自転しながら公転する|世界をちょっとひろげるオススメの本⑫
コペルくんwithアヤ先生さんの記事を読んで「本屋大賞2021」のノミネート作品が発表されたことを知りました。本屋大賞は、売り場からベストセラーをつくるを信念として、書店員の投票だけで選ばれる賞です。
今日はこの中から、コペルくんwithアヤ先生さんが面白そうと書いていた山本文緒さんの「自転しながら公転する」について書きたいと思います。
あらすじ--------------
結婚、仕事、親の介護、全部やらなきゃダメですか
共感と絶賛の声続々! あたたかなエールが届く共感度100%小説!東京で働いていた32歳の都は実家に戻り、地元のモールで店員として働き始めるが…。
恋愛、家族の世話、そのうえ仕事もがんばるなんて、そんなの無理!答えのない問いを生きる私たちをやさしく包む物語。7年ぶり、待望の長篇小説
なんとなく、女性、そしてちょっと妻の気持ちが分かるといいな…なんてことも思ったり。
結婚、出産、仕事、パワハラ、セクハラ、更年期障害、介護、病気、終活、性差別、慣例…人生における様々な問題が主人公「都」に降りかかる感じ。厄災にまみれる都という惑星が、優柔不断に、でも少しずつ、向き合っていく。進んだり、戻ったりを繰り返しながら。
周りの人間関係も含めて、いる!ある!いう!いわれる!というリアルさ、そして主人公の心理描写が、読み手の胸をしめつけます。
読んでいて苦しくなっちゃう!という人がいるかもしれませんが、プロローグのフリが、その苦しさを苦しさのままで読ませない工夫のある構成になっていて、エピローグの存在が最後まで読ませるヒキとなっていると思います。そして何より、都のリアルな人生が気になって最後まで一気に読み進めてしまいました。
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印象的だったのが、団塊の世代のゴリゴリ昭和の考え方を持つ主人公の父親に、更年期障害を患う母親がとった「革命」とも思える驚きの行動。これは、父親のボクにとっては救いでした。
平均年齢29歳(!)のベトナム出身、ニャン君がこの日本の社会の閉塞感とは対極的に描かれていること。世界の広さを感じさせる彼の存在がら選択肢や未来、光として要所で輝きをくれます。
そのニャン君を含めて、登場人物のすべてが、それぞれの事情や問題を抱えていて、それが勧善懲悪に書かれすぎていないこともよかったです!
結果としてそれが、女性だけでなく、性別・年齢を越えて、幅広いかたに「32歳女性主人公のリアル」受け入れてもらえる要因になっている気がしました。
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何もかも忘れて、楽しみたい人には向いていない小説だと思います。でも、何かを抱えたまま楽しみたい人にこそ勧めたい小説でした。
まあ、みんなそれぞれ、何か抱えてますよねー。
そして物語の最後に、
「パパとママは幸せだった?」という質問に対して、語られる答え。
この本を読んだ妻も、この答えが名言!と絶賛していました。この答えをみるために、是非みなさん、よかったら読んでみてくださいね!
あ、この本のなんとも空気感のある綺麗な写真を撮影されたフォトグラファーコハラタケルさんもnoteをやられていたので、最後に。
(BIGHIGH)