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【メモれ! メモリーズ】フィレンツェへの道 〜 後編


前回は私とスイス人のOh!クラウディアが彼女のうち、チューリヒを出発し、イタリア、ヴェネツィアを訪ねたお話をしました。

ヴェネツィアの後は、また列車に乗り、アドリア海沿岸の街ラヴェンナへ。

ただその前にどうしても腑に落ちない疑問がひとつ。
ヴェネツィア〜ラヴェンナ間の列車での移動には、ボローニャ、またはフェラーラでの乗り換えが必要。あんなにいい加減な性格が全面に押し出されているイタリア人ではありますが、こと列車に関しては、カーブも許さない直球型。悶絶のくねり隊も禁欲状態のカトリック国。キチンと乗換駅で列車を変えないと、目的地には着けない法則。同盟国ドイツから学んだ律儀さのよう。

では私はボローニャに降り立ったのか? 本当はロミオとジュリエットのお家を見たかったけれど、クラウディアに、
「目的はそれだけ!?」
と呆れられ、却下したはず。ジュリエットのお家に行った記憶もナシ。
ではフェラーラか。フェラーリは好きだけどこの街は更に何も見るものナシ。
そう言えば舌を噛みそうでよく言えないけど、フェラ、フェラ、フェラーラとフィレンツェにそっくりな名前の街で、ファエンツァってのがあった!
早口言葉かっ!
フェラーラとラヴェンナのちょうど中間で、名前から連想できる通り(?)中世からの陶器の大産地。
(ファエンツァ→ファイアンスですよー)
そしてイタリア最大級の陶器コレクションを有する「国際陶器博物館」有り!
いや〜ん、すっきり♥

コレだわ。この頃陶器にもよじれてたんだった。
このファエンツァはルネサンス期に技術の発展をした、マジョルカ焼きが有名。

色彩豊かに、伝説や歴史上の話を描くのが特徴で、錫成分の釉薬を使用。
下に有る "SPQR" は、古代ローマ帝国傘下の物であるというサインで、現在でもローマのマンホール等に刻みつけられております。(Senatus Populusque Romanus)
ウイスキーに付ける"VSOP" なんかと同じようなニュアンス。(Very Sperior Old Pale)
なお、もうひとつ "TSOP" とくればデスコのフィリーサウンド、ソウル・トレインですな。(The Sound Of Philadelphia)

と、胸焼けする程の数のマジョルカ焼きを見たあとは、そのままラヴェンナへGO。
ここもラヴェンダーやヴェランダーと間違えそうな名前なんですが、何故ラヴェンナへ立ち寄ろうという気になったのでしょ〜か。

はっきり言って、他の街に比べひなびた田舎町っぽくてぱっとしないんですが、実はここは世界遺産の宝庫なのです!

古代ローマから中世初頭かけ、地中海のハーブと中東のスパイスの仲介貿易で栄えたこの街の世界遺産とは!

キラキラ✨モザイク画!
きゃうん♥モザイクにもよじれ隊〜。
だけどここでは、黒っぽく隠す方でなくて、キラキラ魅せる方ですよ。
見習わなくちゃ、1500年経ってもこの輝き。(たぶん修復してますって) しかもヴェネツィアからのガラスを惜しげもなく砕きながらはめ込み。
これも絵巻物の様に面白エピソード満載で、床に寝っ転がって眺めていたい天井。

しかもこの街には計8ヶ所の世界遺産があり、うち7ヶ所がモザイク。まさにモザイクのメッカ!

そんな素敵な街で私がモザイクでよじれまくっている間(文章だけ見るとちょっと)、何をしていたの? Oh!クラウディア。
「興味ないから外でぷらぷらしてるわ。お昼寝してもいっか〜。」
って訳で別行動。
夜ホテルへ行くと(ここは、ユースホステルが無い)、な〜んか昼間変なモンでも吸っちゃったのかな〜、と思う程のはしゃぎっぷり。
ベッドの上で、トランポリン!?
「こんなふかっふかのベッド、久しぶり〜。」
ん、やっぱハイジと一緒だ。

そして次の日🐓
さ〜て、いよいよフィレンツェへ乗り込むぜい💪
再び、疎開にでも行くような列車でフィレンツェへ。お客誰もいないし。
「い〜じゃん、ゆっくり寝て行こう!」
そうだね、フィレンツェまた楽しそうだし。
揺れること数時間。お日様も暑くなってきた。
なんかスゴい山の中に入って来たぞ。上ってる感してる。そうか、山越えしてから街へ参入って訳ね。守りの固い街の常識。
ウトウトしていると列車は随分長い停車時間。
そのうち再び走り出す。なんだかめっちゃ眠いな。でもさ、なんかさ、変じゃな〜い? いやなんか後ろに戻ってるっぽいんだよね〜。こんなとこでスイッチバック?
窓から外を見ると、さっき横目に見ていた山肌現る。
「ね、これ、戻ってない!?」
「いや〜ん、戻っちゃってる〜。」
これはなんと! スイッチバック疑惑。
しょうがないから次で降りよう。
割とすぐに着いたので、今度はさっと降りる。
疑惑だったのか、いやしかし。
そこへ駅員さんがやって来て、何やらベラベーラ言っている。でもイタリア語わからん🤨
「こんな歯抜けジジイじゃ話にならないわ、他に誰かいないの?」
そこへ現れる若いお兄ちゃん。
ノー、イタリアーノ🙊ポコ・エスパニョール。
「スペイン語わかるんでしょ?」
いや、そう言われても私だってポキート。私の知ってるスペイン語はバル用語でビールが頼めるぐらいよ。しかもイタリア人のスペイン語!?
「何だって!?」
...いや、まったくわからんね。
えー、だってここってどこよ、いったいー、どーすりゃいーのよ、いつまで待つのよ。
Oh!クラウディア、落ち着いてよ。
きっとここ、そ~簡単に他の来ないからじっくり聞こう。

何とか得た、たった僅かな情報。
ここは、エライ山の中で何もなく、次の列車は4時間待たないといけないけれど、フィレンツェはもうすぐだ、ということぐらい。


「わかった。こんな所で4時間も待っていられない。👍するしかないっしょ。」
え、何ソレ。
ヒ、ヒッチハイク! マジでーー!?

いや、クラウディア、アンタ、キレイよ。脚もすらーっと長くて美脚だし、顔も小さくて小鹿ちゃんみたいよ。
だけど、今どきヒッチハイクなんかして停まってくれる車なんてあるわけな...

停まったーー😆!!

アンタ、勝利の口笛で私のこと呼びつける!
イタリア男! やってくれんなー。
しかも英語喋ってる。珍し〜。
アンナ曰く、イタリア人はみ〜んなフランス語わかるから大丈夫、って大ウソ。

「アロ〜ラ、ラガッツィ、フィレンツェ中心までは行かないけど、歩ける所で降ろすよ〜ん。」
ひー、そーでっかー。そんな簡単に上手くいくんやね。
アンタが大将😑スゴい役に立つ友を持ったわ。
しかもここまでの珍道中暴露中。

ただし、夕方の街はお祭り騒ぎにごった返し、人がわんさか、大渋滞。どうしたっていうの?
「今日から復活祭の休みだからね〜。」
げっ! そいつは迂闊だった。
ここはイターリア。めっちゃくちゃ敬虔なカトリック国。それにあちこちから私達みたいなのが集まって来ているこの時季。

もちろん泊まるとこなんか決まってなくて、ユースホステルも、街中のホテルも、み〜んな満室。
仕方なく駅の観光案内所で、どっこでもいいから「今夜寝られる所、よろしく。」
で教えてくれたのが、二駅先のステーションホテル。

きゃー!!また戻るのー...

駅員のおじさんがベラベーラと言っていたことの解説。(=約四半世紀後の考察)

「ラヴェンナ〜フィレンツェ間の列車は、途中ボルゴ・サン・ロレンツォで分岐するんだなー。この列車はその先まで行かず、折返し運転をするんで、そこで別のフィレンツェ行きに乗り換えにゃならん、ってーことだわな。」

ここで立証、前述の"キチンと乗換駅で列車を変えないと、目的地には着けない法則"。

ですよな!
今になってわかる辿ったルート。

そんなこんなでねぇ、とても大変な思いをしてフィレンツェに着いたんですが、実は、この観光地を観光した覚えが全く無い...
とにかく人がいっぱいだった、ということしか覚えておりません。今では考えられませんが。

しかも先に帰ったはずのアンナとは連絡が取れず、会えず終い😢
踏んだり蹴ったりなフィレンツェの夜。



〈エピローグ〉

やや意気消沈した私とOh!クラウディア。
そろそろ帰るか。大人しく、また列車で。
フィレンツェからずーっと北上すれば再びチューリヒ。乗ってれば着くから大丈夫。
そう、国際列車の"ウイリアム・テル特急"にでも乗っていれば。問題なく国境を超え、夢の中に居る間に到着出来る。

しかーし! 私達が乗ったのは、そんなことは許されないただの地方列車!
何が違うんでしょ〜か!?
基本、国際列車はその国の最終駅で運転手が変わるんです。国鉄職員が隣国へ入ることは難しいのでここで運転手の交代が行われ、列車は走行を続けるのです。ただし昼間であれば。
私達が国境に到着したのは既に真夜中。
これ以上列車は前進しないのかっ!?

「始発は4h55ですよ。」
またやられたっ!
終電に乗って国境まで来ちまった、ってこと。
どーしよーもないよね。
周りは再び「注文の多い料理店」でもありそうな、ということは何もない深い山の中。
そうだ、日本にコレクトコールかけちゃお。

今ね、イタリア国境の駅、列車降ろされちゃったの。
星がキラキラきれいだよー✨



そうそう、蘇る思い出。
この待合室で寝ながら始発を待ったのでした。
名も無き山合いの駅で。






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