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自分のもとから去った奴、追うべからずは正義【元彼話・完】

やっとこさ、留学の諸々の手続きがほぼ終わった。

学校への費用の支払いも完了し、ビザもオンライン申請→東京まで生体登録を完了させ、あとはビザが無事に届くのを待ちつつ、航空券を買うだけだ。

ワーホリに行きたい欲をコロナで見事に打ち砕かれ、そうしているうちに30歳を超え、もういいやーーと諦めていた私を「やっぱり留学行きたいな」と思わせてくれたのは、紛れもなく元彼である。しかも付き合っていたときではなく、破局後3年弱が経過して再会したときである。

「行きたいってずっと言うてたやん。英会話のレッスンも受けてたやん。やりたいことは後悔せんようにやった方がいいし、絶対行った方がいいよ」

「振ったくせに、うっせーなコイツ」と思った私は、その場では受け流したものの、元彼の言葉が頭から離れず、2週間ほど自分のなかでじっくり考えた。そして出た結論が「ワーホリは無理だけど、学生ビザで普通に留学すればいいやん」だった。そして今に至る。

元彼と会ったのはその日が最後で、以降たまに電話がかかってきて話すことはあったが、ある時からパタッとそれもなくなった。未練はなかったし執着もしていなかったつもりだが「やっぱり留学をする」という、私の人生において割と大きな決断の後押しをしてくれた元彼を、私は恩人のように思っていた。そしてその思いが肥大して「なんだかんだ、お互いなくてはならない存在なのかもしれない」とまで思い始めていた。

私に大きな決断をさせてくれるきっかけとなった元彼。留学がちゃんと確定した今、報告しなければ……!
そう思った私は、8ヶ月ぶりに電話をかけてみた。

出てくれるだろうか……と少しソワソワしつつ、久しぶりだから若干緊張しながら呼び出し音を聞いていたが、5コール目くらいで「はい」と声が聞こえた。懐かしい声だ。

「あ、もしもし、私」
「…………」
「え、もしもし?」
「はい」
「あの……覚えてる?」
「……はい」

嫌な予感がした。いや、嫌な予感というより、すごく自分が空気を読めていないような気がした。

「だれ?」

やっぱりーーーーーーーーーー!!!!!!

少し遠くから聞こえたのは、女性の声だった。たぶん、というか、確実に、元彼の今カノだ。

やっちまった……。元彼に今カノがいて、しかも私が電話をかけたちょうどそのとき、2人が一緒にいる可能性を想定していなかった……。幸せな2人きりの時間をぶち壊してしまった私、めちゃくちゃ邪魔オブ邪魔。しかも元カノ。もし自分が彼氏と2人きりでいるときに、元カノから電話がかかってきたら……最悪すぎる。worstよりもう一段階最上級を作ってほしいくらい、worstすぎる。全力土下座して消えたい。そして「なんだかんだ私と元彼はお互いになくてはならない存在だよネ☆」と思っていた数分前までの自分、殴りたい。

まじごめん……という気持ちは持ちつつも、かけてしまったものは仕方ないし、元彼も電話に出てしまったものだから仕方ない。「手短に話します」と宣言し、留学決まったよ、前会ったときに言ってくれた言葉がきっかけだよ、だからありがとう」と伝えた。元彼は「そっかー、よかった」と言ってくれたが、そりゃそう言うしかないよな。まじごめん。

あまりにも私がごめんを連発するから「なんでそんなに謝るの?」と聞かれた。「いや、だって彼女とおるやろ?」と聞くと「まぁ……うん、そうね」と言われた。「彼女だろうな」が「彼女」と確定した瞬間、またダメージが大きくなった。ああ、なんで自分で傷えぐってんだ、私。聞かなくてもわかってたじゃないか。なんで聞いたんだよ、頭悪いな。

元彼に対する好意や熱量は、付き合っていたときや再会したときに比べて下がってはいたと思う。でも「皆無」ではなかった。別れてから連絡がきたときや、電話がかかってきて付き合っていたときみたいに長電話したとき、心のどこかで「やっぱり安心するな」とか、少なからず好意は抱いていた。

でもきっと、言い方は悪いが元彼にとって私は「暇つぶし」程度でしかなかったのだと思う。だって実際、ヨリを戻すことはなかったし、私がそういう話を切り出しても、のらりくらりと躱されていた。冷静になれば、客観視すれば簡単にわかりそうなもんだが、当事者になると途端にわからなくなる。「もしかして」の可能性を、捨てきれなくなる。

元彼と別れて4年、決して出会いがなかったわけではなかった。いろんな人とデートしたし、付き合う直前までいった人もいた。でも、いくら10㎏痩せて、メイクも変えて、自分磨きをしたところで、私の心のなかから元彼が完全にいなくなることはなかった気がする。元彼と新しい人たちを比べることはなかったが、元彼が心の片隅にずっといたから、私は新しく前に進めなかったのだと思う。「『復縁したい』の大半は執着」とよく聞くが、私はそうじゃないと思っていた。でも、元彼に彼女ができて目が覚めた今は思う。私は元彼に、執着していただけだったのだと。

電話を切った直後、そのダメージやら恥ずかしさやらから、クッションに顔を埋めて発狂した。何を自惚れていたんだ、もう私たちは4年前に終わっているんだ、実際復縁話も躱されていたじゃないか、冷静に考えたらわかるじゃないか、私、脳内お花畑すぎるだろ!!!!!! ……という思いを「ああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!」に込めてクッションにぶちまけた。そして残ったダメージと恥ずかしさは時間に解決してもらうことにした。そう、これは8月上旬の話で、現在9月末である。未練と執着がダラダラだった私は、結局この元彼話を自分のなかで消化させるのに1ヶ月半ほどかかっているのだ。そして、その最終消化がこの記事、というわけである。

「来るもの拒まず、去る者追わず」という言葉がある。

「来るもの拒まず」には正直同意しかねるのだが、「去る者追わず」には全私が前のめりで大賛成である。
自分のもとを去る人というのは、基本的に私のことを嫌いだったり鬱陶しかったりで「合わないな」と思っている人が100%だ。極端な話、私のことを「価値ナシ!」と思っている人を追いかけたところで「価値ナシ!」と言われてしまう、もしくは扱いを受けてしまう確率100%なのである。絶対傷つくし、嫌な気分になるし、なのにわざわざ追いかける意味って何? 誰得? 精神衛生マイナスしかなくない??? なのである。恋愛だけじゃなくて、友人関係や職場の人間関係についてもそうだと思う。わざわざ自分からメンタル崩壊してもらいに突撃するって、狂気の沙汰でしかない。やめた方がいい。

それでも恋愛となると、その狂気の沙汰に走ってしまう人が多くなってしまうのはなんでなんだろうな、私含めて。うまくいかなかったから別れてんのにな。実際に復縁している人たちもいるから一概には言えないけども、やり直したところでうまくいく確率めっちゃ低いのにな。「良いことないよ」って先人たちが言ってるのにな。知らんけど。

ダメージは受けたが、元彼にシン・彼女ができた以上、さすがに執着したところで無駄だと思い知らされた(やっと)。おかげで吹っ切れた(やっと)。元彼に対しては「楽しい思い出と、留学に行く後押しをしてくれてありがとう」と思うだけだ。

これにて、ダラダラと書き綴っていた元彼話、完!!!!
留学して、仕事ゴリゴリ頑張って、私もシン・彼氏をゲットするぜ!


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