Giveの精神
サンフランシスコ・ベイエリアの南部(通称シリコンバレー)に来て1ヶ月が経過した。改めてIT企業やスタートアップの集積地でIT・テクノロジー業界の人間として仕事をできることにしあわせを感じている。
1ヶ月という短い期間ではあるが、早速自分の中で変化を感じている。毎日さまざまな人と面談をしているが、その際に自分はこの相手をどのような形で助けてあげられるだろうか?というGiveの精神が生まれていることだ。
これまでは相手の事業と自分の事業をどうつなげられるか?がメインの論点であった。それは事業提携の場合もあれば、投資の場合もある。ただ、常に自分(自社)にメリットが生まれるような話につながるか?がテーマだったのだ。
シリコンバレーに来て、ネットワーキングイベントやスタートアップ企業と投資家のマッチングイベントなどに参加するようになった。参加者がローカルな人か日系駐在員かに関わらず、参加していて思うのは自分のミッションに直接つながる人と出会うことはほとんどない。
ただ、相手に対して「自分がシリコンバレーで何を目指しているか?」を伝えると、「それならこんな人を紹介できるよ!」と言われる。IT・テクノロジー業界の人間として米国の地域に来るのは初めてだけど、今までに感じたことのない人のつながりとそれをGiveする精神を感じるのだ。
Giveを受けていると、自分もGiveをしないといけないという気になる。面談のときに持つメインの論点が変わってくるのだ。自分の会社や自分自身のリソース・ネットワークをつかって、面談相手に対して何をGiveできるか?という形で。
ここで問題がある。日系企業の駐在員は、ローテーションで3〜5年おきに入れ替わってしまう。それ故、個人のネットワークが薄く、なかなかGiveしにくい。
であれば、本来は会社として何がGiveできるか?となってくれれば良いが、それも簡単にはいかない。東京側ではこのようなGive&Takeの文化をそこまで理解できていないケースが多い。それはわたし自身が東京にいたときにそのようなマインドセットを持っていなかったことからも理解できる。
現地から「こんなスタートアップがいるんだけど、〇〇社の人と繋いでもらえないか?」といった話をふっても、「なんで自分達の投資やビジネスに繋がらないものに、労力をかけないといけないんだ?」となってしまう。
もちろん投資やビジネスで直接的な価値提供ができるならが良い。ただ、仮にできない場合であっても、投資家になりうる企業を紹介してあげる、顧客となりうる企業を紹介してあげる、といったことができるだけで違う。それだけで現場の人間のネットワークが強固になっていき、回り回って自社のビジネスにつながっていく気がしている。
このように会社全体としてマインドセットを変えていく必要があると思う。ただ、一朝一夕では難しいだろうから、まずは自分の力でネットワークを築いていくしかないんだろうな。
Take(見返り)を考えることなく、Giveする。
たわいもない会話の中でも、相手が何を探しているか?ということに関心を持つようになった。その蓄積した情報をもとに出会った人・モノ・情報を繋いでいくコネクターのような働き方に自分が向かっている実感がある。
まだ1ヶ月だけど感じた変化を大切にしようと思う。