死ぬことすら出来ない辛さ 40 〜思い
食事が出来なくなると楽しみは入浴だけとなってしまう。
しかし、食事が出来ない状態での入浴は体力を消費してしまうため控えた方が良いと医師から止められてしまった。
私の楽しみはなくなってしまった。
食事は誤嚥性肺炎のリスクが高い。
飲み込みに問題がなければ食べることは命を繋ぐことだけど、私の場合は命を縮めることになる。
病院でも説明された。
分かっている。
分かっている。
分かっているけど・・・。
・・・私が何をしたって言うのよ。
起き上がっている訳ではないので頬を濡らすことはないが、流れ出る涙をヘルパーさんや訪問看護師に拭いてもらう日が増えた。
10月になっても痰の量は多かった。
しかし、中旬になると痰の量は少なくなり、吸引回数は減少した。
食事は相変わらず禁止されているけれど、入浴は再開しても良いと許可を得た。
また訪問入浴でお湯に浸かれる。
毎日清拭をしてもらっていたけど、湯船の方が断然気持ちいいのは言わなくても分かるでしょう。
訪問入浴サービスに連絡したらすぐに予定を入れてくれた。
普段は文句ばかり言ってるけど、この時だけはありがたやー。
1ヶ月以上ぶりか。
久しぶりに入浴できて喜んでいたのも束の間。
数日後にまた熱を出してしまった。
おかげでまた入浴が中止となり、抗生剤の点滴をやるようになってしまった。
私、生きている意味あるのかな。
口から食べられないし、お風呂も入れない。
夫に迷惑ばかりかけている。
やることがないからマイナスなことばかり考えてしまう。
食べていないのにまた誤嚥性肺炎。
ここまで頑張って生きてきたけど・・・
もういいか
・・・死にたい。
楽になりたい。
生きているのが辛い。
本当に辛い。
死にたい。
死んで楽になりたい。
死にたいと思っても私には何も出来ない。
首を吊ることも、身を投げることも、刺したり切ったり、ガスや薬も何もかも。
自殺できない。
自分で死ぬことが出来るって良いね。
自分で死ぬことすらできない。
辛い。
夜、夫とリビングでの団欒
のはすが楽しく会話ができる訳がない。
「 喋らないけどどうしたの? 」
夫は何かを察したのか声をかけてきた。
「 あのね。もう辛くて死にたいの 」
夫は自分で決めたのならそれで良いと優しく言ってくれた。
嬉しいのか悲しいのか、どちらの気持ちが優勢だかはわからないけど涙が出る。
やっと解放されるんだ。
死んでも良いと言われたけど、自分で命を断つことができないので往診に来た医者に殺してほしいとお願いした。
「 僕、逮捕されちゃうよ。ここ日本だから無理だよ 」
笑って返されてしまった。
死にたいと思いながらも生かされている日々は地獄としか思えない。
痰が多いから頻回に吸引をしてくれる。
痰で窒息死を考えたけど、苦しいから安楽死が良い。
医者に無理だと言われたけど楽になりたい気持ちは変わらなかった。
訪問看護師にもヘルパーさんにも死にたいと伝えたけど、死ねるようなことは何もしてもらえなかった。
そうこうしているうちに熱が下がり抗生剤が終了となった。
抗生剤が終了となったが、私の人生は終了にはなっていなかった。
死にたいと伝えた夫が「 やっぱり生きてほしい 」と言ってきた。
夫に生きてほしいと言われたらまだ死ぬ訳にはいかない。
楽しいことはなく辛く苦しいことばかりかもしれないけど、夫のために生きようと決心した。