることへの腰の重さがぐっと軽くなる。
だから、がんばって2週間。2週間耐えれば、人間に備わる便利機能、いや秘技“慣れ”が発動するんじゃないか。
その望みに賭けて、この慣れないことに対する自分の反応を楽しみながら2週間耐えることにした。
そしたらどうなったかって。
3週間経つ頃にはバスとフェリーに乗ってスーパーに行くことに慣れ、寮の周りに大自然しかないことに慣れ、仕事にも慣れて、そして虫がデカいことにも慣れた。
幸いなことに職場で仲のいい人もできた。
気付いたら、島での生活がめっっっちゃ楽しくなっていた。
運命を変えた出会い
3ヵ月という短いようで長く感じる島生活の中で、私にはどうしても行きたいと思っていた場所があった。
それは西表島。
西表島は世界自然遺産に登録されており、島のほとんどの地域がジャングル。島自体が雄大な山々でできていて、バイトをしていた小浜島からはよく山が見えていた。
リゾバ終了まで残すところ約2週間というタイミングで、やっと取れた3連休。この3日間で絶対に西表島に行こうと思っていた。と言うより「絶対に行かなくては」となぜか強く思っていた。
いざ西表島に着いてからは感動の連続。
何を言ってるんだと思われるかもしれないけど、正直最初に感じたのは懐かしさだった。
まず懐かしい。なんかよくわかんないけど。山がそう思わせたんだろうか。
そして圧倒的な大自然が醸し出す、他の島にはない優しい空気に心が休まる。
海の青さ、木々の緑に心が躍る。
夕陽の美しさにも感動。
圧巻の星空を見たときは、地球に生まれてきて本当に良かったと心から思った。
滞在2日目にはジャングルに分け入り、日本の滝100選にも選ばれている滝を見た。宇宙のはじまりみたいなエネルギーの滝だった。
壮大なジャングル、真っ青な透き通る海で地球を感じ、水平線まで広がる星空では宇宙を感じた。
私が人生で辿り着く場所、帰ってくるべき場所についに出会ったんだ、と思った。
決意、そして移住
西表島の3日間の滞在のあと私は島への移住を考え始め、リゾバが終わる頃には移住を決意していた。
突拍子もなさすぎだし、決意したからってまだほぼ夢物語みたいな感じだし先のことはなんにも考えてなかったけど。
とりあえず決意しちゃえばあとはどうにかなるだろうと思った。
実際リゾバに行くと決めたときもその瞬間のエネルギーでぱっと行動したらこんなに素晴らしい未来がやってきた訳だし、今回も瞬間瞬間の直感で動けば案外どうにかうまくコトは進むんじゃないかと思っていた。
そして例にも漏れず、本当にどうにかなってしまった。
リゾバから帰り地元で少しゆっくり過ごしている間に西表での仕事が決まり、家も決まってしまった。
どうにかなると思ったら人生本当にどうにかなるもんだなとここまでの経験で確信していたけど、その確信は今回でより深まった。
進むべき道が間違っていない時、人生の流れは加速する。
直感を信じよ
自分で言うのもなんだけど、私はリゾバ期間の3ヵ月でとてつもなく成長したと思う。
全く知らない土地、初めての仕事、知り合いゼロ。おまけに寮にはデカい虫が出る。初日で帰りたいと思ったけど、あきらめなくてよかった。
「ここで帰ったらだめな気がする」という直感を信じて本当に良かった。
明日どころか、一瞬先だって何が起こるかわからない。だから奇跡も起こる。
人間、慣れる。ありがたい機能。
そして考えられる生き物だし、忘れられる。ありがたい機能。
その瞬間の「やりたい」に従って思い切って一歩踏み出すと、気付いたら望んでた未来にたどり着いてたりする。ふと思い返したら「あれ私こんなところに住みたいなって思ってたけど叶ってるな。こんな人間になりたいと思ってたけど気付いたらなってたな」みたいな。
未来を思い描いたら、その瞬間もうそこに向かうレールに乗ってるんだと思う。あとは自分がそこから降りなければいいだけ。みんな降りがちだけど。この線路ちょっとガタつくからやめよ、とか。このレール快適じゃないから正しい道じゃない気がする別の道にしようとか。
でも違う。実は思い描いたらもう進み始めてて、終着駅に向かうまでに「本当にこの駅に向かう覚悟はできとるんか?」という確認があるだけなんだと、私は思う。
思い返せば、数か月前に思い描いた理想の暮らしが現実のものになっている。
自然と共に暮らしたい。大自然の中で暮らしたい。美しい景色を見ながら穏やかに暮らしたい。カーテンを開けたら緑が見える家に住みたい。人が密集していない所に住みたい。
思い出せないけど数か月前のいつか、これを思い描いた日に、今につながるレールに乗ったんだと思う。そのまま自分に言い訳せずレールを走りきったから、最高の状態の自分でゴールに着くための試練を乗り越えたから、ちゃんと叶った。
あの時思い切って一歩を踏み出してみて本当に良かったと心から思っている。あの時ごちゃごちゃ色んな事考えて自分に言い訳しなくて本当に良かった。
そしてリゾートバイトも本当によく耐えた。慣れるまで頑張って本当に良かった。帰るべきではない、という直感に従って本当に良かった。
よくやったよ自分。と褒めたい。
ありがとうあの日の自分。今までの自分。
そして出会って支えてくれた人たちに感謝。
私は今、離島にいます。