いくら体を動かしていても、座位時間が長ければ心身に影響し、寿命を縮める
第123回文天ゼミ「座位行動研究の最新動向」と題した岡浩一郎先生(早稲田大学スポーツ科学学術院 教授)のご講演をオンライン聴講しました。岡先生のお話はいつも発見があり勉強になります。自分の頭の整理も兼ねてレポートします。
●〝運動をしていても〟座り過ぎはリスクに
座位時間が長いと、首や肩などの運動器に影響があるのは、多くの方が実感することかと思いますが、それだけでなく、座位時間が8時間以上になると、心血管・代謝系疾患、そして結腸がんや乳がん、うつや認知症などのリスクとなり、死亡率を高めること、つまり寿命を縮めるリスクであることがわかっています。ちなみに、このリスクは恐ろしいことに〝運動をしていても〟です。
●30分ごとに3分のブレイクを
リスク低減のためには、30分ごとに3分、中断(ブレイク)すること。この3分は強度の高い運動でなく、立つだけでもよいそうです。「強度より頻度」が重要とのこと。
30分に1回ブレイクすると、仕事など集中できないのでは、とも感じますが、実はこちらの方が集中力は高まりますし、仕事終わりの夕方になんとなく感じる倦怠感なども少なくなるそうです。
効率的な時間管理として、25分集中し5分の休憩という「ポモドーロ・テクニック」というものも紹介いただきました(詳細は検索してみてください)。
問題は、どうしたら行動に移せるか、ですね。座り過ぎのリスクの知識を伝える健康教育的な啓発だけでなく、職場などでは、環境整備や会社ぐるみで取り組む包括的な対策が効果的とのことです。
●ガイドラインの改定
また、2020年にはWHOから「身体活動・座位行動指針」が発表され「座位行動」という言葉が指針名にも入り、その重要性が明確になり、内容も座位行動を減らす取り組みの必要性が記されているそうです。
日本でも10年ぶりとなる「身体活動ガイドライン」の改定作業がほぼ終了し、2023年度には発表になるそうです(前回の「健康づくりの身体活動ガイドライン」はこちら)。現在提案されている内容が了承されれば「30分ごとに3分のブレイク」の内容が入るかもとのことでした。
●立つ習慣をアクティブな生活への入り口に
最後に、岡先生から、座っているほうが楽だと思いがちだが、立ってみると腰肩にもよいし、作業も多くは問題なくできる。もちろん立ち続けるのではなく、同じ姿勢を続けないことが大切とのこと(何かにとって良い姿勢は、他には悪い影響があるなど、何が良い姿勢かはわからないそうです)。そして、まず「立つ習慣を身に付けることから始めよう」というメッセージをいただきました。
健康啓発的な視点としては「座り過ぎのリスクを知って、まず30分に1回、立つ習慣をつける」というのは、わかりやすく、取り組みやすく感じます。次なるアクティブな生活への入り口になりそうですね。
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テレビ視聴時間などさまざまなデータから、日本人の約3-4割は8時間以上座っているとのこと。自分を省みても、オンオフともに座位時間は圧倒的に長い。たまに頑張って走ったり、泳いだりしていますが、それではダメみたいですね。明日からは30分タイマーをかけて、立つことから始めたいと思います。
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