やめ太郎が好きな料理
やめ太郎の好きな料理について独白したい。
45歳のおっさんの嗜好になんか興味ないと言う反発もあろうと思うけれど、まあそこは何とか溜飲をぐっと下げて聞いて欲しい。
好きな料理と言っても、食べるのが好きな料理で言えばベスト5はラーメン、カレー、カツ丼、チャーハン、そして何と言っても鰻だ。以前はこれに焼肉もランクインしていた訳だが、加齢による胃もたれによって現在焼肉はチャート外となっている。
やめ太郎は何と言ってもB級グルメが好きだ。
上石神井の餡掛けチャーハン、南大沢と桐生のラーメン、釣りや登山明けに食べるカツカレー全般、そしてみどり市の鰻。北海道千歳市のラーメン屋も好きだったけれども残念な事に10年ほど前に廃業してしまった。
北海道と言えば札幌クロックのカレーも最高だし帯広のインデアンカレーも外せない。松本のメーヤウのグリーンカレーも美味い。
さて今回は食べる方ではなく、やめ太郎が調理するのが好きな料理についてだ。
先日、暇すぎて自分のレシピが何品あるのかをスマホのメモに書き出して見た。
いったいどれだけ暇なのか。
ざっと思い出したもので60種類。
脳細胞の半分はアルコールで死んでいるから実質120種類くらいはあると思う。
凝ったもので言えば牛タンシチューや舌平目のムニエルあたり、中華で言えばウンパイルや麻婆豆腐、つまみ系であれば鮭の焼き浸しとか牛スジとか。
そしてやめ太郎は自分で言うのも何だけれどパスタが劇的に得意だ。カルボナーラに鯖の缶詰のペペロンチーノやメカジキトマトソースなど結構なレベルだと自負している。
まあ、個別具体的な料理で言うとキリがないし順位付けなんて主観的すぎて不可能だ。
でもカテゴリーで言えば1番好きなものは断トツで煮込み料理だ。
ボロネーゼのひき肉を煮るのも好きだし、鳥やサーモンのクリーム煮なども好き、カレーや煮込みハンバーグあたりも好きだ。レバーや臓物系のワイン煮や味噌煮も好きだ。最近は胃がもたれるのが怖いからちゃんぽん的なものや白菜うま煮あたりも好きだ。(おっさんになるとどうしても食の嗜好はカロリーや脂質といった面では保守的にならざるを得ない。)
さて、煮込み料理の王様とは何か?
じっと手を胸に当てて考えて欲しい。
いきなり答えを言おう。豚の角煮だ。
誰が何といっても角煮が王様だ。
準備に要する手間暇、使う調味料の量、煮込みに要する時間、見た目のインパクト、そして食べた時の満足感。これを凌駕する煮込み料理は角煮をおいて他にあるだろうか。
幸運な事に先週末の日曜日、久しぶりに豚の角煮を作る口実ができた。
角煮が大好きなやめ太郎ですら角煮を作るに際して何かしらのきっかけがないと流石に重い腰が上がらない。そりゃそうで、相手はそこらへんのちびっこ相撲の横綱などではなく朝青龍みたいなもんなんだから。
その口実というのは、以前このnoteの記事に書いたやめ太郎に日本語を習いたいキックボクシングジムのオーナーだ。すでにガッツリ仲良くなったのでファミリーを我が家に招いて食事をしたのだ。
すると「やめ太郎、よかったら我々家族のために週1で夕食を作ってくれない??勿論お金は払うよ。」と言うのだ。
理由を聞くと、どうやらオーナーはジムのパーソナルトレーニングで多忙、奥さんは高校の生物の先生で多忙、故に17歳の娘が1人でファストフードを食べざるを得ない状況がたまに発生するというのだ。そしてオーナー夫妻はそんな状況にかなり胸を痛めていたのだ。去年まではオーナーの母がたまに夕食を作ってくれていたようだが現在は膝を悪くして自宅療養中とのこと。
それは成長期のティーンエイジャーにとって由々しき問題だ。
ひと肌脱ごうと言う事で毎週木曜日に大皿メニューを一つ提供する事とした。
そして第一回目のメニューは勿論、豚の角煮だ。
その為にやめ太郎は2日間にわたりフローニンゲンの肉屋を4軒まわって皮付きの豚バラ肉1キロを仕入れてきた。何といっても皮のコラーゲンが重要だ。そんじょそこらのただのバラ肉でなどでは妥協できない。
1キロで19€だったから、ざっと3500円くらいだろうか。やめ太郎の双肩にはキックボクシングジム一家の幸せとティーンエイジャーの健やかなる成長がかかっている。この際原価なんて関係ない。
さてこの豚バラブロック、英語ではPORK BELLYと呼ばれるものだ。つまり豚の腹である。
まずはこいつを捌く。
そして焼き色をつけて、米の研ぎ汁で1時間油抜きする。
1晩かけて鍋が冷えたら表面のラードを取る。
今度は調味料や生姜と一緒にひたすら煮る。
それから屋外に鍋を出して外気浴させて冷やして味を染み込ませる。
その後煮卵と大根も入れてまたひたすら煮る。
かれこれ累計5時間は煮ただろうか。
このひとつひとつの工程が愛おしい。何とも言えない至福の時間だ。
着工してかれこれ24時間。
久しぶりの豚の角煮完成だ。
この満足感。
他の料理では決して得ることができない疲労感と達成感。
やっぱり煮込み料理たるやこうでなければいけない。
この多幸感。
他に代替できるものはなかなかない。
自分に乾杯と思わずギネスを開ける。
そしてふと思う。
この激重の鍋をどうやってオーナーの家まで持って行けばいいものかと。
あー、お仕事したい。