きたいえみさん【04.情熱をくれた存在】
きたい:
あ、でもこんなこと言ったらマスターは嫌がるけど。(笑)
そんな影響を与えたいとか、そういう人ではないから。
淡々とされてて。
・・・今は、”農園から直接買い付けをする”、”コーヒーの生豆を輸入する”っていうことが、少し広まった時代ですけど。
10年前とかって、そういう事は、まだまだそういう事がオープンな世界ではなかったんですね。
今もそうですけど、”商社さんがいて・そこから買い付ける”っていうのが一般的。
そんな中で、マスターは
北海道から九州までの、全国の小さい自家焙煎のお店で集まって、
”農園から直接買い付けをする”っていう事をされている、グループのお一人だったんですね。
あとは”カップ・オブ・エクセレンス(Cup of Excellence)”っていう(コーヒーの)国際品評会の、審査員。
日本人の審査員は当時少なかったんですけど、そのお一人で。
”スペシャルティコーヒー”という分野の中で、もう本当に、日本の第一線で活躍されていた方なんです。
その方が偶然地元にいて、私がおいしいと思ったコーヒーが、その人のコーヒーで、
それをずっと間近で、小さいお店だったので常に2人で、
色々な話を聞けて。
マスターからそういう昔の話、ダイレクトトレード(直接買い付け)を始めた頃の話とか、
ご苦労されてきた話か、想いとか、農園さんとの絆の積み重ねの話とか。
・・・まだ、もっともっと農園さんが貧しい時代から、お付き合いをずっと続けてこられて。
農園に学校を作ったり。
こみち:
誰が学校を作ったんですか?
きたい:
グループで。売り上げから寄付をして、学校を作られました。
そういう、絆づくりを長くされてるんです。
こみち:
す、素敵すぎる。
きたい:
で、小さいお店だったので、私は直接聞けたんですよね。
大きい会社の中のトップとかだったら、ご苦労した頃の話とか、そんな細かい事聞けなかったと思うんですけど、
常に昔の話を聞けて。
その時のコーヒーの見方、テイスティングの仕方を直接学べたんですよ。
そこで、もう、大部分。
私の情熱の大部分が、作られた。
こみち:
そういう、情熱の部分をすごく聞きたかったんです。
えみさんの仕事って、自分一人で色んなところに行って、やり続けていくのって、
絶対なにか、信念というか、エネルギー源がないと続けられないから。
それって何なんだろうと思って。
そこを知ったら、なんかすごく楽しい気がするんですよね。
きたい:
繋いでいきたい。
マスターは、もう閉店されてしまったんですけど、豆屋さんを。
こみち:
あ、そうなんですか。
きたい:
私コーヒー屋ポンポンのあとに、同じ買い付けグループの、あだち珈琲に入社してるんですよ。
だから、マスターとか(あだち珈琲の)社長が、ずっと続けてきたものを、"繋いでいく人"になりたい。
そのお話しを直接聞いた上で、繋いでいく人。
まあ、あちらはね、そんな繋いでほしい、なんて思ってるか分からないけども。(笑)
私が個人的に、繋いでいきたい。
その時代を知らない最先端のバリスタ、若い人にできる事もあれば、
ちょっと前からやってるバリスタだからこそ、知ってる事とか、繋いでいける事があると思ってるので、
自分の体力・情熱が続く限りは、しっかり繋いでいきたい。
もう、それが恩返しだと思ってるけど。
まあ、あちらは恩を返してほしいとは思ってないと思うけど(笑)、
私は恩を返したい。
こみち:
そういう、わくわくをくれた、じゃないですけど。
情熱をくれた、(恩返し)みたいな。
きたい:
そうですね。情熱をくれて。
今の、素晴らしいコーヒーの礎を築いた人達。
なかなか表には出てこない人達なので。
勿論コーヒー詳しい方はご存じだけど、そんなにスポットライトが当たる様な、一般的な人が誰でも知ってる有名人、ではないじゃないですか。
バリスタの方でも、全然知らない人もいると思うけど・・・。
そういう、礎を築いた人達のお陰で、今の美味しいコーヒーがあるから、
そこにも私は感謝をしているし、
まあ自分自身がこういう出会いや学びをもらった事への感謝もあるし。
今飲めているコーヒーの、素晴らしいものを、本当にご苦労されて・・・ほんとにほんとにご苦労されて、繋がれてきたので。
なんか、微力ながら・・・私はそんな、微力でいいんですけど。
伝えていきたい。
素晴らしい人達がいたことを。
こみち:
・・・予想以上に、感動的なお話でした。
きたい:
(笑)
こみち:
感謝。そういう、感謝の心から、そのエネルギー源があるんですね。