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九死に一生。嫁さんと義母がプリウスで川に落ちた話

今日は11月22日。
ということは昨日は11月21日。
そう、まだ11月だし年末まで1ヶ月以上もある。

なのに。。なのに何故か。。
昨日から今朝にかけて断続的に雪が降っている。


ここはオランダ北部の都市フローニンゲン。
北部とは言えオランダ。
オランダと言えば快晴のブルースカイに風車。
そう思っていた。
これじゃ昔住んだ北海道やスイス、北信越と同じじゃないか。

そして我が家の目の前には幸いなことに風車が見える。
そんな風車が今は雪に包まれているではないか。

まるでエミリー・ブロンテの小説みたいな荒涼とした風景。

オランダ移住する前に嫁さんは言っていた。
「私7回か8回オランダ行ったことあるけど寒かったことなんてなかったし、雪なんてもちろん降らないよ」と。

そう、嫁さんの言葉を過信していた。
もっと疑ってかかるべきだった。

さて、話がのっけからずれているようだが今回はそんな嫁さんの話だ。
そんなに脱線はしていない。

まずは嫁さんの紹介からはじめよう。

嫁さんは身長168くらいで見た目はかなりクール。かなりの細身で顔もキリッとしてて目鼻立ちがはっきりしている。
だから割と頭も良さそうにみえる。

一方でクールに見えるが故に初対面の人には距離を置かれる事が多いのも事実だ。

なんせ愛想笑いはしないし、いまにも噛みつきそうな目つきだし、背がデカい人が往々にしてそう見られることが多いように態度もデカく見えるのだ。

だから初対面の人には「素敵な奥様ね〜」なんて言われる一方で、なんだかとっつきにくいと思っている人も多いと思う。
見た目で得しているのか損しているのか。。。
わりと損してる方が多いのかもしれない。(本人はそれでもいいのかもしれないけど)

実際うちの嫁さんのパーソナリティーはどんなかというと、見かけとは違って、中身はかなり抜けている。

例えば右と左をいつも間違える。
どういうことかと言うと、そのままなのだけれど右と左があべこべなのだ。
本人は右と言っているつもりでも口では左と言ってしまうのだ。
普段の生活であればさほど問題ないけれど、高速道路を運転している際の分岐では壊滅的な結果をまねくことになる。
右レーンに入るべき所を横の助手席から必死に「そこ左だよ、左!!と叫ぶので左レーンに入るとなんでこっちに曲がったの??右って言ったでしょ!!」と言う訳だ。
興奮すると余計に左右の区別がつかなくなるらしい。
これでは永遠に目的地にたどりつかない。
 
その他にもある。

例えば、自転車に乗って出掛けてたとしても徒歩で帰宅する。
どう言う事かと言うと、先日も仕事先の花屋に自転車で出勤したが昼に帰宅した時は徒歩だった。
勿論昼食後にまた花屋に自転車を回収に向かった訳だけれど、オランダ人もこれにはなかなか驚いたらしい。働き出してから2ヶ月。この事件を契機に嫁さんの化けの皮は剥がれたらしい。

他にもある。

早慶上智の次くらいの偏差値の私大を卒業している割にはその頭脳を活かしきれていない。
あれは3年前くらいだったか。
やめ太郎が自宅でくつろいでいたところ、当時飼っていた猫と嫁さんが2階でふぎゃふぎゃ騒いでいる。「一体何が起こっているんだろう??」と階段を登ってみると。猫の体重をはかろうとした嫁さんが必死に猫を体重計にのせようとしていた。
「さっきから体重はかりたいのに全然体重計に乗ってくれないのよ〜」と嫁さん。
疲れた顔しながらやめ太郎の方をじっと見つめる猫。
そりゃそう。
猫は体重計になんてなかなか乗らないのだ。
「そういう時は猫を抱いて一緒に体重計に乗るんだよ。」と言うと、不思議そうに「それでどうやって猫の体重をはかるのよ!!」とキレていた。
それを引き算というのだ。

そういえば今朝もなかなかだった。
朝飯たべながらなかなかご飯を食べない娘にたいして嫁さんがキレていた。よくよく耳を傾けてみると、「ちゃんと食べたものは出しなさいよ!」と喝をいれているではないか。
ん??

食べたものを出したら、それはリバースじゃないか??

正しくは「出されたものはちゃんと食べなさいよ」である。

とツッコミをいれると、
「娘の前でそんな事を言うと私の威厳がなくなるからやめてよ!!」とまたキレていた。やれやれ。 

こんな感じで嫁さんにまつわるストーリーには枚挙にいとまがない。

実は嫁さんの母もおなじ感じで、しっかり者のようで実は結構抜けている。
諺とか一般常識的なものは結構詳しいし、見た目も綺麗なグレーヘアーで凛としている。

でもどこか抜けているのだ。

例えば、買い物にでかけた際にピカピカに磨かれたガラスに気づかずに自動ドアに顔面を強打するのは日常茶飯事らしい。


今までで1番驚いたのはプリウスで川に落ちた事件だ。
ちょっと長くなるけど茶でも飲みながら聞いてほしい。


それは今から10年ほど前。
やめ太郎と嫁さんが出会う3年ほど前の話だ。

嫁さんは義母が運転する新車の赤のプリウスに同乗して買い物に出掛けたらしい。
買い物が終わって車に戻り、義母がプリウスにエンジンをかけた時に事件は起こった。

義母がブレーキとアクセルを踏み間違えて数メートル先のよくあるグリーンのフェンスを突き破り、その先の堤防を通り越して3〜4メートル下の河川まで落下したのだ。

(嫁さんと出会ってから何度目かのデートでその現場に連れて行ってもらった事があったのだが、確かに突き破った部分だけフェンスが新品に交換されていた。)

さて、落下してからどうなったかと言うと。

新車のプリウスはその重い車輌を一回転させて、さながらでんぐり返しの要領で上下逆さまな状態で川に落下、そして河川の真ん中で停止した。
(その河川は幅4〜7メートルくらいの川だ。小川や渓流よりは大きいけど、そんなに急な流れではない)

勿論上下逆さまと言うことは中にいる現嫁さんと現義母はシートベルトで宙吊りの状態な訳だ。

そして運転席に座っていた義母が川上、助手席に座っていた嫁さんが川下の状態だったらしい。

この事件発生時は8月。幸運な事に水深は浅かったようで大人の膝から腰の間くらいだったらしい。(後から警察から聞いた話によると、もっと水深が深ければ窒息、浅ければ衝撃によってより状況は深刻になっていたことは間違いないようだ)

さて、そうこうしているうちにプリウスの中にはどんどん水が浸水し、2人は宙吊りのまま。この時ばかりは嫁さんも頑張ったようで「こんなところで死ぬわけにはいかない」と必死にシートベルトを外してドアを開け、なんとか脱出に成功したらしい。

脱出とは言え、プリンセス天功のような華麗なイリュージョンとはいかない。水流はそれほどとは言えどもすでに全身ずぶ濡れである。

車の中を見ると宙吊りで顔半分を水につけた義母の姿が。

でも義母のポジションは川上。嫁さん1人の力では到底ドアを開けることはできない。

嫁さんが堤防の方を見上げると、散歩中のおじいちゃんと、北関東にいがちなヤンキー風のお兄さんが目に入った。

大声で助けを呼ぶ嫁さん、何事かと急いで駆けつけるヤンキー風お兄さん。

どうやらヤンキーにありがちな実は優しいヤンキーだったようで一瞬の迷いもなく着のみ着のまま川に入ってプリウスのドアを開けて義母を救出してくれた。

そうこうしているうちに見物客は増え、サイレンは鳴り響き、消防車に救急車にパトカーに最後にはヘリコプターまで駆けつけた。

ずぶ濡れの嫁さんと義母はよくあるオレンジ色の毛布にくるまれて、そのまま救急車で近くの大学病院まで運ばれてメディカルチェックを受けた。

幸い怪我もなく、無事だった。(医者から生きているのが本当に奇跡だと言われたらしい)

その一報を受けて駆けつけた義父は笑いながら「大丈夫か〜」と言っただけだったらしい。

普段は口うるさい義父だったが、なんと言う懐の深さ。あっぱれだ。

新車のプリウスは勿論廃車になるだろうし、事故を起こした義母は結構憔悴していたらしい。そりゃそうだ。

義父が大学病院の支払いなどの手続きを済ましている間も、まだ嫁さんと義母はよくある病院の黒皮のベンチに隣に座ってオレンジ色の毛布にくるまれて待っていたらしい。

そこでようやく我に返った義母。

そしてそんな義母から嫁さんに発せられた事故後の最初のひとことは何と!!

「あっ、●●ちゃん(←嫁の名前)、今お母さんの鼻の穴から川の藻が出てきたよ。」

流石としか言いようがない。

これぞ遺伝。

これぞ血の繋がりだ。

秀逸な作り話か落語のような話だ。

実はこのストーリーを嫁さんから聞かされるまで、私はあまり嫁さんに対して興味がなかった。なかったと言うよりも、やはりその風貌や立ち振る舞いからドライというかとっつきにくい雰囲気をひしひしと感じていたから気を許していなかった。

人生何が起こるかわからないものである。

あと少し水量が多ければあの時、嫁さんも義母も窒息して死んでいたし、
水量がもっと少なければ全身打撲で死んでいた。
かと言って、川に落ちていなかったらこうして結婚していなかったかもしれない。

こんな風にnoteの記事に書く事に関して許諾を得ている訳ではないので、明日にでも削除させられるかもしれないし、なんならめっちゃくちゃ怒られるかもしれない。

それでも酔っ払った勢いでここまで3,710文字も書いてしまったので一旦UPすることとする。

明後日あたりこの記事が削除されていたら、そう言うことだろうな、と察して欲しい。

あー、お仕事したい。


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