選書マスター 読むべき本をどう選ぶか/ 深井次郎(エッセイスト)
自由になるために
大切な人にぴったりの本を選べるようになろう
こんな人向け
• おすすめ本を選ぶことになった人
• 自分の読書の幅を広げたい人
• プレゼントとして本を選びたい人
こうして1日限りの本屋「オーディナリー書店」は始まった
本好きを公言していると、おすすめ本を聞かれることがあります。「どの本から読んだら良いかわからない。あなたのおすすめを教えて欲しい」というわけです。今回、ぼくらオーディナリー編集部は、「1日限りの本屋さんをつくる」というプロジェクトに取り組みました。出店場所は、『自由大学祭2013』。自由大学にとって、年に一度のお祭で、文化祭でもあり、ホームカミングデーでもあり、大きな忘年会でもあり、というようなイベントです。イベント全体のテーマは「GAP YEARをつくろう」。オーディナリーはこれをテーマに選書し、古本屋をやろうじゃないかということになりました。このプロジェクトの流れを解説することで、「おすすめ本の選び方」の参考になればうれしいです。では、順番にお話していきましょう。
【目次】
STEP1. テーマを掘下げゴールをイメージする
STEP2. 対象者にヒアリングする
STEP3. 本棚をカテゴリーに分ける
STEP4. 本をリストアップする
STEP5. 本を並べて読んでもらう
「オーディナリー書店にお立ち寄りくださいね」トークする深井次郎
STEP1. テーマを掘下げゴールをイメージする
「GAP YEARをつくろう」とはどういうことか
イベント全体のテーマをまず考えてみないと始まりません。ギャップイヤーというと20代の「学生と社会人の間の自由な時間」という固定されたイメージを持つ人もいます。でも、自由大学に通う方々は、年齢はさまざまだし、学生よりも、社会人がほとんどです。ギャップイヤーという、多くの人がもっているイメージをもっと広いものにしたいと考え、「人生の転機に読みたい本」というワードを掲げました。
このプロジェクトの成功とはどんな状態か
まずプロジェクトを始める時に考えることは、ゴールのイメージです。ゴールは、参加者の血肉となる一冊との出会いを演出し、インスピレーションを与えること。そしてその一冊(たった一言でもいい)との出会いの結果、思いついたアイデアにうずうずして動き出さずにはいられなくなってしまう。それが最高のイメージです。
キャッチコピーは「本を読むと動きたくなる」に決定
ぼく自らの「人生の転機」を思い返してみても、転機というのは、心細い状況だと思います。サラリーマンから意気揚々と独立した時もそうだし、会社をつぶしそうになってつくばに移転したときもそう。強気になってるか、弱気になってるか、その差はあっても、不安がないということはありませんでした。頼れるものがない、確信の持てるものがない。そんなスポンジのように柔らかい状態だからこそ、いろんな知識を吸収できるし、人からも影響を受けられるし、いろんな経験から発見もできる。そんなやわらかいモードになっているときに、動かないのはもったいない。「見えない未来」に自分なりの指針をもって、歩みだしたくなるような本が必要だと思いました。
みんな自由大学の受講生
STEP2. 対象者にヒアリングする
他人に薦められて読んだ本がピンとこなかった経験は誰しもあるでしょう。選書をする時には、相手がどんな人かによって薦める本は大きく異なります。ただ自分が好きな本を薦めれば良いわけではありません。
•だれに届けるのか。
•その人はどんな問題意識をもっているのか。
•どんな助けを必要としているのか。
それを具体的に細部までイメージし感情移入します。とは言っても、他人のことを予想するのは難しい。なので、本人に聞いてしまうのが一番早くて正確です。今回のイベントの参加者は、主に自由大学の受講生たち。実際に彼らにヒアリングをしてしまえばいいのです。これからどんなことをしたいと思っているか、抱いている問題意識、何を求めているか、を聞き出しました。よく、ビジネスの現場で、「モノが売れない」という話になります。「お客さんは、こういうものを欲しがるだろう」という勝手な想像でモノを売りはじめてしまうものですが、売り手と買い手にはズレがあるのです。直接買い手に聞いて、「欲しい」というものを提供すればいい。ズレがなくなることはないけど縮めることはできます。ヒアリングの結果、ざっくりまとめると、こんな願望があるようです。
•やりたいことを見つけたい
•できることを整理したい
•自分の向き不向きを知りたい
•世界がこれからどう変わるかを知りたい
「人生の転機」というのはぼく自身の研究テーマでもあります。それにいまオーディナリーを立ち上げているぼく自身が今、転機にあると感じているので、ぼく自身が対象でもある。そういう意味で、とても考えやすかった。改めて読み直したい本を選んだという感じです。こちらで選書のタイトル160冊を公開しています。
「この160冊以上の本をカテゴリーに分けますよ」イベント一週間前
「この棚をつかいましょう」しっかり拭き掃除します
STEP3. 本棚をカテゴリーに分ける
では次に、本棚の仕上がりをイメージします
使う本棚は、こちら。この棚を使うとすると、本の冊数は、160冊くらいが美しく、また手に取りやすく並べられるのでは、と定めました。160冊というと、タイトルをざっとみるだけでも5分くらいかかってしまう冊数です。端から端まで一気にみてもらうには、現実的な量ではない。特に今回は、本屋に来るのが目的のお客さんではなく、イベントついでに通りかかった人に目を留めてもらう必要があるのです。そこで、160冊をいくつかにカテゴライズし、気になった項目だけでも手に取ってもらうようにしました。
6つのカテゴリーに分けました
転機にいる時期に、必要なこととは何か。転機というのは、自ら望んで起こす場合と、外部要因(予想外の事件など)によって意志と反して引き起こされるケースがあります。そのどちらにしても、以下の6つは自分を新しくする上で大事なのではないかと考えました。
1.UNIVERSE -大きな枠組み-
宇宙、物理学、資本主義、遺伝子、信仰、自分のルーツ、歴史 大局観を養う
2.THINK -学ぶ-
自分に合った学び方を考える。学ぶことで次のステージに進む勇気がでる
3.TIME -ペースを変える-
生活の速度を変えることで、見えなかったものが見えてくる
4.TRAVEL -旅する-
場所を変えると自分も変わる
5.CHANGE -新たな視点-
常識、思い込み。凝り固まった価値観をほぐす
6.ACTION -実験に没頭する-
実際に動き、トライアンドエラーをくり返し、活路を開く
各カテゴリーについての解説を
転機にいる人、特に外部要因によって起こされた転機にいる人によく見られるのは、パニックになってしまって冷静な判断ができなくなってしまうことです。濁流に飲み込まれたら、まず落ち着くこと。身体の力を抜けば、ゆっくりと浮上するのです。そのことを冷静に思い出すのです。バタバタもがいてパニックになり呼吸が乱れ、水を飲んで溺れてしまう。こういうことは自然が教えてくれます。焦らず、ペースを落とすこと。するとしっかりと地に足がつき、見失っていた大事なものが見えてくる。そういうことをまず、「TIME -ペースを変える-」をというカテゴリーの本で思い出して欲しいと考えました。ひとりで真っ暗闇にいてパニックになりそうなとき、これらの本が助けてくれるのです。
走りながらなど考えられないから
パニックを乗り越え、冷静になったら、次の足を踏み出す方向を考えます。よく、「非常事態に備えて準備しておけ」とか、「止まってないで、走りながら考えろ」と言われます。けれど、それができる人は、よほどの天才です。普通にできるような芸当ではない。「走りながら」と言ったって、走りつづけている車を止めずに、修理したり、改造したり、ということができますか? ぼくも多くの人たち同じように、走りながら考えることができないタイプです。なので、再び走る前にじっくり考えて目指す北極星みたいなものを定めます。その時に、ぼくらのいる世界のこと、宇宙のこと、生物のしくみや人間のルーツや歴史。そういう「UNIVERSE -大きな枠組み-」を知ることが大事になります。
さなぎの状態をたのしく過ごすには
転機の最中というのは、物理的に、精神的に宙ぶらりんの状態ということが多いものです。宙ぶらりんは、多くの人にとっては居心地が悪い。たとえ自分で望んで転機に突入した人でも、途中で不安になってきたりもします。そこでは自分を信じることが必要で、それが難しい人はもっと大きなものを信じればいい。ぼくら人間の遺伝子は何万年も生き長らえてきたわけです。そこには、フグの毒を食べて死んだり、このキノコは大丈夫だったとか、うまくいったこといかなかったことのデータがふんだんに入っている。だから、その直感とか心の声に従えば、最悪死ぬということはないのではないか、ということも考えます。バックにそういう人類の歴史を背負うことでぶれなくなるということもありますし、もし自分を信じられなくても、自分よりも大きな、自然、生物、宇宙の原理原則は信じることができる。どんなに暗い夜でも朝日はまた決まった時間に昇るのです。ぼくらもまた自然の一部ということを考えると、間違いというものは存在しないのだなぁと、心の平安を得ることができるのです。紙面の都合上、すべてのカテゴリーに触れることは省きますが、このように各カテゴリーのことを考えることによって、転機という「さなぎの状態」を楽しく過ごすことができるのです。
STEP4. 本をリストアップする
では、いよいよ肝心な本棚の中身。本のラインナップを具体的にどのように選んだか、という話です。この7つのアプローチで選んでいきました。ではひとつずつ解説していきますね。
1. 自分の好みで選ぶ
2. すごい人のおすすめ本も選ぶ
3. タイトルだけでメッセージを伝える本も選ぶ
4. アートのようにエネルギーを感じる本を選ぶ
5. 友人の本、自分の本は外して選ぶ
6. ベストセラーなど「定番本」も選ぶ
7. 読んで元気が出る本を選ぶ
1. 自分の好みで選ぶ
まず、ぼくらの好みの本を、ぼくらの本棚からピックアップしました。するとやっぱり偏ります。その偏りが悪いかと言うと、今回の場合は別に公立図書館をつくるわけではないのでオーケーです。偏りこそが面白いのです。他人の本棚をのぞき見する面白さはそこにある。その人らしさが色濃く反映されていた方がいいのです。顔の見えない万人に喜ばれそうな本棚を目指すのではなく、具体的に顔の見えるあの人に読んでもらいたい本を選びました。とはいっても、バランスは大事で、まずはキーブックを決めます。全体の中心になる本です。今回で言えば、『人生の転機』(キャロル•アドリエンヌ著)です。この本を中心に、足りない要素を補うように、全体を考えていきます。あとは、どんなに好きな著者がいても、1人の著者につき1冊のみするようにしました。
2. すごい人のおすすめ本も選ぶ
自分たちで選ぶだけでは、自分たちにとっては新しい本の発見がないので、面白くない。自分たちもこのプロジェクトを通してもっと成長したい。ということで、他の専門家(本好き)の意見も調査します。よく雑誌や新聞などで、著名人が選ぶ「人生を変えた3冊」といった記事を目にしませんか? 「座右の書」とか「もっとも影響を受けた本」とかそういうもの。それを全部調べます。方法としては、大宅壮一文庫に行きました。ここには雑誌『an an』の創刊号(1970年)以来、ほぼすべての国内の雑誌のバックナンバーが揃っています。キーワードで検索もできますので、非常に便利。「おすすめ本」とか「座右の書」などで検索すればたくさんの記事が見つかります。北方謙三から小泉今日子まで、色んな人の「人生を変えた本」についての記事が見つかる。雑誌は、プロが本気でつくっていて、非常に読み応えのある特集も多いのに、捨てられてしまって各家庭には残っていないことが多いものです。それをストックしてくれている施設があることは非常に助かります。(※注:別にぼくは大宅壮一文庫のまわし者ではありません)
実は、6年前の暇な時に大宅壮一文庫に3ヶ月間通いつめたことがあります。そのときに、著名人、文化人7000名、15000冊の「人生を変えた本」のリスト(「魂の本リスト」と呼んで一時期WEB公開していました)をつくっていたのです。今回、そのリストも活用しました。その中には当然読んだことのない本も多くあり、これをきっかけに読んでみて、良いなと思った本も入れました。
「良い本とは何か」という定義は難しいですが、確率論として、新刊よりも古典、つまりロングセラーに良い本があると思います。やはり歴史に耐え、多くの人の目にさらされても残ってきた本というのは、それなりの理由、光るものがあるわけです。「何年に発刊されて、何刷りか」というのは、本の奥付に載っていますので参考にみてみるとよいでしょう。あとは自分が尊敬する人物のおすすめ本は、とりあえず黙って素直に買っておきます。その時は理解できなくても、買って「積ん読」にしておくと、いつかわかる時が来るものです。
「本棚の中にわからない本もある」という状況が大事。たとえば、子どもの頃、好きではないけどにんじんを食べさせられていて、嫌だなと思っていたけど、そのうち魅力がわかるようになってくるということはあります。自分だけの目先の好き嫌いに固執するのはもったいないし、危険です。あの頃大好きなアイスクリームやスナック菓子ばかり食べていたら、今のあなたの健康な身体はできていないわけです。自分よりも大きなものが見えている人のおすすめは素直に聞く。そのほうが自分のためになります。
3. タイトルだけでメッセージを伝える本も選ぶ
本棚をつくっても、当然、素通りしてしまう人も多い。手に取って中身を開いてくれる人は限られます。ましてや全ての本の中身に目を通す人などいません。そうなると、外見だけでぼくらのメッセージを伝える必要も出てきます。本にとっての外見とは、タイトルと装丁。中身を開く時間はなくても、『ドラマで泣いて人生充実するのかおまえ』とタイトルに投げかけられたら、ハッと自問自答する人もいるのではと考えました。たった一言でも、人生を変えてしまう場合はあるものです。
4. アートのようにエネルギーを感じる本を選ぶ
本を買うのは、知識を仕入れたいからだけではありません。あるアートコレクターは、アートを集める理由として「エネルギーがもらえるからだ。眺めているとエネルギーがわいてくる」と言っています。本を集める理由も同じではないでしょうか。中身に書いてあることがまだ理解できなくても良い。「わからないのだけど、この本には何かありそうだ。エネルギーが充満しているのを感じる」 そういうエネルギーのあるものと暮らしたい、ということがあります。
本屋でもそういう、理由はわからないけど「光っている本」に引き寄せられますね。装丁も含めて本です。デザインが美しいというのは重要な要素です。全体からエネルギーを発している本を選びましたが、その本の中身をしっかり理解できているわけではありません。乱暴な言い方をすると、「本は、わからなくてもいい」。本当に著者の言ってることを100%わかってしまったら気が狂ってしまいます。著者というのは書いてあることの少なくとも10倍以上大きなものを後ろに用意しているものなのです。
5. 友人の本、自分の本は外して選ぶ
関係者の本は可愛く思えてしまいますが、公正な目で、といいますか、あえて外す(じゃあ公正じゃないじゃないか!)という選択肢をとりました。どんなによくても身内の本を選ぶと、ラインナップ全体が宣伝くさく見えてしまうこともあるからです。
6. ベストセラーなど「定番本」も選ぶ
マニアックになりすぎないように注意しました。人が覗きたくなる本棚とはどんな場合でしょうか? それを想像してみてほしいのです。 「好きな人の本棚」これは気になりますね。大好きなあの人が普段どんな本を読んでいるのかは知りたいです。もうひとつは、「自分の好きな本が入っている本棚」です。他人の本棚を見た時に、自分の好きな本が1,2冊並んでいる。すると「もしかしたら趣味が合うかも?」「他にはどんな本を読んでいるんだろう」と気になりませんか。そういう「共感できる一冊」によって、人と本棚の関係を築くことができるのです。そういう意味で、比較的多くの人が知っていて気に入っているだろう「定番本」の存在も必要です。今回の選書ラインナップでいえば、漫画『岳』や星野道夫などがその役割です。
あとは、気負わず読める本、軽い本が入り口の役目をします。すぐに読み終わる絵本だったり、眺めるだけで美しい本。読むのはフィジカルな行為でもあるので、忙しい時、つかれているときには重たい本にはとりかかれないものです。そういう時には、絵本『よあけ』のような絵本がリハビリになるのです。
どんな本にも必ず欠点があるもので、地味な本というのはあります。中身はすごく良いのに、外見(タイトルや装丁)が野暮ったくて敬遠されたり。そこが人間みたいで愛くるしいのですが、そういう地味な本も上記のように入り口を上手くつくることで、最終的に手に取ってもらうきっかけをつくることができます。
7. 読んで元気が出る本を選ぶ
先生に、「ほめて伸ばすタイプ」と「叱って伸ばすタイプ」の2種類がいるとします。どちらが良い悪いの話はここでは触れませんが、ほめて伸ばすタイプの本を今回選びました。「〜しなさい」「だからあなたはダメなんだ」と自らの成功自慢や辛口説教の本は遠ざけたということです。なによりも読者が暗くなるし、自分をこれ以上いじめてもいけません。ダメ出しが中心の自己啓発本、ビジネス本というのは読者を依存させて自分の頭で考えることを止めてしまうからです。元気な時に気合いを入れて自分の尻を叩きたいときは良い刺激になるかもしれませんが。
元気が出るのと反対に、眠くなる本というのも実はあります。眠くなる本は悪い本なのでしょうか。いやむしろ、自分にとって必要な本だという可能性も大いにあるのです。自分にとって耳の痛いこと、つまり自分を大きく変えてしまうような内容の話を聞く。すると人間は自己防衛のために耳をふさぎ、眠くなってしまうという現象があります。人生を大きく変えてしまう情報、というのはホメオスタシス(生物が正常な状態を維持する現象)が組み込まれている人間の身体にとっては大きな脅威なのですね。なので、あえて眠くなる本も入れてあります。それがどの本かは秘密です。
STEP5. 本を並べて読んでもらう
これらのラインナップ、本の仕入れはどのようにしたか
自分たちの本棚にある本は、持ち寄り、ない本はアマゾンで買いました(新しく買ったのは1割以下でした)。 持ち寄った本で困ったのは、「どの本も売りたくない」という気持ちでした。みんなに読んで欲しいけど、自分も手放したくない。基本的に要らない本ではなく、ずっと置いておきたい本ばかりなので、手放したくない。特に、本に線をひいたりメモをしている本は、手元に置いておきたい。新しい本を買えば良いという問題ではないのです。他人から見たら「いらない汚れ」でも、ぼくにとっては大事な「仕事の種」であり「語り合った仲間」です。こういうときに、「電子書籍だったらシェアがしやすいのに」と思いました。でも、前にも触れましたがアートしてエネルギーを感じる本の場合、電子になったら魅力が半減するだろうと思います。大変だったのは、郵送ですね。160冊は、段ボール箱でぴったり3箱分。ヤマトで送ったのですが、片道で5000円ほどかかりました。こういう意味でも電子書籍だったらシェアがしやすいのに、と思いました(ぼくは紙の本を愛してる人間なのですが)。あとは、本棚をきれいに拭いて、本を並べて当日にのぞみました。値づけは、利益を得ることが目的ではないので、アマゾンの中古品の最低価格を設定しました。つまり、アマゾンで古本を買うよりも郵送代250円安いというわけです。
おわりに
たくさんの方に読んでもらえました
これまでの経過を経て、イベント当日は多くの方(100人以上)に本棚を眺めてもらい、手に取ってもらうことができました。じっくり1時間も本棚を前にメモしている人もいました。「ラインナップを教えてください」とも言われましたので、「オーディナリーのWEBで公開しています」と伝えました。ぼくたちも、本を売ることが目的ではなく、「気になった本があったら各自買って読んでください」とすすめていました。そういう「売りたくない接客」(笑)をしたので、無事にそんなに売らないですみました。10冊くらいを手放したくらいですんだかと思います。
売りたくないという葛藤
本屋をやりながら、本を売りたくない、というのはどういうことだと思いましたが、好きなものを売るというのはそういう葛藤があるのですね。骨董品屋などは、一点モノが多いのでそうでしょうし、生き物を扱うペットショップの人なんか、愛着があって売りたくないでしょうし。ましてや養豚場の人は、うちの子を食べられたくないと思うでしょう。アーティストもそうで、自分が精魂込めて描いた原画は一点ものなので売りたくないだろうなと思います。ぼくは今まで複製できるものを中心に扱ってきたので、そういう葛藤はあまりありませんでした。(教えてる学校で、ぼくの教え子たちが巣だっていくのは寂しいですが、つながりは消えないし、2度と会えないわけじゃないので、「卒業させたくない」ほどではありません) みんな、どういう心境で仕事をしているのだろうと、思いを馳せました。
新しい暮らしへなじむように
今回、160冊のラインナップがありますが、全部読む必要はまったくありません。少しでもひっかかったものがあれば、手に取ってみればいいのです。たとえば、新しい町に引っ越したとき、大勢の新しい人があなたの前を通っていきます。その全員を覚えることはできないし、その必要はありません。徐々に、でいい。まずは全体をざっと流して、顔を良く合わせる人から覚えていけばいい。それが転機、新しい暮らしへのなじみ方なんだと思います。
編集後記
本の選び方という記事でしたが、日本には本をプレゼントする文化が育っていないと思います。選ぶのが難しいというのも理由の1つでしょう。本の選び方について、もっと考えていきたいと思いました。それでは、よい読書ライフを!
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