第五十四話「仕事運ーー最大凶」2024年9月26日木曜日　晴れ

　夏バテだと思いたい。
　8月中盤以降、シェアリングコーヒーショップの出店（後半の２回は天候不良で出店中止。準備だけの空回りになったが）。地元のレンタルキッチン出店。ラテアートセミナー参加。アルバイトの繁忙などが重なった。気候は幾分か過ごしやすくなってきているが、それは季節の変わり目でもある。体調に影響した。身体が重い。心が曇る。
　チャレンジ出店の準備と当日の営業、アルバイト勤務の時、私は笑っている。心から楽しんでいる。幸せだ。多くのお客様と友人に支えられているお陰だ。
　反面、その楽しさや幸福感もまた疲労に繋がる。楽しさや笑顔というプラスの感情は疲労やマイナスの感情を払拭してくれるというが、それは違う。感情が動くことに喜怒哀楽は関係ない。マイナスの感情を払拭するとしても、それは一時的なものだ。プラスの感情はマイナス感情の原因までは取り去ってくれない。
　プラスの感情は大きな幸福感をもたらすが、そこにも疲労がある。そして幸福感からの揺り戻しも大きい。小さなマイナスの感情もその高低差によって深い奈落になる。
　悲しみや怒りをコントロールする重要性を説く書物は多いが、幸福感のコントロールを説く先人の言葉は少ない。幸福感とはなかなかに厄介なのだ。
　幸福感をコントロールできなかった私は、凹んでいた。身体の疲労、心（感情）の疲弊。アルバイトに行けば楽しい。心から笑う。が、仕事の後の、その揺り戻しに苦しんだ。
　スマホに残高不足による引き落とし不可の通知が届いていた。悲しいくらい少額の引き落としができていなかった。失業手当とアルバイト代。微々たる収入から社会保険料と家賃、水道光熱費、通信費。そして親への仕送り。厳しい。谷底に落ちて横たわる。動けない。その背中を支えるだけの冷たい地面に、さらに亀裂が入る感覚。

　ふと、失業後、起業を考えたころ、どう名乗るかを悩んだことを思い出した。
　私は自分の名前の漢字表記が嫌いだった。佐藤の「藤」の字だけがごちゃごちゃとしていて、そのほかの字はスカスカの印象がある字面だ。「藤」は葛藤の「藤」。うじうじぐちぐちと思い悩む癖に行動がスカスカ。まさに名は体を表す、だった。
　だから、ワインバルチェーンに勤めはじめた時、この漢字表記を捨てた。サトウトシオと名乗った。行動がスカスカなら、頭までスカスカにしてしまえ、という覚悟だった。いや、自棄か。
　そして、社員から起業を考えた時、名乗りをどうするか考えた。
　占いなど一切信じない私だが、それでもネット上の姓名判断で調べてみた。験くらいは担ぐ。
　「サトウトシオ」の運勢は概ね良かった。が、仕事運だけはどのサイトを見ても凶だった。あるサイトでは「最大凶」。
　それでも、私は「サトウトシオ」を選んだ。私の起業目的は誰かを幸せにするためではない。私が楽に楽しく生きるのが目的だったからだ。
　そのような不遜な考えなのだから、「最大凶」の卦くらいは受け入れようと思った。
　そして、その卦は当たっているのかもしれない、と凹んでいる私は思った。

　せめて身体の調子だけは整えようと筋トレをした。
　シャワー浴びた後、先に船長のキッチンに出勤していたN美さんから電話があった。
　船長が出店するイベントでコーヒーを出さないか？という船長からの誘いだった。
　ちょっと急なお誘いだったが、私は有り難く受けた。
　さて、そろそろ相棒の店への出勤時間だ。

　仕事運が最大凶？

　やはり、私は占いを信じない。

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姓名判断参考サイト
〈みのりーMINORIー〉さん
https://rensa.jp.net/seimeihandan
タイトル画像もこちらからです。
仕事運以外はすごく良い鑑定です。
ありがとうございます。