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「 『泣いた赤鬼』の続きのお話。(2月1日)」

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明日2月2日は節分。節分といえば冬の病魔を具現化した鬼を祓う日です。
今日は鬼にまつわるお話として、心優しき鬼の物語『泣いた赤鬼』、その続きについてお話ししますね。
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『泣いた赤鬼』

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昔々、人里近くの山に一匹の心優しい赤鬼がおりました。赤鬼は、人間と仲良くなりたいと思っていました。

そこで、お茶とお菓子を用意し、立て札を立てました。
『心優しい鬼です。……どなたでも歓迎いたします。』
しかし、いくら待っても誰も来ませんでした。
人間は赤鬼を信じられなかったのです。

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赤鬼は、信用してもらえない悔しさを青鬼に訴えました。
青鬼は赤鬼の親友でしたので、親身になって耳を傾けました。
一計を思いつき、赤鬼に耳打ちする青鬼。
青鬼が人間の村で大暴れする。赤鬼は後から出てきて、暴れる自分を懲らしめれば、きっと人間たちは赤鬼を心優しい鬼だと認めるだろう。

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青鬼は、ためらう赤鬼を連れて、人里へと下ります。
大暴れする青鬼に、逃げ惑う人間たち。
赤鬼は、青鬼を突き飛ばし、馬乗りになって、その顔を何度も殴りつけました。
心で「すまない、すまない」と頭を下げながら。

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以来、人間たちは、赤鬼の住み家を訪ねるようになります。
人間の友だちもできました。赤鬼は幸せでした。
でも、赤鬼の住み家へは青鬼は、ずっと姿を見せていません。
ある日、赤鬼が青鬼の住み家を訪ねると、張り紙がありました。
『赤鬼くん、人間たちと仲良く。ボクは旅に出ます……。』
赤鬼は何度も読み返した後、壁に顔を押しつけて泣きました。
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「『泣いた赤鬼』の続きのお話し。」

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そこに、鬼の総大将の黒鬼が、雷鳴を轟かせて現れます。
赤鬼が泣く理由を聞くと、大きくうなずきました。
そして、背後に隠れていた青鬼を、赤鬼の前に突き出しました。
赤鬼と青鬼は抱き合い、涙を流して再会を喜びました。

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次の日、赤鬼の住み家には、新しい立て札が立っていました。
『心の醜い鬼の家です……。』
そこには、一部始終が書かれてありました。

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それを境に、人間の態度が豹変します。
赤鬼の住み家の前にやって来ては、赤鬼をなじりました。
「うそつき!」「本当に心の醜い鬼だ!」
「青鬼がかわいそうだ!」「いや、青鬼も馬鹿だ!」
「所詮、鬼は鬼だ! 優しい心など持てるはずがない!」

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来る日も来る日も、人間たちの罵声は続きました。しまいには、石やゴミまで投げ込まれる始末です。

赤鬼は、それでも耐えました。
辛さの余り、涙が出そうになりましたが
赤鬼は、唇をぐっと噛みしめて耐えました。
涙は、自分のために尽くしてくれた青鬼の為だけに流そうと心に誓っていたからです。

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その時、激しい雷鳴とともに、赤鬼の住み家を囲んで罵声を浴びせかける人間の前に、黒鬼が現れます。
赤鬼も戸口から、外の様子をうかがいました。

黒鬼は人間たちに、こう言いました。
「青鬼は、心優しい赤鬼のために尽くした。
 本当に心優しい鬼だ。
 赤鬼も、人間に本当のことを打ち明けた。
 まことに正直者の鬼だ。
 今は、青鬼のために涙をこらえている。
 友だち思いの、心優しい鬼だ。」

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たじろぐ人間たちを鋭い眼光で睨み付け、なおも続けました。
「人間よ。お前たちの言う"優しさ"と、どこが違うのか?」

人間たちは、何も言い返せませんでした。

すると、一本の稲光が地面を叩き、全てが青白く輝きました。
思わず、その場にうずくまる人間たち。
次に、目を向けた時には、黒鬼も赤鬼も、
そして赤鬼の住み家も消えていました。
その後、鬼の姿を見ることはありませんでした。

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今日、赤鬼の住み家のあった場所を訪ねると、石碑が立っているのを見ることができるでしょう。
長年の風雪にさらされた石碑は、表面に刻まれた文字も薄くなり、読みにくいですが、
そこには、こう書かれています。

「心優しい鬼の住み家。いつでも帰っておいで」と。
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日本昔話でも語られた『泣いた赤鬼』には、
このような"続き"が創作されていたのです。
皆様は、どのようにお感じになりましたか?
ぜひ、コメントをお寄せくださいませ。

(MIYABI)

出典元/
「泣いた赤鬼」:浜田 廣介
「泣いた赤鬼のつづき」:安部 浩之
   (ご本人のブログにて
 「泣いた赤鬼のつづき」2008年 発表)

「泣いた赤鬼」:浜田 廣介/著 
       いもと ようこ/イラスト

出版社 ‎金の星社 (2005/5/1)
発売日 ‎2005/5/1
言語 ‎日本語
大型本 ‎47ページ
ISBN-10 ‎4323038828
ISBN-13 ‎978-432303882

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