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【歌謡ノベルズ】スローなブギにしてくれ








ウォンチュー💋
俺の肩を抱きしめてくれ。
キラキラしてた夏の陽差しが弱まってきて、少しずつ夜が長くなってきたこの頃は特に、抱きしめて欲しーいよな。オレの得意な時間帯だ、空がピンクとパープルのグラデーションに包まれる頃。あの色を見ると、無性にキメの細かい背中にかじりつきたくなるんだ。
頬寄せ合ってスローなブギ踊りながら、長く伸ばした爪が肩に食い込むぐらいキツく抱きしめてくんのが、クセだったよな。そんでよく見るとやっぱりくちびる噛んでるだろ。それもクセなんだよ。
それからさ、長い影をつくる夕方の太陽が、向こう側に沈んでいくのと同じ頃にベランダへ出て、こないだ買って忘れてた、結構イイものボルドーを、惜しげもなく出すみたいに、大きく両足開いて待っててくれんだろ。
そしたら、待ってました、とばかりに汗臭いのもホモサピエンスなら当たり前、人参ぶら下げられた種馬みたいにギンギンよ。朝の弱い低血圧女にはそのぐらいがちょーどいーのさ。半分寝てるぐらいでこっちはゲッチュー💋これなら朝メシ前。

でもなんだかあの頃は、生き急いだ男の夢を哀れんでよく泣いてくれたよな。
「どーしたんだよ、ベイベー」
なんて、赤いホンダのCB250あたり、バリバリ言わせながら近づくと、
「アタシ、乗っけてかないなら二度とおパンツ脱いでやんないよ。」
って、それも困るしな。
渋々乗っけてやると、何だ、最初っから履いてないんじゃねーかっ。ピンクのギンガムチェックでできた映画の『グリース』に出てきそうな、肩紐で吊ったバルーンかと思わせるふわっとしたフィフティーズドレスの下は、既に! 空っぽなんだぜ。ツイストでよじれちゃったら見えちゃったりするかも? とかマジで心配してみたんだけど、本人全くお構いナシよ。外見と中身はわかんねー。一皮剥いてみないとな、まあバナナと同じか。
そのままバリバリ夕暮れのトンネルの中へ駆け抜けてくんだよな。

ウォンチュー💋
焦らずに知り合いたいね。
思わず顎が外れちまうぐらいのい〜娘でさ、とろっとバニラみたいだけど、カラっとした濃いめのジンが滴ってきそうな舌じゅるモンで。キモチよくてもぜんっぜん恥ずかしがらないで、本能の赴くままにキモチよいのを享受してくれてるみたいなところがまたい〜んだなー。一応隠れて服は脱いで来るけど、すとんとオレの横へ滑り込んで来て、長い手足伸ばしてまとわりつくのさ。
もう、あっちこっちチューチュー💋ウォンチュー💋したくてたまらん! 
そうなっちゃうくらい気持ち良さそうな腕の上げ方だなんだよな。
「キミが眠りにつくまで添い寝してあげるよ。」
なんて言うと、なんだか安心したような顔しちゃってさ、真似するんだよ。
「みゃーお。」
って猫が泣いてるみたいにな。

だけど一応は気取ってさ、薄暗い海辺のレストランでマッチひとつ摺って、ぼうっと照らしてみるとさ、めちゃくちゃ艶かしいの。
ねぇ、顔をよく見せてくれよ。細く尖ったちっちゃな顎つまみながら、このほっぺたにもウォンチュー💋したいんだよなぁ、とか眺めまわして。自分でも気づいてないような、情が深く見える小さな泣きボクロと、閉じてても色っぽさばっかり気になって、ついつい目が釘付けの口元のホクロとが、年に似合わず色っぽくて。思わず妄想超特急のトンネル入口間際。
気が付かないうちに手が入っていっちゃいそうな黒いミニのドレス。テーブルの下で、何気なく組んだ美脚。その下から見えてる白い足の先から徐々に上に向かって手をさすりあげちゃったりして。もうちょーっとさすりあげたら、イタズラにビ・ン・カ・ンなトコにまで指這わしちゃったりして。外だしな、驚いてびっくりするのかと思ったら、
「あっは〜ん♥」
なんてこっちがびっくりするぐらいに反応良かったりして。周りに気づかれなかったかどうか気になってキョロキョロしちゃうよな。
そこで昨夜のこと思い出しながら、妙〜に下半身にさ、ズンっときちゃうんだよな。

日が翳ってきて、ちょっと寒くなったらしいつるつるした細い肩が、ちょっとだけピントの合わなくなってきたオレの目の先にチラチラ。今度は飲み慣れないしっかりめのボルドーまとったくちびるペロペロ。
「アンタの顔見てたら欲しくなっちゃったんだよ。」
ってこっちに見せた手の平口に当てて、泣きっ面でおっきな前歯見せながら、長めの中指かじるんだよ。指の一番太い所からカジカジしてさ、痛くないのかよ、甘噛みだろやっぱり。と思うと半分反り返ったくちびるで途中ぱっくり挟み込んでくれんだよ。でおいおい、はっきりしてるんだな。そんなの背後が海の、テラスの白いテーブルに肘つきながら、ゆっくりまばたきしながらやられてみろっ! 間違いなくこりゃ人魚が来て、後ろの海の闇へ引き込まれちまうんじゃねーかと思っちまう程だぜ。
だけどコレがね、モー、悶絶モノ。なんか、こー、アツくなっちゃうんだよなー。わかる? こんなの見せつけられたんじゃあ、今日はこっちの方が下唇噛み締めて、脇からヨダレ垂らしちまうぜ。

まあ、人生はゲームさ。
あの娘には俺が一番だ、なんて思ってたけど、結構簡単にさらわれちまったんだよな、ムスタングで来た白いヨレヨレの麻スーツ着たジジイなんかにさ。あーゆーのって普段家の中じゃ、薄ぎたねー赤いバスローブに黒い薄手のくつ下なんか履いて気取ってんだ。こっちだって、革ジャンにリーゼントじゃあ今更流行らねー。在り金全部カスタムバイクに使ってりゃあな。だからって、ワルだとは限らねーだろ。コレでも硬派で真面目に働いてんだ。
アンタ、アイツの何なのさ、ぐらいのセリフは言えるんだぜ。
誰も自分を愛しているだけの一人芝居。あの娘がワルが好きだって言うからさ。だけどちょっと取り違えてないか? 意味を。まあ、どっちにしたって悲しいゲームさ。勝っても負けても恨みっこナシ。


ウォンチュー💋
ロッカーバラードってんだよな、このリズム。え!? 違うの? あー、これがスローなブギか。
ちと弱いところ見せちまったね。ま、どっちでもいいだろ。とにかくキモチよくなってんだから。今日は? 何飲んでんの? へー、シンプルにジンか。昨日は忘れたみたいだけど、今日はちゃんとあるよ、ライム。

これをさ、握力あるとこ見せつけるみたいに、手で絞るんだろ? そうすっと腕にすっと筋肉質な線が入って、それをまたあの娘が遠目で見ててさ、下唇の端かじってんだよ。これは結構わかりやすいサインだからね。ほらほら、欲情してるんだろ。
バイクのブレーキかける時だっておんなじさ。結構な力で握るとさ、これも腕にすっと線が入るだろ。その線が見たいばっかりに、でっかい鏡の前でスローなブギにしてくれ、なんてつぶやきながら、
「キツく抱いてくれなきゃダメ。」
って、くすぐったいのに背中に指で字書くんだよ。"L・O・V・E♥" とか、ってよ。
オレはそのままあの娘がしたいようにさせとくさ。まあ、これも強いジンのせいさ。

聞いたんだよ。
「好きな下着の色は何色?」
ってさ。そしたら、赤でもなく、白でもなく、黒でもなく、
「蛍光黄緑」
って答えてたなぁ、あの娘。ありゃあ前世はホタルだったんじゃあなかろうか。
あ、オレ、結構ジンがまわってきちゃったみたいだな。お前が欲しい。

おっと、またまた、妄想超特急がお出ましだ。
も一回イイかな。
気が付かないうちに手が入っていっちゃいそうな黒いミニのドレス。そこに何気なく組んだ美脚。その下から見えてる白い足の先から徐々に上に向かって手をさすりあげちゃったりするんだったよな。
今度はさ、くーーー、もうちょっとだけ、もチョットだけさすりあげたら、その蛍光黄緑のおパンツにこの指引っ掛けて、大っきな釣り針で釣り上げた大モノ見せつけるみたいに、ズルっと大モノ、ズリ下げちゃいたいよなー。そしたらさ、その後はきゅっと締まった両方の足首を両手で掴む! そんでじりじりとあの娘の踵を、半分見えてるピンクの桃と引き合わせる! そこまでできたら獲物はすぐ目の前だぜ。三角に折り曲げた膝をぐいっと観音開きして拝んだら、そのまま長い美脚をオレの腰へ巻きつかせて、いつものようにズドンと射抜く!
これでまたもやオレのゲッチュー💋。
んー、ウォンチュー💋。

人生はゲームだ。だけど蛍光黄緑と言えば、ちょっと前に出たランボルギーニのアヴェンタドールと同じ色!? それじゃあエンジン全開で血圧上がって、体温上昇、爆発寸前、朝からギンギンにされちゃって、このままじゃどーすんのっ!
あの憧れのシザーズドアが空へ向かって開いていくように、あの娘の両脚も開いて欲しい! 
そんなピンとは上がんない!?
それがダメならガルウィングでも! 
それじゃあ、デロリアンで、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』かっ!?
モー、夢の中では眠らせないぜっ。こうやってお互いの傷を慰め合えればな、答えはいらないのさ。

んー、ウォンチュー💋
愛ウォンチュー💋
取り込みチュー💋

もっともっとオレの肩を抱きしめてくれ。
このままぐいぐいキミを貫けるように、もう今はエンドレス。
理由なんかないさ。

ただ、お前が欲しい。
ただ、ただお前が欲しい。

んー、ウォンチュー💋











映画『スローなブギにしてくれ』1981年 藤田敏八監督



映画『グリース』1978年

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