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読書感想文「同志少女よ、敵を撃て」逢坂冬馬さん
この話はフィクションなのか、この話は現在進行形の戦地ルポではないのかと思いながら年末年始に読み進めたのは、デビュー作で本屋大賞受賞という逢坂冬馬さんの「同志少女よ、敵を撃て」です。
いろいろと考えさせられる本でした。
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舞台はいわゆる「独ソ戦」。
主人公の女性は住んでいた村を襲われ、その後に紆余曲折を経て狙撃兵として戦地に立ちます。
戦地で見るものや感じたことが生々しく描かれ、戦争の残酷さや人の強さ弱さが描かれていました。
正義とは何なのか、ドイツ兵にもソビエト兵にもそれぞれの正義があります。誰もが愛する人を護りたいと思って、敵を撃ちます。
読んでいてとても切なかったです。
戦争小説なので命のやり取りが描かれていて、残酷な描写(おそらくありのままの描写)も多いです。僕は正直あまりそういったものを読むのが得意ではないのですが、ギリギリ残酷すぎないというか一般読者が離脱しないラインを攻めてるなと感じながら読み進めました。
幸いにして生まれてからの四十年強、僕は周りに遺体が転がっているような戦争や災害に遭遇したことがありません。
勘違いしてはいけないなと思ったのは、それは当たり前なことではなく、ただ幸運なだけであるということです。
現に今もウクライナとロシアは戦争状態です。この小説の舞台は東欧なので、否が応でもウクライナを連想しながら読んでしまいます。
日本では報道が減っていますが、この冬も辛い思いをしている人がたくさんいることを考えずにはいられません。
また、作中では戦時下でも逞しく生きるしか無い一般の人々も描かれていました。
食べるものを探し、寝る場所を探し、大切な家族を思いやり、若者は恋もする。それは特別なことではなく、きっと日本でも八十数年前に起こっていたことなんだなと思いました。
改めて、満州事変の年に生まれた祖母ともっと話をしてみることにします。
この本を読んで少し気持ちが沈むかなと思いましたがそんなことはなく、今の幸せに感謝しようという気持ちになりました。
そして親になって思うことは、どうか子どもたちが辛い目にあわずに生を全うできますように、ということ。
これはきっと世界共通でしょう。
今日も平和を祈るばかりです。
文庫化された「同志少女よ、敵を撃て」がたくさんの人に読まれたら、世界が少し平和になるかもしれない。言葉の力を信じたい。
逢坂冬馬さんの二作目も読んでみようと思います。
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