第六十八話「学会(休憩室)への出店準備①オペレーション決定」2024年12月7日土曜日、8日日曜日 両日とも冬晴れ
過日、船長からもたらされ、サンキューさんの厳しい喝とN美さんの後押しにより受注を決意した、学会の企業出展ブース兼休憩室でのコーヒー提供の仕事。その当日だった。
開催期間は12月の週末の二日間。見事な冬晴れ。校内の並木はさまざまに色づき、遅れていた紅葉が盛りだった。
受注すると腹に決めてから、コーヒー豆の選定、レシピ作成、提供オペレーションの模擬、そこから必要な機材の選定と手配が始まった。
私にとっては初めての試みだ。しかし幸運だったのは私にはあおやまさんという強い味方がいたことだ。日本のコーヒーシーンを駆け上ろうとしている若きコーヒーパーソン。彼女がいれば千人力だ。
私は、まずオペレーションから相談した。一日150杯のホットコーヒーを提供する。金銭授受は無い、メニューはホットコーヒーのみで良いとはいえ、コーヒーの風味の劣化や温度低下を最小限に抑えた抽出方法を選定し、提供方法を確立しなくてはならない。
忙しい最中に、あおやまさんは丁寧に答えてくれた。
「前日などに大量抽出してボトル搬入、現場で加熱して提供は論外です。絶対にやめてください」
確かにそうだ。酸化したコーヒーほど不味いものはない。
「エスプレッソマシンもダメです。移動できるものは小型です。タンク式にせざるを得ません。連続抽出にも、来店数の波にも耐えられない。水の補給も大きな負担になりますね」
搬入可能なエスプレッソマシンは手配できそうではあったが、あおやまさんの懸念の通りである。
では、どうする?
あおやまさんの提案は、その場で抽出し、抽出できたコーヒーを大型保温ポットに溜めていき、保温ポットから提供する、というものだった。
学会開始前から抽出を始め、延々と抽出と保温ポットへの貯溜を続けていくことになる。
抽出には「クレバー」という機器を使うことを提案された。これは浸漬式と透過式を合わせた抽出器具でハンドドリップの熟練さは必要なく、そして抽出のブレも少ない。これを複数台で同時・連続抽出すればコーヒーの貯溜は比較的容易だ、とのことだった。「クレバー」はあおやまさんの私物を貸してくれるとのことだった。使ったことはないが、同じコンセプトの抽出器具は持っている。扱える自信は十分にあった。
なるほど。これならばコーヒーの劣化を最少に抑え、かつ提供スピードも確保できる。
お湯の確保と大型保温ポットの手配が問題だが、これもよい機材レンタル会社が見つかった。
このオペレーションで行こう!