国の事業として「高齢者の保健事業と介護予防の一体的実施」のPDCAの仕組みができている。現場はどうなんだろう?
9月14日開催の第15回高齢者の保健事業のあり方検討ワーキンググループの配信を拝見しました。
今回のWGは、ライブ配信ではなく、翌日から議事録作成までの間、下記の厚生労働省公式Youtubeチャンネルで公開しているようです。新しい方法ですね。
https://www.youtube.com/watch?v=8trVByOdV9I
●高齢者の保健事業と介護予防の一体的実施とは
ちなみに、高齢者の保健事業と介護予防の一体的実施(以下、一体的実施)とは、
今回は、高齢者の保健事業と介護予防の一体的実施の現在の進捗と、今後の展開についての報告がメインでした。
事務局から、全都道府県、全広域連合、全市町村対象に行った実施状況調査から抽出された、今までの事業内容による課題とその対応策が提示されました。
●事業の進捗状況と課題、その対応
一体的実施は、令和6年度に全市町村において事業の展開を目指しており、報告では、1,667市町村、全体の約96%の市町村が令和6年度までに実施予定とのこと。
未実施地域は、人口が少ない地域が多く、こうした地域は、医療専門職自体の確保が困難な地域もありますが、医療専門職がいて事業実態もあっても、医療専門職を企画調整担当として配置が難しいという状況もあるようです。
そのため、企画調整担当の配置要件は原則専従としながらも一体的実施関連業務に関与してもよいとのことでした。地域の実情に応じて、ということですね。
他にも、離島や中山間地域など類似する自治体での好事例 (専門団体からの支援、リタイアした保健師への委託など)の情報を共有することも進めているそうです。
●一体的実施計画書・実績報告書の集計ツールの作成
一体的実施を実施している市町村が毎年決められた様式で計画書・報告書を作成していますが、自由記述形式を減らし、選択式や数値入力で報告できるような様式の見直しを実施することとしています。
これにより、広域連合で管内市町村の取り組み状況を数値として可視化、経年変化等を把握しやすくし事業の進捗管理や改善につなげることができます。
●第4期医療費適正化計画に向けた見直し
第4期医療費適正化計画に向けた見直しでは、新しい目標として、
○高齢者の心身機能の低下等に起因した疾病予防・介護予防の推進
○医療・介護の連携を通じた効果的・効率的なサービス提供(例:骨折対策)
が設定されました。
そして、実効性向上のための体制構築のために、保険者・医療関係者との方向性の共有・連携として、保険者協議会の必置化・医療関係者の参画促進、医療費見込みに基づく計画最終年度の国保・後期の保険料の試算などが挙げられています。
また、都道府県の責務や取り得る措置の明確化として、医療費が医療費見込みを著しく上回る場合等の要因分析・要因解消に向けた対応の努力義務化などが記載されました。
構成員からは、「都道府県の責務」と明確にしたことは、非常に大きいという発言がありました。
また高齢者の骨折対策について、早期に治療を開始するための骨粗鬆症健診の受診率の向上、機能予後等を高めるための骨折手術後の早期離床の促進、介護施設等の入所者等を含めた退院後の継続的なフォローアップ、二次性骨折を予防するための体制整備等が記載されていることから、ある構成員から診療報酬の関係もあり、医療側も注目しているので、連携が進みやすのではという話も出ていました。
●第3期データヘルス計画について
令和5年3月に「高齢者保健事業の実施計画(データヘルス計画)策定の手引き」を策定。今回の見直しで、標準化に向けて、総合的な評価指標としての共通評価指標の設定とともに、健康課題解決につながる計画を策定するための考え方のフレームとして、計画様式の提示等を行われました。
※共通評価指標となる「健診受診率」は、特定健診の除外対象者と同一とするなどの統一した算定方法を提示されました。
●令和5年度の実施内容について
○「高齢者の特性を踏まえた保健事業ガイドライン第3 版」作成
○一体的実施・実践支援ツールの再構築に向けての検討
○一体的実施計画書・実績報告書の集約ツールの作成及び研究班による事業評価
が挙げられています。
●高齢者の保健事業と介護予防の一体的実施に係る事例
資料2 高齢者の保健事業と介護予防の一体的実施の推進に係る支援等(P10〜19)により、専門団体による一体的実施の取組として、日本医師会、日本歯科医師会、日本薬剤師会、日本看護協会、日本栄養士会、日本理学療法士協会、日本歯科衛生士会の取組、そして広域連合による市町村支援や広域連合自体の事例が1頁ごとに簡潔にまとめられて掲載されています。
などなど、内容は盛りだくさんでしたが、全体を通して、資料も事務局の説明も完璧。とても順調に進行したWGでした。
もちろん、今後の課題として、市町村レベルでなく生活圏域における実施状況の把握、国保から広域連合に保険者が移行する時の個人番号の変更による連携の不具合などが挙げられていました。
ただ、課題を抽出し、明確にする、そしてその解決策に立案し、評価するといった事業の「進化の仕組み」が出来上がっているという印象を受けました。これがまさに事業のPDCAですね。
また事業の実効性を高めるために、担当者が事業そのものに注力できるように仕組み自体の簡素化デジタル化を進めているなあとも感じました。
こんなに順調に見える事業展開なので、長期的な視点が必要だとは思いますが、高齢者の健康(健康寿命の延伸?)によい効果が出ることを期待してしまいますね。また実際のところどうなのか、企画調整担当や現場で動いている方の生の声も聞いてみたいです。
今後の予定として、
○10月以降有識者及び実務者からなる検討会議にてガイドライン改定案を策定
○3月のあり方検討ワーキンググループで報告の上、年度末公表予定
とのこと。今後の事業の「進化」が楽しみです。
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