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「再評価される邦人作曲家たち。(2月4日)」

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先日、音楽の学術誌のアーカイブで調べものをしていた折、下記のような記事に当たったので、ここで紹介する。
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日本の西洋音楽黎明期に活躍した邦人作曲家の作品が再評価され、脚光を浴びている。
ヨーロッパで先駆的な活躍をした貴志康一(1909-37)、吹奏楽曲を数多く残した大栗裕(1918-82)、CDがリリースされて近年評価を高めている大澤壽人(1907?-53)。

関西の大学機関は遺族から寄贈された自筆譜の整理を進め、オーケストラは蘇演に取り組み、新たな命を吹き込んでいる。

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かつて、大栗作品だけで構成する演奏会「大栗裕の世界」を大阪・いずみホールで開いたのは、大阪フィルハーモニー交響楽団。
日焼けにより判読困難になった総譜の再生作業をしてよみがえった「弦楽のための二章」、「オーボエとオーケストラのためのバラード」の日本初演となった。
36年ぶりに関西歌劇団とのコンビで上演する歌劇「赤い陣羽織」という珍しいプログラム。

大栗がかつて大阪フィルのホルン奏者だった縁もあり、大阪フィルは「関西の作曲家によるコンサート」と題して大栗、貴志、さらに大阪出身の松下眞一(1922~90)の作品を取り上げた。
企画した大阪フィル事務局長は「関西の作曲家の作品を演奏し、後世に残していくことはオーケストラの使命だ」と意義を説明する。

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大阪・船場に生まれた大栗は、大阪の暮らしに息づく旋律・リズムを取り入れた作風が特徴。
管弦楽、吹奏楽など250曲以上を残した。
楽譜は教べんをとった大阪音大に寄贈され、大阪フィルも再生した楽譜を大阪音大付属図書館の「大栗文庫」に納める。

近年、ピアノ協奏曲や交響曲をおさめたCDが相次いで発表されて急速に見直されているのが、神戸市出身の大澤壽人。
日本人で初めて米・ボストン交響楽団を指揮し、パリでも自作曲の演奏会を開いた。没後は忘れられた存在だったが、自筆譜が世に出て以来、注目を集めている。

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なかでも関西フィルハーモニー管弦楽団は、2005年から毎年、定期演奏会で大澤作品を取り上げている。
常任指揮者の飯守泰次郎氏(1940年9月30日 - 2023年8月15日)は、「西洋の美と東洋の美の間をやすやすと行き来するような作風に魅力を感じる」と言い、「交響曲第2番」を演奏した。

また、大澤氏が教授を務めていた神戸女学院では資料整理が進められている。
大澤の長男壽文さんが2006年に、自宅に眠っていた自筆譜など段ボール43箱分の資料を神戸女学院に寄贈。
器楽・声楽・放送作品など749曲の題名と編成を記した「作品資料目録」が刊行された。
大澤作品に最も早く注目した音楽評論家の片山杜秀氏は「大澤は近代作曲家の中でも指折りの才能。空自の50年間は今後、これらの自筆譜によって失地回復がなされるだろう」と期待する。

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一方、昭和初期にベルリン・フィルなどを指揮して28歳の若さで夭折した貴志康一氏は、貴志が幼少期を過ごした大阪市都島区で
区民らが実行委員会をつくり、大阪フィルの演奏による記念音楽祭が開催された。
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いずれも日本や関西の風土が反映された東洋的な響きの音楽で、今聴いても新鮮。今後自筆譜の研究が進み、さらに蘇演の機会が増えそうだ。

(MIYABI)

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