死ぬことすらできない辛さ 10 〜意識不明〜

食べることを楽しむ私は入退院を繰り返した。繰り返しながらも、それはそれで割り切って生活していた。

きちんと食べていたし、水分補給もきちんとしていた

それなのに、脱水症で入院することになった。

暑い日が続いたと思うでしょ?

違うの。冬なの。


入院する所までは覚えている。
でも、それからの記憶が全くない。


夫や医者、看護師さん達の話によると、どうやら10日間意識不明の状態だったらしい。

意識が無かった時に点滴だけでは効果的な栄養補給は難しいため、中心静脈栄養とやらをやることになった。

毎回医者が針を刺すのは大変なため、看護師でも針の差し替えができるポートを造設した。

右鎖骨の下にある血管に繋げた針刺場が皮膚の下( 身体の中 )に埋め込まれた。

そこに針を刺して高カロリーの点滴を流す。

高カロリーだけあって1000mlで1000kcalはある。

意識不明で食べられない私にとってありがたい処置だ。


処置が功を奏したのだろう。
無事に意識が戻り、意識不明だったことや高カロリーの点滴をするためにポートを造設したことを聞かされた。

なんだか良く分からないが、意識不明のままでも良かったのかと思う日々が続いた。

10日間も何も食べたり飲んだりしなかったのだから、飲み込む力が更に弱くなってしまった。

これでは退院してからご飯が食べられない。

入院中に出来ることはと考え、医者に相談して言語聴覚士による嚥下訓練をお願いすることにした。

とろみをつけた水を飲んだり、ゼリーを食べたり、棒付きの飴を舐めたりした。

首が安定しないため食べる姿勢も教わった。

お楽しみ程度で少しでも食べられるようになれば良いと医者に言われていたけど、とろみをつけた紅茶やジュースなどを100ml程度まで飲めるまで回復した。

飲み込むまでに物凄く時間がかかるけど、やることがない私には時間がかかろうがどうと言うことはない。
介助する人は可哀想だけど仕方ない。

頑張れ夫!


入院生活も1か月すると飽きてくる。

飽きてくると思うのは元気になった証拠だと思う。

冷たい看護師には相変わらず「 患者はあなただけじゃない 」と言われているため、早く実家に帰りたい。

退院はまだかと医師や看護師、夫に毎日聞くが明確にいつとは答えてもらえない。

点滴が必須のため点滴の処方や状態観察、点滴の交換をしてくれる所を見つけてからと言われる。

また、誤嚥性肺炎を起こしやすいため定期的な吸引も必要と。

看護師さんがちょくちょく訪室しなくても大丈夫なように持続吸引を行っている。

先端がかたつむりの殻のようにぐるぐるになっているチューブを咥え、口の中に溜まった唾液を吸引する。

持続吸引は吸引力が弱いためサラサラの唾液は吸えるけど、粘り気のある痰は吸えないため普通の吸引が必要。
強さが1〜4まであるけど、毎回自分で調整出来ないし、強いと口の中が乾燥するだけでなく、潰瘍が出来て痛くなるから1〜2にしている。

家で夜間帯に対応出来るのは夫しかいないため、夫が看護師さんに吸引の手技を学んだ。
しかし、看護師さんの様に喉の奥までチューブを入れるのは危険なため喉の手間までの吸引が出来る様になった。

吸引は家族や資格を持ったヘルパーならやっても大丈夫らしい。

しかし、点滴はそうはいかない。

メインの点滴を朝交換し、更に痛み止めと胃薬を朝と夕に注入してくれる人が必要。

ヘルパーさんは医療行為は無理。

では誰か?


はい。看護師ですね。
訪問看護で点滴と吸引をやってもらえばいい。
訪問看護事業所はあちこちにあるのですぐに見つかるだろう。

ヘルパーさんを紹介してくれた在宅の相談員さんに事情を説明して探してもらうことにした。

もちろん病院の相談員さんにも在宅で診てくれる医師や看護師を見つけてもらっている。




まだ第1話を読んでない方はこちら。

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