3.11の寄付にまつわる美しい話
2011年の震災があった翌月のことだった。当時は従業員数万人の会社で働いていた。人事部から被災地に寄付したい場合は申請することで、その金額が各々の給料から天引きされ、更には会社が同額をトッピングして被災地に寄付する制度を作ったとの通知が来たのだ。
確か当時31歳だった私は三万円を寄付して、会社からの補助が同額の三万円あったので合わせて六万円寄付できたと記憶している。
同僚とはいくら寄付した?なんて話をしたりもしていた。やはり会社補助があるので皆すすんで寄付していた。
そんな中、あまり雰囲気読めない上司が我々中堅層に対して、「俺は〇〇万円を寄付する旨申請した。お前らもしっかり寄付するように」と寄付を促してきた。
勿論その場はシラける訳だ。
寄付はあくまで善意によるもので強制されるものではない。
そして、その傍にいた新入社員の〇〇さん(女性)がぽかーんという顔をしてそのシーンを眺めていたため、私は〇〇さんに対して、〇〇さんはまだ新入社員だし無理しなくていいからね、と声をかけた。
すると〇〇さんがポツリと、今月のお給料は既に全額寄付すると申請しました、と言うのだ。しかも屈託のない笑顔で。
あれから毎年この季節になるとあの美しい〇〇さんの笑顔を思い返している。