【詩】サーカス
サーカスでは ライオンが火の輪をくぐって
ピエロは涙を流しながら
人生の滑稽さを肴に人々を沸かす。
僕たちが眺めているこの円形劇場は
綺麗に彩られ、
宙を舞うブランコに乗った妖精は
縦横無尽に空を駆ける。
サーカス小屋に響く、
あの陽気さと悪夢のあいだを縫うような音楽は
外で泣き叫ぶ人々の声をかき消していく。
僕たちは集団で夢をみている。
だけどあそこに座っている坊やには
悲鳴も 届かない祈りも すべて聞こえている。
オレンジの閃光も 赤い血潮も すべて見えている。
僕たちがようやく目を醒ましたとき
坊やの姿はもうそこにはなかった。
「幻滅を生きる人々よ、いつまでも失望の涙でも飲み干しているがいい!」
そう書かれた置手紙だけが座席に残されていた。
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