みんな、海外崇拝をやめよう。
「結局、100点満点の国なんてどこにもない。」
色んな国に住んで、私が行き着いた結論だ。
今まで住んだ国それぞれ、良し悪しがあった。
例えば、シンガポール。便利で整っていたし日本人には最高だった。でも、年中暑くてクーラーの中でしか暮らせない。外の空気を自由に吸えないという意味では窮屈だった。
一方、オランダは開放的で、暑くなり過ぎない最高の気候だ。が、これは夏限定の話。冬場は極寒で、曇り空に強風の日々。なかなか太陽を浴びられず、うつ病になる人もいる。
育った環境が、いかに自分の価値観を形作っているかを感じる瞬間だ。
日本は、確かに欠点もあるが、自由に外の空気を吸え、太陽をしっかり浴びることもできる。
◇
外から見るのと、中で暮らすのは、雲泥の差がある海外暮らし。
「海外生活いいな〜。羨ましい。」と日本の友人には言われる。
しかし、海外暮らしが長くなればなるほど、日本に住む友人とは疎遠になる。会話をするときも「自慢している」と思われないように気を遣う。
日本人は海外崇拝が強いと感じる。
それは、海外に住んでいる日本人にも言えることだ。海外在住の日本人は、日本を批判し、海外を褒めがちになる。
私は過去6カ国に住んだことがあるが、結局どの国も、"良いイメージ"が先行しているだけだと感じている。
・ヨーロッパの建物には、センスがあるのかもしれない。
・いち早くコロナ規制を撤廃した国々は、先進的かもしれない。
でも、建物は見慣れたら日常になる。
コロナ規制を撤廃した国は、感染しても自己責任という判断になっただけだ。(蔓延中でも、マスク着用もユルければ、うがい手洗いもしない。規制も途中から意味をなしていなかった。)
他の国というのは、国の成り立ち・人の行動や考え方が、根本から違う。
それを「憧れる!」「素晴らしい!」で片付けるのは、横暴だと感じる。
それに住んでみたら、その憧れのイメージは、その国の「たった一部」でしかないということに気づく。
というか、そっちの方が大半だ。
パリを例に挙げると、
美しい整然とした街並みに、美味しい食事。おしゃれな国のイメージがあるだろう。
しかし実際の暮らしは、
スリを絶えず警戒して歩き、地下鉄の悪臭に、犬のフンがそこら中に落ちていてゲンナリする。喫煙天国で、外食は日本の2倍はする。現地の人とフランス語とコミュニケーションするのも簡単でない。
現実はそんなもの。
みな、海外崇拝をやめるべきなのかもしれない。
◇
私も過去、盲目的な海外崇拝者だった。
日本批判をしがちになっていた。過去の私は、安易な比較をするだけでなく、論理的に説得できるだけの教養を身につけることが大事だった。
一つの国の成り立ち・歴史、文化、社会など、日本との違いは実に複雑で、単純じゃない。多くの場合、全てが日本と同じ尺度で比較できない。
丁寧に物事を見ていけば、必ずしも、外国の方がいいと言えないことも多々でてくる。
反対に、海外に憧れを持っている人は、ぜひ、海外在住者に「苦労」を聞き出してみてほしい。
様々なバックグラウンドの人と、人間関係を構築するのは容易でない。
頼れる人も少なく、日本での快適さとのギャップに鬱になる人もいる。
海外暮らしは、良いことばかりでない。
外国の方が良く、素晴らしいわけでもない。
安易な方に流れるのではなく、教養を身につけ想像力を働かせていきたい。
自戒を込めて。
おしまい。