好きな曲をアラームにして一緒に目覚めたい
『明け方の若者たち』を鑑賞した。
こういう、いわば青春映画というのは、
期待値が上がりすぎて、見終わったあとに正直がっかりすることがあるから、感情の波立ちを期待せずに見始めた。
しかし、ものの開始10分ほどで感情が波立たずにはいられなくなる。
公園で飲み直そうよ、
あのアーティストのアルバム何枚目がいい、
次はこの演劇を観に行きたい、
などなど、求めまくっていたエモいシチュエーションすべてが詰まっているではないか。
えぇ、こんな懐かしさとエモさで溢れてるなんて聞いていない。
エモさの感じ方はそれぞれあるにせよ、
通ずるひととは激しく共感したいと思う。
黒島結菜(彼女)のさっぱりした性格とサブカル男子が大好きであろう服装が最高だし、
メンヘラで不器用だけど真っ直ぐな北村匠海(僕)に母性本能をくすぐられる。
友人のなおとも、最後までキーパーソンでいいバランスを保っている。
途中、個人的に大好きな曲で彼女と僕が目覚めるシーンがある。
雨が降る朝、彼女の携帯電話からアラームとして。
その瞬間、この映画がお気に入りフォルダへと格納された。
あえてあの曲をアラームにするなんて、しかも年上の彼女が。
黒島結菜が演じる彼女がとにかくずるいのだ。
女性が羨む天性のあざとさと可愛げがある。
飲み会を抜け出して
「私と飲んだ方が、楽しいかもよ笑?」
とかメールするし、
手持ち花火をしながら
「楽しいこと全部やっとかないと!」
とか無邪気に話すし、
フジロックに行けない代わりに
「私と行かない?まだ知らない世界へ」
なんて台詞も恥ずかしげもなく言うし。
なんなら小首傾げてたし。
あざといんだけど、嫌味がないというか。
世界が彼女で満たされてしまうことが、
決して大袈裟ではないことがわかる。
彼女と僕となおとの3人の関係性も、
欲しくて得られるものじゃない。
自然と出来上がっている関係が羨ましい。
土足でずんずん立ち入らないけれど、
3人とも3人だけの時間をなにより大切にしている感じ。
高円寺駅のロータリーで明け方まで缶チューハイ片手に語りたいな。
語る内容はくだらなければくだらないほどいい、中身なんてなくていいから。
いまを全力で楽しんで、傷ついて、悩んで、人間らしいことを、あとになってから気づいて恋しくなったりする。
同年代の若者たちは、こういう時間を、もっと噛み締めなくては。
ハッピーエンド、とはいえない結末にせよ、
映画の終わり方は小気味良い。
コンビニで買ったアイスを食べながら夏の終わりに見たくなる。
私にとってエモさの真骨頂は、夏の終わりだから。
「あのときは本当に最低で最高だったよな」
って笑いながら話せる思い出を作ろう。
振り返るときはもちろん、缶チューハイ片手に公園で。
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