俺のアーティクルを聴いてくれ
研究者はバンドマンと似ている。
論文は曲だ。
共同著者はメンバーだ。
たまにボーカルが1人で歌っていることもある。
研究者はバンドマンだと言うと、将来の保証はないのにお金を払って勉強を続ける学生が夢追い人だという話をするのではないかと思われるかもしれない。
日本の企業がほとんど博士卒を使いこなせておらず、路頭に迷う優秀な人達がいるという現実は確かにあるのでこの話も捨て置けないが、私の言いたいことはそういう意味ではない。
独り言をBGMに聞くような気分で読み流してもらえたら嬉しい。
研究者にライセンスというものはない。
研究職には一定以上の学歴を求める会社がほとんどであるが、研究自体は誰でも出来るのだ。
バンドマンにもライセンスはない。
曲を作って発信して有名になって、そうしてビッグになっていく。
研究者も、論文を出すことで有名になっていく。
研究を発信することでどんどん名前が売れてビッグになっていく。
音楽は、オリジナルの中にも王道のコード進行があったり、有名な曲のオマージュがあったり、A、B、Cメロ、サビといった構成の枠組がある。
中身に加えて、形式も曲の味であり、好みが分かれるところだろう。
論文にもルールがある。当然ながら、中身は新しくなければ盗作になってしまうが、イントロ(導入)はお決まりだったり、先行文献をリファレンスにしたり、背景、マテメソ(材料・やり方)、結果、考察といった構成の枠組がある。
この進行形式も、読者の好みが分かれるのではないだろうか。
アブスト・サマリー(要約)はジャケット写真や歌詞カードのようなものとして、だいたいイントロダクションから入る論文が多い。
これは正統派なAメロインと言えるだろう。
たまにハイライトとしてメインの結果と考察をまとめて冒頭に書いてくれているジャーナルもある。
私はこれをサビインナンバーと呼んでいる。
リザルト(結果)とディスカッション(考察)のどちらをサビとするか、進行的には迷うところではあるが、感情の高まりの頂点がサビだと思うのでディスカッションにしておきたい。
マテメソをリザルト・ディスカッションの後に置くジャーナルもある。
歌の部分が短めで、アウトロ前に長いインストを挟む曲調だ。
引用文献リストはアウトロだ。
映画ならエンドロールだ。
著者欄の最後に名前を連ねている人がレーベルの偉い人だ。
ときどき、著者達の所属が複数あることがある。
共同楽曲だ。これらのバンドは仲良しかもしれない。
とりとめもなく呟いてみたが、共感してくれる人はいるだろうか。
共感をもらえたら、アーティストを推すポイントを分かりあえたときくらい嬉しい。
最後に、私はサビインナンバーでアウトロ前に長いインストを挟むジャーナルが好きだ。
同担は歓迎だ。
ちなみに写真のアーティクルは私の推しナンバーである。